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迅速な決断

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「すまないアデル……お前を通してデイジーと会ううち、私は──」
「惚れてうっかりベットに連れ込んでしまったわけですね、わかります」

もじもじと話を引き伸ばす婚約者に、私、アデル・ワイズは一周回って冷静な頭で無理やり結論へと誘導した。

クズのお気持ちなんてどうでもいい。婚約者と親友デイジーが裸で一緒に寝ていて、こっちは気が狂いそうなのである。

婚約者…キーランはゆらゆら目を泳がせたあと、諦めたように頭を縦に振った。そして再びどうでもいい話をちんたらと話し出した。

「あ、ああそうだよ!でもそれは君に手が出せないからでっ」
「そういうのいいので、離縁の手続きを進めさせてもらってもいいでしょうか。あいにく突然のことなので書類が手元にありませんので、後日またそちらに伺いますね」

さっきまで私と普通に話していたにも関わらず普通にその婚約者と寝たデイジーの言い分に興味はあるが、クズの逆ギレなんて聞いているだけで耳が腐る。

デイジーはこの期に及んで被害者のような顔で涙目で私を見上げていて、思わずどうにかしたくなったけれど、ぐっと我慢してその場を立ち去った。

手を出してはいけない。
私はあくまで悲劇のヒロインでなくちゃ。

そうじゃなきゃ迅速に別れられない。

それに、私の復讐はもう終わっているのだから───



私、アデル・ワイズはしがない男爵家の三女である。

4歳の時、母が贔屓にしているオルテンシア商会の後継息子であるキーランと婚約した。

オルテンシア商会は主に子供向け雑貨や母親向け用品など、親子をターゲットにした商品を開発している商会で、数年前のベビーブームによって知る人ぞ知る大企業へ成長した。

キーランとは3歳の時に出会った。

「すきだ!ひとめぼれした!ぼくとこんやくしてくれ!」

人前だろうが気にせず一目惚れしたと騒いでは、休みのたびに押しかけてきたので、なんだかんだ絆されてしまい、1年後に婚約した。

私たちは仲が良かったと思う。時間があれば一緒に遊んで、遠出や食事にも何度も行って、ついには同じ学校に進学した。

時がたち、周りから冷やかされることもなくなった頃、15歳の時に転校してきたのがデイジーだった。
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