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第十二話 後輩の変身
しおりを挟む「美穂!」
え?また?今度は誰?
「なに、徹も居たの?」
「当たり前だ。アスカの頼みだぞ!ぼくが居なくてどうする!美穂。何度もいうけど、ぼくは、”アスナ”だ!」
「はい。はい。そうね。それで、隆司。服は決まりそうなの?」
「まだ悩んでいるのよね。彩ちゃん可愛い系を着ても、綺麗系の服でも、ちょっとエッチな感じでも、似合うのよね。アスカちゃんの選んだ子だけあるわよね。すごいわよ。これで、徹が髪の毛を整えて、化粧をしたら、一気に化けるわよ」
「そうね。アスカに渡すのがもったいないくらいに可愛い子よね」
え?ぼくのこと?
学生の時には、野暮ったいとか、ブスとか、子供体型とか、合法ロリしかメリットがないとか、散々なことを言われたぼくのこと?
先輩が好きだと言ってくれたことも奇跡だと思っているのに・・・。なんで?
「そうだ。美穂。あの条件でいいわよね!」
「もちろん。違ったら、怒るわよ」
「ありがとう」
「隆司に、お礼を言われる筋はないわ。私が、アスカに恩を返したいだけ・・・。全然、足りていないけど・・・」
「そうね。店ごと、アスカに渡しても足りないわね」「それは、私も同じよ」「うん。ぼくも、同じ」
「あんたは、違うでしょ!」
よくわからないけど・・・。
「皆さん。せ・・・。明日翔さんのことが大切なのですね」
「「「当然(よ)」」」
皆さんが先輩を大切に思ってくれるのが嬉しくなってしまった。そんな人たちに・・・。
「ごめんなさい。ぼく・・・」
「どうしたの?」
「キャサリンさん。ぼく、皆さんに嫉妬していました」
「嫉妬?」
「ぼくの知らない、明日翔さんを知っていて、ぼくには見せないような表情で話をして・・・。うらやましくて・・・。ごめんなさい。ぼく・・・」
「んもう。可愛い。そんなに、アスカちゃんのことが好きなのね」
泣かないように頑張っているけど、涙が出そうになってしまう。
キャサリンさんの言葉に頭を縦に振って、うなずいた。声を出したら、涙が出てしまう。ぼくは、情けない。
「彩。いい。私たちは、みんな、アスカに救われたの!」
涙が出てきて、手で拭ってしまった。
でも、美穂さんの言葉には、しっかりと答えたい。
「・・・。はい」
「うん。女が涙を、人前で流していいのは、嬉しいときだね。いい女は、影で泣くのよ。覚えておきなさい」
「はい」
「アスカに泣かされたら、私たちのところに来なさい。アスカが隠している恥ずかしい話を教えてあげる」
「大丈夫です。明日翔さんに泣かされる・・・。なんて、ありません。でも、明日翔さんの昔の話は聞きたいです!」
「いいわよ。皆で集まって、アスカの話をしましょう」
「はい!素敵ですね!」
「そう、女には、特にアスカの横には、彩の可愛い笑顔が似合うわ。アスカは、複雑な人物で、大変だと思うけど、彩。アスカを・・・。私たちでは、無理だった・・。アスカの心を救ってあげてね」
「ぼく・・・。わかりました!何ができるか解らないけど、明日翔さんを”裏切らない”ことだけは、皆さんに誓います」
「そうね。その言葉は、私たちにとっては、最高の言葉ね。隆司。徹。それから、昌平。姫君の準備をするわよ」
「はい。はい。着飾る前に、私の用事を済ませていい?」
店舗から、エリザベスさんが何か道具を持ってきた。
あんなにリングがついている物をどうするのだろう。え?皆がニヤニヤしだす。なんの道具か解っているようだ。
「彩ちゃん」
「はい。エリザベスさん」
エリザベスさんは、すごく嬉しそうにする。理由が解らないけど、ぼくのことを気に入ってくれているのがわかる。
「彩ちゃん。淑女の嗜みで、手袋が必要だけど、持っている?」
「え?手袋ですか?市販の物なら・・・。でも、防寒用の奴です」
「そう、白い手袋は?」
「ないです」
白い手袋?
何に使うの?淑女?
「そうね。既婚になるけど、最初は両手の手袋が必要ね」
「え?」
既婚?
「アスカだと、会社のパーティーとかに呼ばれることがあるのは解るわよね?」
「あ!でも?」
そうだ、客先のパーティーとかに呼ばれると聞いたことがある。それが、ぼくになんの関係が?
「不思議に思わないで、会社の設立くらいなら、アスカちゃん一人でもいいけど、儲かっている会社だと、クリスマスパーティーや新年パーティーとか行うのよ」
「え?」
「そういうパーティーには、パートナーを連れてくるのがマナーなの」
「・・・。え?あっ。ぼく?」
「そうね。去年は、美穂がパートナーを務めたのよね」
「アスカに頼まれて・・・。私としては、可愛いコンパニオンを見られたからよかったけど、次からは、彩がアスカのパートナーだな」
「え?」
「だからね。服装は、キャサリンが選ぶし、インナーや下着は美穂が、当日のメイクはアスナが担当するわよ」
「えっえぇぇぇぇぇ!!!」
「そんなに、驚かないで、そうね。彩ちゃん。アスカちゃんに恥ずかしい思いをさせたくないでしょ」
「もちろん!」
「彩ちゃん以外の人をパートナーとして連れて行って欲しい」
絶対に嫌だ。
ぼくを・・・。欲張りになっている。でも、ぼくを選んで欲しい。
「いや・・・。です」
「うんうん。だから、私たちが協力する。いいわね」
「はい。お願いします。ぼく、頑張ります。先輩の明日翔さんの隣に立ちたいです」
「うん。いいわよ。それで、手袋の話だけど、絹で作るから、彩ちゃんの手のサイズを測りたいの、いいわよね?」
「はい。お願いします!」
器具で、いろんな指のサイズを測られた。手首や腕の太さまで・・・。恥ずかしい。太ってはいないと思うけど・・・。
「彩ちゃん。ありがとう。でも・・・」
「でも?ぼく、太いですか?頑張って、ダイエットします」
「違うわよ。痩せすぎ。もう少し、肉を付けないと、パーティーのドレスを着た時に、倒れちゃうわよ」
「え?うそ?ですよね?」
皆が首を横に振る。
倒れる?パーティーで?
美穂さんと、キャサリンさんが説明してくれた。それは倒れる。朝から何も食べないで、立ち続ける。ぼくには無理だ。キャサリンさんが、体力を付ける方法を教えてくれることになった。ジムに通えないと言ったら、部屋でできる方法を教えてくれるらしい。何から何まで・・・。本当に、嬉しい。
エリザベスさんは、サイズを測ったら、作業があると言って部屋から出て行った。
それから、まず美穂さんによる下着の選び方から、インナーの選び方の話を聞いて、今日の服に合わせる下着を選んでもらった。下着の付け方一つでぼくの小さかったおっぱいもすこしだけ大きく見えた。谷間なにそれ?の、おっぱいに谷間ができたときには、感動した。美穂さんは、嬉しそうに報告したら、笑われてしまった。持っている人には解らないと言ったら、そうだね。と言って、頭をなでられた。
ぼくが身に着けていた下着は、美穂さんが手直しをして、送ってくれるらしい。パンツが汚れていて恥ずかしかったけど、美穂さんがいうには、下着のほつれとか解れば、ぼくの普段の生活で、どこに負担がかかっているのか解るということだ。それに、エッチな染みができても、匂いがわからなくする方法もあるとのことだ。笑いながら教えてくれた。恥ずかしいけど、今まで誰にも教えてもらえなかったことだ。あと、生理の対処とかも教えてくれた。
それから、また着替えの時間だ。
今度は、美穂さんも参加した。アスナさんが、何かをメモっていた。どこに、こんなに服があるのかと思うほど、服が出てきた。時計を見たら、1時間半も過ぎていた。
「あ!明日翔さんを待たせて・・・」
「大丈夫よ。アスカちゃんは、床屋さんに行っているわよ」
「え?」
「自分の姫が綺麗に、可愛くなるのよ。自分も、それに合わせて、髪の毛を揃えたいと思うものよ。それに、おひげも綺麗にしたかったらしいわよ」
「あっ」
朝から先輩・・・。明日翔さんの部屋を訪ねて・・・。あとで、しっかり謝らないと・・・。
「彩ちゃん」
「はい?」
「アスカちゃんに、謝ろうと思っている?」
うなずく
「それは違うわよ」
「え?」
「彩ちゃんがいうセリフは、謝罪じゃないわよ。わかるでしょ?」
「・・・。はい。”ありがとう”と”かっこいいです”と言います」
「うん。可愛いわ。いい女になりましょう」
「はい!」
美穂さんの選んでくれた下着とインナーを着て、靴下を履いた。
キャサリンさん。選んでくれた服を着た。美穂さんやアスナさんの助言も入っているけど・・・。
そして、アスナさんが超特急で髪の毛を整えてくれる。傷んでいた毛先をカットしてくれて、ヘアアレンジをして、化粧をしてくれた。私が会社に行くときにする化粧品を聞かれたので正直に答えた。アスナさんがお化粧を教えてくれるらしい。
出来上がった。
全身が映る鏡の前に立った。ぼくの感想は・・・。
「だれ?」
だった。満足そうな3人を見て、ぼくが不安になってしまった。
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