巷で噂の冷血令嬢と狂犬騎士

みくり

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騎士たるもの淑女を守らなければいけないものです

リコレット.5

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王家主催パーティー当日
俺はレティが城に着く頃合に合わせて家を出た。もちろんタイミングは盗聴して合わせた

本当はレティと一緒に行きたかったけど、貴族は色々としがらみが多い。俺はただ何にも囚われずにレティと過ごしたいだけなのに

「リコ様~もうすぐ城です」

もうすぐかぁ...
俺は今日、レティを守り抜かなければいけない。言うならば初任務というやつだ。嫁探しに精を出す汚い連中などにレティは汚させない


――


「.........」
「あら、リコも今来たところ??不安だったから嬉しい」

レティは俺を見つけるとふわっと花が咲いたかのように微笑んだ。ぐうかわいい。いやそういうことじゃなくて...

「ねえ、レティ。俺言ったよね?なるべく目立たないようにって」
「えぇ、だからなるべく露出の少なくて色味を抑えたドレスを侍女たちに用意してもらったのだけど...似合わない?」

少し不安そうな顔でこてん、と首を傾げて俺を見上げるレティはもしかして俺を殺す気なんじゃないだろうか

似合わない訳がない。色味を抑えたというクリーム色でシフォンのようにふわりとした生地を使ったシンプルなデザインのドレスはしかし、腰の後ろにはこれまたふわりとした生地の大きなリボンが余計に際立って美しい。所々に色鮮やかな花が散りばめられていて下手にゴテゴテと着飾るよりよほど繊細で美しい。というより着ているのがレティなのだ。そりゃどんなドレスを着ようとも美しくなるに決まっているか...今レティが着ているドレスも他の令嬢が着れば野暮ったく地味になるのだろう。

「いいや。レティはどんなドレスを着ていても世界一綺麗だよ。俺の完敗だ」
「ふふ、ありがとう」
「俺にエスコートさせてくれますか?麗しい妖精さん。」
「もちろん。お願いしますね、私のナイト様」

互いに昔2人でやったお姫様と騎士ごっこを思い出しながら仰々しく言うと顔を合わせて笑いあった


そんな様子を周りは見入っていた。リコレットは決して容姿端麗というわけではなかったがヴァイオレットを前にする表情は甘く優しくとろけるようで令嬢たちの心をつかんだ。
ヴァイオレットもリコレットにはまるで恋をした乙女のように甘やかに微笑み、よく笑う。
パーティー開始前にして2人は他を押しのけて圧倒的に目立ってしまっていた。


「リコレット様!お初にお目にかかりますわ。」
「リコレット様!とても逞しくていらっしゃいますのね...素敵ですわ」
「まぁ、クールでいらっしゃいますのね...ますます素敵ですわ」

「ヴァイオレット嬢、今宵は是非私とダンスを踊っては頂けませんか」
「ヴァイオレット嬢、よろしければあちらのテラスで僕とお話していただけませんか」
「あぁ、まるでドールのように整った顔だな...素晴らしい」

パーティーが始まると俺たちは沢山の人間に囲まれていた
びっくりするよな。どいつもこいつも自分の欲のために目を輝かせて...飢えた獣みたいだ。香水の匂いがキツくて自然と眉間に力が入る

はっ、と気づいた時にはレティと少し離れてしまった。急いでレティのところに行こうとするが令嬢達が邪魔で動けない。
男が1人、レティの肩に触れたのが見えてカッと頭に血が上った

令嬢を押しのけてレティの腕を引いて腰を抱き、皆を睨みつけた
だから嫌だったんだこんなところ

レティを見ると昔のような無表情を顔に貼り付けてただただ俯いていた


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