聖女のおまけは光の精霊に選ばれる

小砂青

文字の大きさ
上 下
2 / 10
本編

2.理不尽な失望

しおりを挟む
知らない世界に何人もの使用人、まるでお姫様のようにもてなされ、私は戸惑った。しかしそんな生活もたった2日で終わりを告げた。

藤岡さんのついでにやってきた魔術師が、私のステータスを鑑定して憤慨したからだ。

『なんだこれは!魔力もスキルもまるで凡人じゃないか!』

それから周りが私を見る目は一気に冷ややかになり、私の部屋はいつのまにか物置のような使用人部屋に移された。そこはとても寒くて、暗くて、私の不安を掻き立てた。

……私を巻き込んで召喚したのはそっちなのに、どうしてこんな扱いを受けなくてはならないの?

魔法という未知の力が恐ろしくて、私は毎日のように追いやられた部屋に閉じこもった。

どうか悪い夢であってほしい。
毛布すらない部屋の中ガタガタと震えながらずっとそう思っていた。



魔法学院への入学は強制だった。

どうやらこの国では魔力を持った人間は全員魔法学院に通う義務があるようで、藤岡さんの10分の1にも満たない魔力量の私ももれなく学院に放り込まれた。

そこで3ヶ月ぶりに見た藤岡さんを見て、私は驚愕した。

私はてっきり、彼女も自分と同じような心境にあると思っていた。

しかし藤岡さんは王族が着るような仕立ての良い服に身を包み、王太子殿下にエスコートされながら幸せそうに微笑んでいたのだ。

どうして知らない世界に来てそんな顔をできるのだろう。私は信じられなかった。

藤岡さんはいつのまにか皆に慕われ、簡単に近づけない人物になっていたけど、私は隙を見て彼女に近づいた。

「あの、藤岡さん。元の世界に帰る方法の手がかりとかあった…?」

しかしそれは無駄足に終わった。彼女が私を迷惑そうに睨みつけ、突き飛ばしたからだ。

「は?何馴れ馴れしく話しかけてきてるの?どうでもいいわよそんなの、あたし帰らないし。自分が落ちこぼれだからってあたしに媚びてこないで」

それは衝撃的な一言だった。元の世界の藤岡さんは友達というほど仲良くはなかったけど、こんな蔑むような目で私を見なかったのに。

勝手に同郷の仲間として心の拠り所にしていた私は、孤独の中に突き落とされた。

学院生活が始まっても、私に話しかけてくる人は教師くらいしかいない。

「ねえ見て、あの人も聖女様と同じ異世界人なんだって」
「え?嘘、地味ー」

魔法という力は、もし1人で学んでいたならばきっと楽しいものだっただろう。しかし常に好奇の視線に晒され聖女様と比べられる時間は地獄で仕方なかった。

座学も、技術も、どんなに頑張っても平均点。そして私は授業も休みがちになった。

他人からの風当たりにも自分の無能さにも耐えられなかったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~

白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。 国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。 幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。 いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。 これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23

オマケなのに溺愛されてます

浅葱
恋愛
聖女召喚に巻き込まれ、異世界トリップしてしまった平凡OLが 異世界にて一目惚れされ、溺愛されるお話

この闇に落ちていく

豆狸
恋愛
ああ、嫌! こんな風に心の中でオースティン殿下に噛みつき続ける自分が嫌です。 どんなに考えまいとしてもブリガンテ様のことを思って嫉妬に狂う自分が嫌です。 足元にはいつも地獄へ続く闇があります。いいえ、私はもう闇に落ちているのです。どうしたって這い上がることができないのです。 なろう様でも公開中です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思うので、第二の人生を始めたい! P.S.逆ハーがついてきました。

三月べに
恋愛
 聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思う。だって、高校時代まで若返っているのだもの。  帰れないだって? じゃあ、このまま第二の人生スタートしよう!  衣食住を確保してもらっている城で、魔法の勉強をしていたら、あらら?  何故、逆ハーが出来上がったの?

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

廻り
恋愛
勉強にしか興味がない男爵令嬢は、『溺愛』がどのような食べ物か気になるらしい。

ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります

奏音 美都
恋愛
 ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。  そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。  それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。

処理中です...