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表情筋がお亡くなりになっていらっしゃるようです。
ヴァイオレット.2
しおりを挟む小さな体で一生懸命にヴァイオレットを罵るアナースタはひとしきり罵声を浴びせるとどこかへ行ってしまい、ヴァイオレットはぶらぶらと歩き、噴水にたどり着いた
腫れてしまった頬をとりあえず冷やそう、と思いヴァイオレットは手のひらに魔法で小さな氷を作り出し、その氷の周りを水のベールで包んで赤く腫れてしまった頬に当てた
じんじんと痛む頬に冷たさが心地よく、ヴァイオレットはほぅと息を着いた
ヴァイオレットの魔法は決して強いとは言えない。ほかの貴族に比べて魔力はとても多い方ではあるが、強力な攻撃魔法が使える訳では無い...ヴァイオレットの強みはその器用さだった
魔法は貴族のみが使えるものであり、逆に言えば魔法が使えれば平民でも貴族にだってなれる可能性はある。よって、貴族たちはこぞって強い魔法をと息巻くがヴァイオレットは魔法が使えるからこそ平民たちを守る義務があると考えた
持ち前の器用さで魔力を繊細に練り上げ、細やかで優しい魔法で困っている人を助ける姿は妖精か精霊か、はたまた天使か女神か
怪我をしてしまった子供に治癒魔法を施し、領地が雨不足で荒れた畑には自分の足で周って細やかな雨を降らした
人々はヴァイオレットに感謝したがその反面でぴくりとも動かない人離れした容姿を持ったたった7歳の少女に畏怖した
最近ではヴァイオレットの評判に嫉妬した義母によって家からも出られなくなってしまい近くの領地を見て回ることもできなくなってしまったが
自分が育てている花壇でヴァイオレットは考え込んだ。
表情が無くなったヴァイオレットだったが感情がなくなったわけではない。優しい心根はどんな仕打ちを受けても無くしてはいなかった
そして年相応に恋にも憧れていた。
こっそりと育てている花たちにお水を降らしながら自分にもいつかおとぎ話のような王子様が現れるのかと胸を高鳴らせもする。...無表情だが。
「王子様が現れたら、いつか現れたら、お父様とマリベル義母様とアナースタと王子様と私で仲良く...王子様がいればきっと...」
自分の力ではもう家族で仲良くなどできないということを理解しているヴァイオレットはやはり子供らしいとは到底言えなかった。
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