迅速な婚約破棄、迅速な復讐、迅速な…

迅速な復讐

来る日は案外早くやってきた。

「ねえ聞いた？オルテンシア商会のとこの後継、同級生を妊娠させたって……」
「え！？この間ワイズ家のアデル様と婚約解消したっていうあの？それってつまり……」
「原因は浮気なんじゃない？」

教室内に空席が２つ。周りの人たちの噂話。
どうやら全てがうまくいったと知り、私は深いため息をついた。

恐らくあの2人はもう学校に来ないだろう。

馬鹿げた策だと思ったけど、結局フィンレーさんの思い通りになった。

『子供向けメーカーの後継息子が、浮気相手の貴族令嬢を妊娠させたとなれば、どうなるんでしょうか…』
『……何する気ですか？』
『ん？ただ彼の手持ちと、この細工済み避妊具を交換するだけですよ。部下が』

発想が陰湿すぎて引いた。

ストーカーとはいえ、彼の気持ちを利用して彼(の部下)の手を汚させたことに後ろめたいことがないといえば嘘になる。

そんな私の微妙な顔を見て、フィンレーさんはとろけるような笑みを浮かべた。

『共犯って素晴らしい響きですよね、アデルさん。これからもよろしくお願いします』

迅速な婚約破棄の為とはいえ、全く本当にやばい男と契約を交わしてしまった。

皆様も怒るに任せ安易に人と交渉するのはやめておいた方がいい。



「ははうえ、ちちうえにいつまでもひっつかれて気持ち悪くないの？」
「慣れれば虫みたいなものよ」
「それってかなり不快なのでは……」

……まあ私はなんだかんだ彼と結婚して、20年経った今でも後悔したことは特にないのだが。