僕の恋、兄の愛。3

文字の大きさ
上 下
22 / 27
閑話

③兄と戒川さん(兄視点)

しおりを挟む

そう、ウチの両親は、買い出しやら何やらで時々、俺と健介の新居にやって来るのだ。

同じタワマンの住人は知らなくて正解だが、コンシェルが知らんのは何故だ。
と言うか、何だ継母って、戒川さんも近隣の奥様方も昼ドラの見すぎだろ。

俺達にまでそんなドラマ性を求めんな。

「だけど健介くんが言ってたのは・・・。」

「天涯孤独になって、継母が出て来て、家を奪われるのって、弟と戒川さんが見てる昼ドラの話じゃないですか?
俺、弟から聞いたことあるかも知れません。」

「・・・。
あっ。
『水牛と百合子』!」

「はい、多分その『百合子』です。」

「なる程。」

「それに俺、学生ん時は勉強と研究に追われてて。
バイトは長期休暇にちょこっと、社会勉強の為の短期バイトの経験しかないです。」

「おおぅ。
そうなんだ・・・。
ごめんね、勝手に苦労青年扱いした上にご両親を成仏させちゃって。」

「や、大丈夫です。
納得していただけてよかった。」

「そりゃ『牛百合』で納得だよ。
けど、タワマンの奥様方の噂・・・どうする?」

「・・・噂の方はスルーしといてください。」

「奥様方の噂、そのまんまでいいの??」

「正直面白い・・・興味ないです。
戒川さんはじめ、コンシェルの皆さんには何かとお世話になってますし。
でも今後、俺に何かあった時の為に把握しといて欲しいです。
天涯孤独扱いされるのは弟が可哀想ですので。」

「分かった。
コンシェル達にも伝えとくね。」

「「・・・。」」

気まずい・・・

「・・・『うしゆり』って言うんですね。」

「・・・昼ドラ?そう。『牛百合』。
水牛、キーになるんだよ。
百合子のピンチには絶対助けに来るしね。」

「助けに来るんですか?」

「来る。」

「牛が?」

「水牛が。」

「水牛さんって言う人ですか?」

「ううん。牛。」

「牛。」

「うん。牛。」

「牛が助けに・・・。
百合子も牛ですか?」

「いや、百合子は人間だけど、三つ子の末妹。
に見せかけて実は叔母なんだ。」

「誰の叔母です??」

「主役(ヒーロー)の祖母ん家の隣の寺によく来る神主の孫が・・・って、話せば長くなるんだよ。
・・・本当にドラマと君達のプライベート、混同しちゃって申し訳ない。
天涯孤独では無いって、コンシェルから住民には漏洩しないよ。
でも噂の件は私が対応する事にするね。
近隣トラブルにはさせないから安心して。」

「コチラこそすいません。
弟はテンションが上がると話の主語がウッカリ抜けますので、それを聞いて戒川さんが混乱したんだと思います。」

「いやいや、僕こそごめんね。
あんなに『牛百合』ガッツリ見てて分からないとか、年かなぁ。
昼ドラ、ちょっと控えよっかな。」

「いや、弟は戒川さんとの昼ドラタイムを楽しみにしてるので・・・。」

「僕が控えたら健介くん泣いちゃう?」

「・・・多分・・・泣いちゃう。」

「「・・・。」」

「これからも弟共々よろしくお願いします。」

「コチラこそ。
よろしくね。」

「「・・・。」」

「あ、じゃぁソロソロ帰ります。」

「あ、あぁ、引き留めてごめんね。」

俺、何でコンシェルポートに寄ったんだっけ・・・。
あ、そうだ、こないだの礼だ。
・・・今度改めて菓子折持っていこう。

この後、『牛百合』を健介と一緒にちょっと見た。
確かに、水牛は百合子のピンチに助けに来た。

「兄ちゃん!
アレが水牛の必殺技の『ギュギューン光線』だよ!」

「・・・牛なのに光線・・・鼻輪から・・・。」

「継母から家を取り戻して、温泉掘り当てて、秘密結社の野望を食い止めて、姑の魔王を倒して、母を探して宇宙へ旅立つんだ!」

「百合子さんが?」

「水牛と百合子が!!」

「それは・・・昼ドラなの・・・??」

「うん!!」






 ーー  fin ーー












※市井兄は、弟に男が寄ってきたら即刻駆除します。
でも戒川さん(46)には愛妻(45)と息子(26)と孫(4)が居り、戒川さんにとっては市井兄は息子、市井弟は孫みたいな存在です。
それを知っているので市井兄は戒川さんを警戒していません。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

片桐くんはただの幼馴染

ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。 藤白侑希 バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。 右成夕陽 バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。 片桐秀司 バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。 佐伯浩平 こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

逃げるが勝ち

うりぼう
BL
美形強面×眼鏡地味 ひょんなことがきっかけで知り合った二人。 全力で追いかける強面春日と全力で逃げる地味眼鏡秋吉の攻防。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...