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第十三話 特別強化試験――G
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魔王城の廊下は俺が現在見た中では例外なく白を基調とした石壁にろうそくを使った照明、木の縁の窓、床は左右が金色で中央が赤色の絨毯が引かれている。
この絨毯は相当高級な様で靴の上からでもふかふかな感触が伝わってくる。
これが中々気持ちいい……筈だったのに、これからゴキブリに会いに行くとなると憂鬱になってくる。
俺の前を歩く二人の男もいくらゴキブリが得意と言っても限度があるらしく、足元がおぼつかない。
「では、入ります」
二人が茶色の両開き扉の前に立ち止まってそう言う。
「今の目的はあくまでやつを見つけて目を離さないようにすること。そして武器が届き次第、攻撃開始だ」
キイ―……
扉が開かれると同時に男たちが踏み込む。瞬時に左右を確認して、
「ふう……」
そんな息を吐く。
どうやら見える範囲の中には取り敢えずゴキブリはいないようだ。
「では、私たちで探索を行いますから、魔王様は魔剣が届き次第攻撃をお願いします」
「ああ、分かった」
魔王城で最強の武器は魔剣か。
俺の自室と言うのをのぞいてみれば広さのわりに大したものは置いておらず、あるのは茶色で豪華なクローゼット、同色のタンスが二つ並び、端には足の部分が金で装飾された椅子と机があるだけだ。
寝室と自室は別物なのかベットの類は無い。
「詳しく見てもいないですね。やはり、タンスの裏でしょうか」
「そうですね」
男たちのささやき声が聞こえる。
「魔王様、タンスを動かしたいのですが、よろしいでしょうか」
一人が話しかけてくる。
「ああ、構わない」
「ありがとうございます」
一人が並んだタンスに手を掛けて動かし始める。
出てくるか、出てこないのか。
どちらでも嫌だ。
さあ、どうなる……!
「ぎゃあああああ‼‼」
来てしまった!
奴の狂気に当てられた男は既に失神して、全身がけいれんしている。
まさに地獄だ。
扉を閉めたい。俺だけでも安全になりたい。
……嫌駄目だ。
仮にも今は魔王。それらしく対応しなければ。
「大丈夫だ。殺されるわけではない! だから。目を離すなよ!」
「は、はい!」
奴は失神した男の胸元をはいずり、顔に向かっている。
やばいやばいやばいやばい……魔剣、早く来てくれ。
「ご主人様ー! 魔剣、届に来ましたー」
「ナイスだ」
「はい、どうぞ」
そう言われて、俺を魔王城に案内してくれた少女から短刀を受け取る。
紫色の鞘は中央に金で装飾が行われており、柄の先端には赤色の宝石が埋め込まれている。
「じゃ、じゃあ、行くぞ……」
俺はまだ落ち着いている奴を刺激しないようにゆっくりと歩く。
失神した男の口元で触角を動かし、今にも口内へ侵入せんとするその姿は余りにも狂気じみている。
鞘から短剣を抜き取る。
刃の部分は紫色の妖しい光を出している。
「先手必勝だ」
俺は剣を振り上げ、振り下げる。
しかし、
「逃がした……」
剣は男の唇に軽い損傷を加えただけで、既に奴は視界の外へと逃げてしまっていた。
「まずい……ぞ」
後ろを振り向くと、そこには縦横無尽に部屋の中を飛びまわるゴキブリの姿が。
「魔王様!」
「大丈夫だ。今度は配下もいないしな、本気で戦える」
ここでやらなければ確実に俺の生活は終わる。
何としてでも殺してやる。
「死ね――!」
全力疾走で、やつまで走る。
そして、俺の振り払った一撃がやつの羽を見事に切り裂いた。
「勝ったぞーー‼‼」
俺は城の全体でパーティーを開催を決めた。
この絨毯は相当高級な様で靴の上からでもふかふかな感触が伝わってくる。
これが中々気持ちいい……筈だったのに、これからゴキブリに会いに行くとなると憂鬱になってくる。
俺の前を歩く二人の男もいくらゴキブリが得意と言っても限度があるらしく、足元がおぼつかない。
「では、入ります」
二人が茶色の両開き扉の前に立ち止まってそう言う。
「今の目的はあくまでやつを見つけて目を離さないようにすること。そして武器が届き次第、攻撃開始だ」
キイ―……
扉が開かれると同時に男たちが踏み込む。瞬時に左右を確認して、
「ふう……」
そんな息を吐く。
どうやら見える範囲の中には取り敢えずゴキブリはいないようだ。
「では、私たちで探索を行いますから、魔王様は魔剣が届き次第攻撃をお願いします」
「ああ、分かった」
魔王城で最強の武器は魔剣か。
俺の自室と言うのをのぞいてみれば広さのわりに大したものは置いておらず、あるのは茶色で豪華なクローゼット、同色のタンスが二つ並び、端には足の部分が金で装飾された椅子と机があるだけだ。
寝室と自室は別物なのかベットの類は無い。
「詳しく見てもいないですね。やはり、タンスの裏でしょうか」
「そうですね」
男たちのささやき声が聞こえる。
「魔王様、タンスを動かしたいのですが、よろしいでしょうか」
一人が話しかけてくる。
「ああ、構わない」
「ありがとうございます」
一人が並んだタンスに手を掛けて動かし始める。
出てくるか、出てこないのか。
どちらでも嫌だ。
さあ、どうなる……!
「ぎゃあああああ‼‼」
来てしまった!
奴の狂気に当てられた男は既に失神して、全身がけいれんしている。
まさに地獄だ。
扉を閉めたい。俺だけでも安全になりたい。
……嫌駄目だ。
仮にも今は魔王。それらしく対応しなければ。
「大丈夫だ。殺されるわけではない! だから。目を離すなよ!」
「は、はい!」
奴は失神した男の胸元をはいずり、顔に向かっている。
やばいやばいやばいやばい……魔剣、早く来てくれ。
「ご主人様ー! 魔剣、届に来ましたー」
「ナイスだ」
「はい、どうぞ」
そう言われて、俺を魔王城に案内してくれた少女から短刀を受け取る。
紫色の鞘は中央に金で装飾が行われており、柄の先端には赤色の宝石が埋め込まれている。
「じゃ、じゃあ、行くぞ……」
俺はまだ落ち着いている奴を刺激しないようにゆっくりと歩く。
失神した男の口元で触角を動かし、今にも口内へ侵入せんとするその姿は余りにも狂気じみている。
鞘から短剣を抜き取る。
刃の部分は紫色の妖しい光を出している。
「先手必勝だ」
俺は剣を振り上げ、振り下げる。
しかし、
「逃がした……」
剣は男の唇に軽い損傷を加えただけで、既に奴は視界の外へと逃げてしまっていた。
「まずい……ぞ」
後ろを振り向くと、そこには縦横無尽に部屋の中を飛びまわるゴキブリの姿が。
「魔王様!」
「大丈夫だ。今度は配下もいないしな、本気で戦える」
ここでやらなければ確実に俺の生活は終わる。
何としてでも殺してやる。
「死ね――!」
全力疾走で、やつまで走る。
そして、俺の振り払った一撃がやつの羽を見事に切り裂いた。
「勝ったぞーー‼‼」
俺は城の全体でパーティーを開催を決めた。
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