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続編1:水面に緩ふ華の間章。
12 迷走。※
しおりを挟む多分、後ろを使えば良いんだよね。
ああ、でも。『記性愛事《性愛の事について記す》』で、作者の変人は閹人の射精管に淫具を入れていた。
いやいや、アレは達人級だから。色物で有名な人物だ。人外と契るためだけに非才を乗り越え、導師になった。何世紀も前の人なのに未だにその名が轟いている。
まあ、どちらかといえば肛門の方がまだしも、といったところか。変わった趣向では、女人も使用するそうだし。
ただ……と思う。常日頃は排泄物が通っていく、汚れた場所でもある。玉のような指が汚れてしまったり!??それはだめだよ、阻止しないと。
白い指が穴にすこし、触れる。
ちょっと興奮する。だめだ、だめだめ。あわてて、幼気な幻影を振り払った。
入れる、入れる、ねぇ。
ぽん、と脳裏に突起物が浮かび上がる。玉蓉ちゃんの金蓮ちゃんだ。滑らかな肌触りで、敏感で、小さくて小さくて可愛い。
可愛い。
いや、流石に駄目だよ。玉蓉ちゃんの金蓮ちゃんは繊細なんだから!入れても大丈夫とは思えないから。
というか……肛門に入れると言ったって、あの中ってどうなっているのかな?
そうだね、妖魔でも入れてみようか。簡単に入れそうな滑ったやつがいい。小さくて、目の代わりになりそうな……。
蚯蚓……だめ、目が使えない。海鼠……大きくない?
実体のない方がいいのかな?
「みぎゃー」
目の前に小さな妖魔がいた。虹色の輪郭がきらめく。葛餅のような触り心地。水晶のように透明な鯰だ。
「うん、使って欲しいって?いいよ。僕の肛門の中に入ってね」
「みみみ、みぎゃー」
片手を翳して力を与える。視界を共有する。大きな僕が目の前にいた。成功だ。一旦、視界を切り替え、袖口から妖魔を滑り込ませる。
葛餅のような感触のものが腕を上り、背中を下に進み……そこで止まった。どうやら腰紐に遮られたようだ。
幻鬼を呼ぼうか迷っていると、妖魔がぷにっとした体躯を捩った。とろんとした液状に変じ、そればかりか実体のなくなった身体ですすっーと腰紐を通過し、一気に肛門の縁まで辿り着く。
「みゆぁー」
妖魔が興奮した叫び声をあげた。いよいよ、この中に入るのだ。
へぇ……案外面白みに欠けるね。
妖魔は奥まで進むと、あるところに頭突きした。ぷにっ!
何か変な感覚が湧き上がってくる。ふーん、ここが前立腺ってやつかな?確かに玉蓉ちゃんの言うようにとろとろになりそうな気もするかも……待って、この妖魔は何をしてくれちゃってるのかな。玉蓉ちゃんがする予定のところだよ?
「あ、ぁ、みぁ」
妖魔が頭痛に呻いた。
自業自得だよ。肛門の内で暴れないように床の上に召喚する。
睨み付けておいた。
とりあえず、中は分かったし、玉蓉ちゃんが触っても大丈夫なように、綺麗にする方法を学ばないといけないね。
また別の日に妾妃の枕たちと妻のいる宦官にでも話を聞いてみよう。
*
「青狗《せいこう》、青狗、いるか?」
房室の外から囁くような呼び声が聞こえてきた。
少年は牀榻を振り返った。薄暗い帳の奥は寝静まっている。音が立たないように気をつけて窓のそばまで寄る。
声を掛けてきた人物と同じく、小声で囁き返した。
「はい、どうかされましたか」
「厳徳妃さまのご様子はどうだ」
厳徳妃──厳《げん》召華《しょうげ》は現皇帝の即位と共に内青宮に上がった古い妃で、随分と前から精神を病み、自身の住居である珠瓈殿《しゅりでん》に引き篭もっていた。青狗は彼女の六番目の世話役で、よく狂気に耐えていると評されていた。
青狗は明るい青色の髪を肩の辺りで切り揃え、小間使いらしいこざっぱりとした着物に身を包んでいる。
目下のところ、この蒼白い肌の美少年が彼女の最長の世話役になりそうだった。
「今は寝入っておられます。外に出ましょうか」
「ああ、お願いする」
なるべく静かに、牀榻の主人《あるじ》の気に障らないように、足音を忍ばせる。
こういうときのために、戸は開けたままにしている。代わりに昏い色の帳が下ろされていた。分厚い絹布を持ち上げると、目映い光が目に入ってきた。緑が眩しい。
中年の女官が問いかけてくる。
「宮はどれほど空けていられそうか」
歴史ある家の嫡女でありながら未婚という珍しい女官だった。鷹の如き鋭い眼光が邪魔をして夫候補が逃げ出すそうで、実家では色々あるらしい。
姿勢も容貌も美しいがほっそりとして窶れていた。そして、かなりの長身である。
「あの様子だとしばらくは寝ていると思います。今日はご機嫌が宜しかったですし、もう何日も眠っておられなかったので、明日の昼前まではお目覚めにならないかと」
「そうか、では来てくれ。お前を華火さまがお呼びだ」
「華火さまが?僕に何のご用でしょうか。お会いしたこともないのですが……」
「さあな、知らん。私は呼んで来るように言われただけだからな」
「そうですか」
まあ、行ってみたら分かるだろうと、気楽な気持ちで青狗は姒《し》嫄玹《げんげん》についていった。
青狗は榴花殿の浴室まで案内された。榴花殿は禰娜が王后になる前に使用していた宮殿である。
閑散としていたが、裏寂れた感のある珠瓈殿とは異なりきちんと手入れされて綺麗だった。
湯船には湯が張られ、好い匂いが漂う。
「実は……ということなんだ。君が一番長けていると聞いたから」
そういうことか、と青狗は納得した。
「なるほど、分かりました。幾つか道具を持って来ても良いですか?そちらの方が確実ですから」
厳徳妃は内青宮きっての房中術の使い手として知られており、六人の世話役は気の触れた彼女の慰み者となってきたのだった。
青狗は、青ざめた肌の貧弱な見目とは裏腹に案外丈夫な身体をしており、閨事に関してもまともに受けるのではなく、受け流すのが上手かった。
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