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side 亮太(息子)
俺の家族。
しおりを挟む俺の家族は父だけだ。
母は俺がすごく小さい頃に病気で亡くなったらしい。
「亮太に似て、笑顔が素敵な優しい人だったよ。」
父は懐かしそうに、優しい顔で母の話をしていた。
俺は母を写真でしか見たことないから、寂しいとか悲しいとかそんな感情はあまり湧かない。
所詮、写真の中の人だ、笑ってるなぁ位しか思わない。
でも父が嬉しそうに母の話をするから、俺は小さい頃、父から母の話を聞くのが好きだった。
「パパ、ママのことだいすきね?
ぼくのこともすき?」
父は必ず優しく頭を撫でて肯定してくれた。
「ぼくもパパだぁいすき。」
父は男手1つで俺を育ててくれた。
とは言っても、父は薬学部教授から大企業の研究所所長へと華麗に転身したハイスペックなので、俺んちはそれなりに裕福だ。
家はコンシェルジュ付きタワーマンションの上階にある。
父は、開発した薬の特許料や他にも色々資産管理しているらしく、今仕事を辞めても暫くは遊んで暮らせる、と言っていた。
父は「私は父親だけじゃなくて、母親の代わりも勤めてみせる。」と、張り切っていたが、家事はてんでダメだった。
だから家事は家政婦を雇っていた。
沢さんという60才位の女性で俺がチビの頃からウチに来てくれていた。
沢さんは親切でよく気が利く人だった。
料理とか掃除とか、子供の頃から色々と俺に教えてくれた。
家事は仕方ないとして、父は俺にすごく甘い。
欲しい物は何でも買ってくれたし、千葉の夢の国にも、ナガシマのすごいジェットコースターにも、連れて行ってくれた。
クリスマスには必ずサンタクロースが大きなプレゼントを持ってきてくれた。
誕生日は出張で家に居なくても、絶対にお祝いしてくれる。
流石にサンタは来なくなったが、誕生日のそれは高校生になった今も変わらない。
でも俺は知っている。
俺は父の本当の子供ではない。
それを知ったのは、割と大事件だった。
世間もマスコミも警察も巻き込んで、それはそれは大騒ぎになった。
中学に上がってすぐ、学校からの帰り道に誘拐されたのだ。
父が身代金を支払い、1ヶ月後、俺は無事に救出された。
その時の誘拐犯が言っていたのだ。
俺は死んだ母の連れ子で父の子供じゃないと。
もしも身代金が支払われないようなら、殺してしまおう、と。
殺されるのもショックだったが、何より、父と自分の血が繋がって無いことがショックだった。
無事救出され、普通の生活に戻っても、父と血の繋がりがないと言われたのが、父と他人だと言われたようで、不安は大きくなる。
やんちゃなくそガキがだった俺は、1ヶ月で人見知りで大人しい子供になった。
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