14 / 33
1章 1節 仲間と成長の時間 《ディスペア編》
第14話 医務室
しおりを挟む
「…?」
目が冷めると見覚えのない白い天井だった。
「起きたのかい?」
横には目元には隈ができ気だるそうな表情をし、
白い服を羽織った女性が本を片手に僕を見下ろしていた。
「ここは?」
「ここは医務室、怪我人や倒れた人を看病する部屋だよ、
君は《魔力切れ》で倒れたんだ」
魔力切れ、その単語と共に意識を失う前の記憶を思い返す。
たしかにあの間力の渦を消滅させるために魔力をほとんど放出した気がする。
いや、放出したと言うよりかは無理やり持っていかれたと言う方が正しいだろう。
頭では徐々に魔力を身体から出し渦と同量くらいになるまで調節するつもりだったが、
まるで渦と引かれ合うように魔力が一気に持っていかれた。
「あの子は助かったんですか?」
名も知らぬ訓練生の事を聞く。
「ああ命は無事だ、だが魔力の消費が激しかったせいでまだ目を覚ましていない」
「そうですか、良かった…」
命が助かったと聞いて安堵し、自分の行動が無駄ではなかったと確信する。
「…普通なら魔力切れになったら、身体が不足分の魔力を生成するまで数日は目を覚まさないはずなのだが」
寝ている状態から身体を起こす。
「あまり無理すると体に響くよ?」
「いえ、魔力切れは慣れてますから大丈夫です」
「慣れてるって、君は消滅仕掛けたんだよ?」
魔族の体は約8割が魔力によって生成され維持されている、
故に魔力を消費すればする程、自身の存在が薄くなって行き。
魔力切れが起きた上で更に魔力を無理やり使おうとすると自身の身体ごと消滅する。
つまり暴走した子も僕も消滅するギリギリを踏み留まったという事だ。
「これくらいなら大丈夫です、今は何時ですか?」
窓から見える魔界の空は赤い、どんな時でも変化せず、時間を測ることもできない。
「今は最後の訓練が終わる頃だ…
たしか君の班の2人が訓練が終わったら来ると言っていたな」
その言葉と同時に勢いよく扉が開けられる。
突如鳴り響いた大きな音にビクッと肩を震わせながら開かれた扉の方を見ると、
アルとタイガが心配そうな目でこちらを見ていた。
「やあ、訓練お疲れ様」
心配そうに駆け寄る2人。
「体調は大丈夫なの!?」
「ちょっと身体が重いけど、大丈夫だよ」
ベットから降り飛び跳ねてみる。
「ふむ…まあいいとりあえず本人が大丈夫だと言っているから今回は目を瞑るが、何かあったら直ぐに医務室に来るんだぞ?
それとそこの2人はこいつに何かあったら直ぐに運ぶか連絡するように、いいな?」
「「「はい、分かりました」」」
一礼し医務室を出る。
自分以外誰も居なくなった部屋で女医は机の上に置かれた、紙を眺める。
(血液良好、目立った外傷もなし、体に細かな切り傷のようなものはあったが、ここに来る前の物だろう、親からの虐待か?
彼の表情から伺うことは出来ないが可能性は否定できない、経過観察が必要か。
しかし魔力切れを起こした筈なのにたった数時間で目覚めるものなの?
あの魔王ですら2日寝込んだ。
となれば数時間で目覚め、なおかつ動ける彼は何者だ?
それに現場をたどり着いた時、ルカは何が起こったのかわからない用な表情をしていたが、
キーパーは思い当たる節があるように現場残った魔力を探っていた。
奴は何を隠している?
所長とその補佐である奴にしか知らない情報を持っているのは確実だ。
そうでなければ2ヶ月ズレたこの時期にここに入る事は断る筈だ…
少し探る必要があるな。
それよりも…)
白き少年が寝ていた隣、カーテンで仕切られベットの上に四肢を鎖で繋がれた、
今回の騒動の元凶の方を見る。
(魔力が暴走し制御しきれず囚われた元凶だった魔族の少年、
魔族以外の種族ならまだしも身体の作りからして魔力の扱いに長けた魔族が、
扱いが初めてだとは言え暴走させるか?
作為的な何かなのか?
考えすぎか、悪い癖だな)
女医は再び《薬剤書》に目を通し始める。
ベットに寝かされている彼がこの後どうなるのかを。
目が冷めると見覚えのない白い天井だった。
「起きたのかい?」
横には目元には隈ができ気だるそうな表情をし、
白い服を羽織った女性が本を片手に僕を見下ろしていた。
「ここは?」
「ここは医務室、怪我人や倒れた人を看病する部屋だよ、
君は《魔力切れ》で倒れたんだ」
魔力切れ、その単語と共に意識を失う前の記憶を思い返す。
たしかにあの間力の渦を消滅させるために魔力をほとんど放出した気がする。
いや、放出したと言うよりかは無理やり持っていかれたと言う方が正しいだろう。
頭では徐々に魔力を身体から出し渦と同量くらいになるまで調節するつもりだったが、
まるで渦と引かれ合うように魔力が一気に持っていかれた。
「あの子は助かったんですか?」
名も知らぬ訓練生の事を聞く。
「ああ命は無事だ、だが魔力の消費が激しかったせいでまだ目を覚ましていない」
「そうですか、良かった…」
命が助かったと聞いて安堵し、自分の行動が無駄ではなかったと確信する。
「…普通なら魔力切れになったら、身体が不足分の魔力を生成するまで数日は目を覚まさないはずなのだが」
寝ている状態から身体を起こす。
「あまり無理すると体に響くよ?」
「いえ、魔力切れは慣れてますから大丈夫です」
「慣れてるって、君は消滅仕掛けたんだよ?」
魔族の体は約8割が魔力によって生成され維持されている、
故に魔力を消費すればする程、自身の存在が薄くなって行き。
魔力切れが起きた上で更に魔力を無理やり使おうとすると自身の身体ごと消滅する。
つまり暴走した子も僕も消滅するギリギリを踏み留まったという事だ。
「これくらいなら大丈夫です、今は何時ですか?」
窓から見える魔界の空は赤い、どんな時でも変化せず、時間を測ることもできない。
「今は最後の訓練が終わる頃だ…
たしか君の班の2人が訓練が終わったら来ると言っていたな」
その言葉と同時に勢いよく扉が開けられる。
突如鳴り響いた大きな音にビクッと肩を震わせながら開かれた扉の方を見ると、
アルとタイガが心配そうな目でこちらを見ていた。
「やあ、訓練お疲れ様」
心配そうに駆け寄る2人。
「体調は大丈夫なの!?」
「ちょっと身体が重いけど、大丈夫だよ」
ベットから降り飛び跳ねてみる。
「ふむ…まあいいとりあえず本人が大丈夫だと言っているから今回は目を瞑るが、何かあったら直ぐに医務室に来るんだぞ?
それとそこの2人はこいつに何かあったら直ぐに運ぶか連絡するように、いいな?」
「「「はい、分かりました」」」
一礼し医務室を出る。
自分以外誰も居なくなった部屋で女医は机の上に置かれた、紙を眺める。
(血液良好、目立った外傷もなし、体に細かな切り傷のようなものはあったが、ここに来る前の物だろう、親からの虐待か?
彼の表情から伺うことは出来ないが可能性は否定できない、経過観察が必要か。
しかし魔力切れを起こした筈なのにたった数時間で目覚めるものなの?
あの魔王ですら2日寝込んだ。
となれば数時間で目覚め、なおかつ動ける彼は何者だ?
それに現場をたどり着いた時、ルカは何が起こったのかわからない用な表情をしていたが、
キーパーは思い当たる節があるように現場残った魔力を探っていた。
奴は何を隠している?
所長とその補佐である奴にしか知らない情報を持っているのは確実だ。
そうでなければ2ヶ月ズレたこの時期にここに入る事は断る筈だ…
少し探る必要があるな。
それよりも…)
白き少年が寝ていた隣、カーテンで仕切られベットの上に四肢を鎖で繋がれた、
今回の騒動の元凶の方を見る。
(魔力が暴走し制御しきれず囚われた元凶だった魔族の少年、
魔族以外の種族ならまだしも身体の作りからして魔力の扱いに長けた魔族が、
扱いが初めてだとは言え暴走させるか?
作為的な何かなのか?
考えすぎか、悪い癖だな)
女医は再び《薬剤書》に目を通し始める。
ベットに寝かされている彼がこの後どうなるのかを。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~
霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。
ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。
これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる