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閑話
③兄と戒川さん(兄視点)
しおりを挟むそう、ウチの両親は、買い出しやら何やらで時々、俺と健介の新居にやって来るのだ。
同じタワマンの住人は知らなくて正解だが、コンシェルが知らんのは何故だ。
と言うか、何だ継母って、戒川さんも近隣の奥様方も昼ドラの見すぎだろ。
俺達にまでそんなドラマ性を求めんな。
「だけど健介くんが言ってたのは・・・。」
「天涯孤独になって、継母が出て来て、家を奪われるのって、弟と戒川さんが見てる昼ドラの話じゃないですか?
俺、弟から聞いたことあるかも知れません。」
「・・・。
あっ。
『水牛と百合子』!」
「はい、多分その『百合子』です。」
「なる程。」
「それに俺、学生ん時は勉強と研究に追われてて。
バイトは長期休暇にちょこっと、社会勉強の為の短期バイトの経験しかないです。」
「おおぅ。
そうなんだ・・・。
ごめんね、勝手に苦労青年扱いした上にご両親を成仏させちゃって。」
「や、大丈夫です。
納得していただけてよかった。」
「そりゃ『牛百合』で納得だよ。
けど、タワマンの奥様方の噂・・・どうする?」
「・・・噂の方はスルーしといてください。」
「奥様方の噂、そのまんまでいいの??」
「正直面白い・・・興味ないです。
戒川さんはじめ、コンシェルの皆さんには何かとお世話になってますし。
でも今後、俺に何かあった時の為に把握しといて欲しいです。
天涯孤独扱いされるのは弟が可哀想ですので。」
「分かった。
コンシェル達にも伝えとくね。」
「「・・・。」」
気まずい・・・
「・・・『うしゆり』って言うんですね。」
「・・・昼ドラ?そう。『牛百合』。
水牛、キーになるんだよ。
百合子のピンチには絶対助けに来るしね。」
「助けに来るんですか?」
「来る。」
「牛が?」
「水牛が。」
「水牛さんって言う人ですか?」
「ううん。牛。」
「牛。」
「うん。牛。」
「牛が助けに・・・。
百合子も牛ですか?」
「いや、百合子は人間だけど、三つ子の末妹。
に見せかけて実は叔母なんだ。」
「誰の叔母です??」
「主役(ヒーロー)の祖母ん家の隣の寺によく来る神主の孫が・・・って、話せば長くなるんだよ。
・・・本当にドラマと君達のプライベート、混同しちゃって申し訳ない。
天涯孤独では無いって、コンシェルから住民には漏洩しないよ。
でも噂の件は私が対応する事にするね。
近隣トラブルにはさせないから安心して。」
「コチラこそすいません。
弟はテンションが上がると話の主語がウッカリ抜けますので、それを聞いて戒川さんが混乱したんだと思います。」
「いやいや、僕こそごめんね。
あんなに『牛百合』ガッツリ見てて分からないとか、年かなぁ。
昼ドラ、ちょっと控えよっかな。」
「いや、弟は戒川さんとの昼ドラタイムを楽しみにしてるので・・・。」
「僕が控えたら健介くん泣いちゃう?」
「・・・多分・・・泣いちゃう。」
「「・・・。」」
「これからも弟共々よろしくお願いします。」
「コチラこそ。
よろしくね。」
「「・・・。」」
「あ、じゃぁソロソロ帰ります。」
「あ、あぁ、引き留めてごめんね。」
俺、何でコンシェルポートに寄ったんだっけ・・・。
あ、そうだ、こないだの礼だ。
・・・今度改めて菓子折持っていこう。
この後、『牛百合』を健介と一緒にちょっと見た。
確かに、水牛は百合子のピンチに助けに来た。
「兄ちゃん!
アレが水牛の必殺技の『ギュギューン光線』だよ!」
「・・・牛なのに光線・・・鼻輪から・・・。」
「継母から家を取り戻して、温泉掘り当てて、秘密結社の野望を食い止めて、姑の魔王を倒して、母を探して宇宙へ旅立つんだ!」
「百合子さんが?」
「水牛と百合子が!!」
「それは・・・昼ドラなの・・・??」
「うん!!」
ーー fin ーー
※市井兄は、弟に男が寄ってきたら即刻駆除します。
でも戒川さん(46)には愛妻(45)と息子(26)と孫(4)が居り、戒川さんにとっては市井兄は息子、市井弟は孫みたいな存在です。
それを知っているので市井兄は戒川さんを警戒していません。
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