僕の恋、兄の愛。3

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閑話

①兄と戒川さん(兄視点)

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◆◆ ◆ 救急車騒動の1週間後 ◆ ◆◆

「「あ。」」

帰宅時のエントランスにあるコンシェルポートにて戒川さんに会った。
思えば、脳震とう事件以来だ。

あの時は随分とお世話になったし、精密検査で問題なしの結果を貰ったので、そろそろお礼しようと思っていた。

健介は『戒川のおじちゃんとテレビ~♪』とあれからもちょくちょくコンシェルポートに昼ドラを見に行っているようだ。

俺は毎日タワマン内のコンシェルジュポート前を通って通勤するのに、俺の救急搬送事件以降、戒川さんを見かけなかったから『意外と会わないもんだな。』なんて暢気に構えていた。

折角なので挨拶しとこう。

「こんばんは。
おかえりなさい、優介君。」

「こんばんは、戒川さん。
ただ今戻りました。
この間はお騒がせしました。
大変お世話になりありがとうございました。」

「いえいえ。
困った時のマンションコンシェルジュだからね。
体は、異常なかった?」

「はい。
『暫く様子見を。』と言われていましたが、『1週間の経過観察で特変なし、ですね。MRIも変わりありません。もう心配は無いですよ。』と先程医師からお墨付きをもらいました。」

「そう、よかった。」

「お世話になりました。
いい大人が滑って後頭部打撲で脳震とうとか、お恥ずかしい。」

「そう?
事故はいつ起こるか分からないから。
それより私は、健介くんがコンシェルジュルームに内線くれたの、英断だったと思うよ。
優介君、自分だけじゃ面倒くさくて受診しなかったでしょう?」

「ええ、まあ。」

「若いからって、油断は感心しないよ。
優介君にもしもの事があったら大事じゃないか。」

「そうですね。
医療分野の人間が、人体に対して適当ではいけませんね。
次からはちゃんと対処します。」

「そうだよ!
健介くんを天涯孤独になんてしちゃいけない。
優介君は健康管理に気を付けてね。」

「はい、気を付けま・・・。
・・・。
・・・?
・・・天涯孤独??」

「健介くんが言ってたよ?
家族は自分達だけだって。
あ、ごめん、内緒だった??」

「・・・?
いえ?そんな事は・・・??」

そりゃあ、健介と付き合っている以上は・・・男同士で兄弟だ。
養子縁組でもしないと、将来的にはそうなるだろうけど、今は両親も健在。
なぜ天涯孤独になるのか。

「君達のお父さん、急に亡くなったんでしょ?
お父さんのご葬儀の時に、お父さんの後妻さんが家を乗っ取って、君達を追い出したって。」

「親父が急逝?後妻?家乗っ取り?
それドコの家の話ですか?」

「だから、継母でしょ?
健介くん『継母なんかに負けない。』って言ってたよ。」

「健介が・・・?
・・・??」

「継母に虐められたりしてたの?
健介くん、小さいもんね、幼少期に栄養不足だったりした?
児童虐待で訴えるなら我がコンシェルも協力するよ。」

「継母。
児童虐・・・。
ウチの親、暴力行為向いてない人種なんですが・・・。」

健介が、母から受け継いだ低身長ちびっ子遺伝子のお陰でエライ勘違いが身近に育ってる事を知る。

・・・どうした、マンションコンシェルジュ。

「それで優介君が高校の時に2人で家を出て、健介くんをここまで育てたんだってね?
バイト掛け持ちしながらの学生生活でも首席だったって聞いたよ。
高校生が男手1つで子育てなんて凄いよ。」

「俺が男手1つで弟を?
確かに大学には奨学金を受けながら行きましたが・・・。」

「若いのに苦労したね。」

「んんん?
そこまで言われる程苦労は・・・??
何処からそんな話に・・・・。」

戒川さんからもたらされた、自分が知らないファミリーヒストリー(ニセ情報)に目眩がした。










※コンシェルポートはタワーマンションに勤めるコンシェルジュさん達の詰め所です。

※タワマンで悲劇の苦労人と思われてる市井兄弟。
SFファンタジー愛憎泥沼系の昼ドラ『水牛と百合子』のヒットによる影響もあり、誤解が誤解を呼んでいる状態です。

※市井ご一家は、両親伊豆、祖父母は沖縄、叔父はシンガポール、従兄弟が北海道と九州と国内のアチコチに居て皆健康です。
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