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騎士たるもの淑女を守らなければいけないものです
ヴァイオレット.3
しおりを挟むリコは昔から太陽のように明るい人だった。
リコに出会ってから私の生活は少しずつ変わっていた。少なくても3日に1度...多い時は4日連続なんてこともあるくらい頻繁に遊びに来るリコに気が引けるのか義母は私に暴力を振るわなくなり、毎日毎日一人きりで過ごしていた時間はほぼリコと共に過ごすようになった。
来る度に昨日は誰と話したか、とか何をして過ごしていたのかと必ず聞いてくるリコにそんなに気になるなら監視でもつけておく?と冗談で言ったら真顔で「え、いいの?」と返ってきたときは思わず笑ってしまった。
侍女達からも、お嬢様がよく笑うようになって良かったと涙ぐみながら言われて、今までこんなに心配してくれる人がいたのに見ようとしていなかったのか、と反省したと同時に嬉しくもあった。
ね、リコはとても素敵でしょう?私を変えてくれた、私の王子様。
そんなリコのことを義母は1度だけ罵ったことがある。リコが忙しくて1週間近く会えなかった時
「なんだい、とうとう公爵家のガキに捨てられたのか。気持ちの悪い。私を見る度に野良犬みたいに睨んできて...あんなガキでも公爵様だからあんたを渡せばたっぷり金が入ると思っていたのに...あぁ、アナースタにでも色仕掛けさせてみるか」
許せなかった。自分の中の憎悪がせり上がるようだった。
自分でも気づかないうちに右手に魔力が集まった時、義母の体にバチッと電気が走った
義母の悲鳴にはっ、と我に返った私は一瞬慌てたがすぐにリコの仕業だと悟る。私が使えるのは水と風とそれを合わせた氷。火と土魔法はほんの少しだけで雷魔法は使えない。リコがたぶん護身用にでもかけてくれた魔法が作動したのだろう
私は人を守るための魔法で人を傷つけようとしてしまったことに恐怖した。
痛みで気絶している義母を置いて私は部屋に閉じこもった。
「ごめんなさい...ごめんなさい...お母様ごめんなさい...」
人を助けるために魔法を使いなさいと教えてくれたお母様の教えを破ろうとしてしまった。私はやはり、ダメな子なのだわ...変わるなんて無理なのだわ...こんな私ではリコもいつか離れてしまう...?そんなのは嫌...でもリコに迷惑はかけたくはないの...リコは大切な大切な友人だから...
あの日から私はリコが離れてしまうのではないかと不安に駆られるようになった。
パーティーの招待が来た時も、スーツを着て少し大人びて見えるリコを見た時も、たくさんの令嬢に囲まれたリコを見た時も。
どんどん心が凍っていくような気がした。
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