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第四話 二人の事情
しおりを挟む光が収まって、窓を叩く雨音以外の音がなくなり、建物の揺れが収まっても二人は抱き合っていた。
どのくらいの時間二人は抱き合っていたのだろう。
”ジィジィジィ”
どこからか音がする。ドアの隙間から人工的な明かりが差し込んだ。
窓の外がまた光った。先程よりは弱い光だが音がすぐに続いた。
”ドォン”と音がした。
「キャァ!」
奈々は抱きしめられた状態で可愛く悲鳴を上げる。
抱きしめられていることはわかっている。背中が温かいし守られている安心感がある。でも、雷が怖いのは間違いない。
廊下の方から、
”ジジジジ”
と、音がしてから、人工的な光がドアの隙間から暗闇に支配されていた部屋を少しだけ明るくする。ドアが開いたわけでも、空調が直ったわけでも、部屋全体が明るくなったわけではない。ドアの近くが少しだけ明るくなっただけだ。一部が明るくなったことで、部屋全体は余計に暗く感じる。せっかく暗闇に慣れた二人の目は明かりを感じたことで慣れた感覚が戻ってしまった。
「桜内。大丈夫か?怪我はしていないか?」
先生は抱きしめる腕の力を緩めながら奈々に話しかける。
「・・・」
「桜内。大丈夫か?意識あるか?」
奈々から返事がない事で慌てた先生は、奈々の首筋に手を這わせる。
脈があることで安堵して抱きしめる腕に力を入れる。離さないと誓っているかのように抱きしめる。
奈々は先生の言葉を聞いている。意識もしっかりある。抱きしめられている状況に驚いたが自分から抱きついたので文句は言えない。
それに、奈々は重大なことに気がついてしまったのだ。今考えることでは無いとは思ったのだが、思いついてしまって考えることが止まらない、加速してしまっている。
(なんで先生は、好きな時代のことを知っていた?話したことなどなかった)
(なんで先生は、好きな食べ物を知っている?いつもあの3つを昼に食べるのを知っているの?)
(なんで先生は、今日の昼を食べていないことを知っている?)
(なんで先生は、ミルクティーに砂糖とミルクを増量していることを知っている?)
(それに、この匂い・・・。私が好きな柑橘系の匂い・・・。なんで?)
(なんで?)
(なんで?)
奈々はもう一つの事実を考えないようにするために先生のことを考えていた。
奈々が考えないようにしていた事実。
それは、昼に友達からジュースを餞別にもらったこと。食堂のおばちゃんからもジュースをもらった。自習室に来てから暑くてジュースを飲んだこと。先生が買ってきたミルクティーを飲んだこと。そして、昼に友達と一緒にトイレに行ってからトイレに入っていないこと・・・。
そして、股間の部分が暖かくなっている・・・ことを、考えないようにしていた。
奈々は少しだけ本当に少しだけ雷に驚いて出てしまっただけでストッキングも履いているしスカートもある。先生にばれなければ大丈夫だと思って考えないようにしていたのだ。
「桜内?」
先生は抱きしめている腕のちからを緩めた。
そして、奈々の肩を持って体を起こした。
奈々がまたがっていた位置は先生も認識していた。意識してしまっていたと言ったほうがいいかもしれない。そして、奈々から伝わってくる暖かさと冷たさ緊張で流れる汗の匂いと解ってしまってはダメな匂い。自分の股間を刺激するように小刻みに動く奈々。最初は怖くて震えているのかと思ったが違うようにも思える。抱きしめたことで感じる体の柔らかさと自分の胸元に感じる双丘の感触。
これ以上股間の上に居られると大きくなり始めているのが奈々にも解ってしまう恐れがある。それに、奈々がおもらしをしている可能性をどうやって教えればいいのか考えて一度立たせることにした。
「せ・先生・・・。ダメ。体に力が入らない」
「まだ怖いのか?」
「え・・・。あっう・・・ん。もう少しだけ・・・お願い・・・します」
「わかった。いいよ。お前が大丈夫だと思うまで抱きしめている」
「あ・・・。ありがとうござ・・・います」
奈々は完全に気がついた。
自分がおもらしをしてしまったことを・・・。そして、先生が自分に好意を持っている可能性があることを・・・。そして、今スカートを履いていないこと、そしてどのタイミングかわからないがブラのホックが外れている。今日のブラを思い出していた。帰りに遊びに行くつもりでパンツと合わせた黒のブラで肩紐が無い物をつけていた。したがってブラのフロント部分にあるホックが外れるとそのままノーブラの状態になる。インナーは着ていたがヒートテックで体に密着する。小さいながらもおっぱいがはっきりと解ってしまうのだ。色の薄いストッキングでは黒のパンツが解ってしまうかもしれない。それだけではなく、先生のスーツをおしっこで汚してしまっているかもしれない。確実に汚しているだろう。そう考えると、いろいろな事情で体を起こすことができなくなっている。でも、このままで居ることもできない。先生の股間が徐々に大きくなっているのを感じている。自分で興奮してくれていると考えるとなぜか嬉しくなって濡れてくるのが解る。奈々も自分が興奮しているのが解ってしまった。
(先生なら嫌じゃない)
奈々は、数ヶ月前に彼氏と喧嘩して別れてしまった。
理由は奈々が彼氏とのセックスを拒んだのが原因だ。フェラや手で抜くことはしてあげていたがセックスは未経験だった。彼氏が自分の体だけを求めるようになっていったのが気持ち悪かった。それに、必ずフェラを要求するくせに奈々が気持ちいいと思うことは一切してくれなかった。おっぱいやマンコの写真を要求されることも多くなった。セックスをするきが無いのなら毎日でもフェラで抜いてくれとかいい出したので別れることにしたのだ。最後に、嫌味でオナホールに奈々と書いてプレゼントした。その日の夜は悔しさや情けなさで泣いて過ごした。そんな奈々の気持ちを裏切るように彼氏は奈々にオナホールを使っている動画を送ってきたのだ。
そして、彼氏は自分の友達に奈々とセックスしたけど相性が悪いから別れたと嘘を言いふらした。それだけではなく、奈々が誰とでも寝るビッチであるかのように誹謗して回ったのだ。
(先生なら、あんな奴みたいにしない)
「桜内?どうした?どこか痛いのか?」
「え?」
「いや、なんか泣いているようだったから心配になっただけだ、違うのならいい。もう少しだけ抱きしめていたほうがいいか?」
「う・・・ん。おねがい・・・。先生。わたしのこと・・・。ううん。なんで・・・もないです」
「あぁ」
先生の腕に力が入る。
奈々は自分の気持ちが曖昧なままだが先生を受け入れてもいいとも考え始めている。自分から言い出す勇気は一切ないのだが、流されてもいいと思い始めていた。
どのくらいの時間が流れたのだろう。
部屋の気温が壊れた空調のせいでどんどん下がっている。暖房が効いていた部屋だが今は10度を下回っている。空調からは冷たい空気が流れ出るだけだ。だが、触れ合っている部分は熱く熱くなっていくだけだ。先生の股間はすでに固く大きくなっているのがズボンの上からでも解る。奈々も先生の股間を感じながら自分の股間が濡れているのが解る。それがおしっこなのか愛液なのかわからない。わからないが自分の股間が触らないでも濡れているのが解る。そして何かを期待するかのようにジンジンそしている。
もう二人とも決壊する寸前の状態になっている。
「あっ!あっん」
背中に回していた腕が少し動いたことで敏感になっていた奈々の感情が溢れたのだ。
声に驚いた先生は背中に回した腕を奈々の腰に移動させてしまった。背中で感じてしまった自分に驚いた奈々が背筋を使って体を起こそうとしてしまった。本来なら抱きしめている腕があって立ち上がることはなかったのだが、腕は腰に移動していて腰を少し持ち上げるようにしていた。
結果、奈々は先生に腰を支えられた状態で中腰の状態になってしまった。
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