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本編
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「フラン様、聞きました?イシュメル様、廃嫡になったそうですよ」
「エミリーったらそんなに嬉しいんですの?それよりルーくんは朝からどこに行ってしまわれたのかしら……とっておきのキッシュが焼けましたのに、冷めてしまいますわ」
主人を悲しませた憎くき男の不幸に大喜びするエミリーに、フランチェスカは上の空で返事をしつつ愛しい夫の姿を探した。
ルーカスが突然いなくなることは今に始まったことではないが、フランチェスカを不安にさせないよういつも気を配ってくれる。
しかし今日はそれがなかったのでもんもんとしていると、玄関の方で戸が開く音がした。
もしやと思い表情を明るくした数秒後、リビングに愛しい夫の姿が現れる。
「フランー?あ、起きてた。ただいま~」
「ルーくん!もうっ!どこへいってましたの?!」
少し膨らんだお腹を抱え控えめに腕の中に飛び込むフランチェスカを、ルーカスは愛おしげに受け止めた。
「ごめんごめん、これを買いに行ってて」
「まあ…!かぼちゃぷりん!」
「一緒に食べようね」
恋人となってから随分経つようだが、この2人のいちゃつきぶりは一向に衰える様子がない(むしろ進化している)。
まだこの町に来て3ヶ月だが、既に人々の間では世紀のバカップルとして知られている2人をエミリーは微笑ましく思う。
「私これ大好きですのよ!前はよく食べてましたわ…!覚えててくれましたの?」
「もちろん、フランの言ったことは一言一句全て覚えてるよ」
「うふふ、ルーくんったら!ありがとう。キッシュのあとに食べましょうね」
「ああ、いい匂いがすると思ったらキッシュかぁ」
腕を組んでキッチンへ向かう2人を見送り、エミリーは家を出た。
「……全く、旦那様はいつまでルーカス様を信用しないのでしょうか」
フランチェスカはもうずっと幸せだ。
今も、これからも。
「エミリーったらそんなに嬉しいんですの?それよりルーくんは朝からどこに行ってしまわれたのかしら……とっておきのキッシュが焼けましたのに、冷めてしまいますわ」
主人を悲しませた憎くき男の不幸に大喜びするエミリーに、フランチェスカは上の空で返事をしつつ愛しい夫の姿を探した。
ルーカスが突然いなくなることは今に始まったことではないが、フランチェスカを不安にさせないよういつも気を配ってくれる。
しかし今日はそれがなかったのでもんもんとしていると、玄関の方で戸が開く音がした。
もしやと思い表情を明るくした数秒後、リビングに愛しい夫の姿が現れる。
「フランー?あ、起きてた。ただいま~」
「ルーくん!もうっ!どこへいってましたの?!」
少し膨らんだお腹を抱え控えめに腕の中に飛び込むフランチェスカを、ルーカスは愛おしげに受け止めた。
「ごめんごめん、これを買いに行ってて」
「まあ…!かぼちゃぷりん!」
「一緒に食べようね」
恋人となってから随分経つようだが、この2人のいちゃつきぶりは一向に衰える様子がない(むしろ進化している)。
まだこの町に来て3ヶ月だが、既に人々の間では世紀のバカップルとして知られている2人をエミリーは微笑ましく思う。
「私これ大好きですのよ!前はよく食べてましたわ…!覚えててくれましたの?」
「もちろん、フランの言ったことは一言一句全て覚えてるよ」
「うふふ、ルーくんったら!ありがとう。キッシュのあとに食べましょうね」
「ああ、いい匂いがすると思ったらキッシュかぁ」
腕を組んでキッチンへ向かう2人を見送り、エミリーは家を出た。
「……全く、旦那様はいつまでルーカス様を信用しないのでしょうか」
フランチェスカはもうずっと幸せだ。
今も、これからも。
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