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本編

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(通りで姿を見ないと思っていたが、家を出ていたとは……)

イシュメルは父に解放されたあと、ふらふらと自室に戻った。

──フランチェスカが、自分の為に平民になっていた?

俄に信じがたい話である。それに記憶の中のフランチェスカは高貴な猫のようで、市井にいる姿が全く想像できない。

倒れ込むように椅子に腰掛けると、執務机に大量に積まれた仕事が目に入った。

フランチェスカと婚約破棄してから2年。今更だが、あの時どれだけフランチェスカが自分に献身していたかがわかった。

(フランチェスカ……お前は今どこにいる)

きっとここ近くの町で、どこかから自分を見守っているに違いない。イシュメルは窓に近寄り、うっとりと外を眺めた。

自分が恋しくて泣いていないか。
寂しくはないか。苦労はしていないか。

思えば思うほどイシュメルの頭にはフランチェスカの泣き顔が浮かび、まるで恋煩いする少年のようにため息をついた。

そして、決意した。

フランチェスカを迎えに行こう、と。

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