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市井弟の成功談
自己嫌悪。
しおりを挟む・・・と言うことは。
『高校生の告白リサーチ』も、本当に兄ちゃんの職場で、最近の高校生の恋愛、ってのが話題になって、「高校生現役の弟くんに聞いてみて。」って頼まれたの?
所長さんからの昇進祝いのプレゼントも、単に所長さんのセンスで、国技のペアヌイグルミを送ってくれただけ?
もし、もしそうなら・・・。
ど、どどどうしよう。
ややややばい、やばいぞ。
僕、浮かれ切ってたから、僕の勘違いだった場合の対策を全く考えて無かった。
・・・と言うか、兄ちゃんの告白リサーチ、僕、嘘教えたって事になるんでは!?
しかも、兄ちゃんからの僕の嘘告白情報の報告を受けて、研究所の人達も『僕の理想のプロポーズ』を『コレが最近の高校生の一般的な告白方法だ。』って勘違いしちゃってる!?
その上、僕は図に乗って自分のオススメ乙女ゲームの話を、盛りに盛って「高校でこれが流行ってる。」って兄ちゃんに言っちゃったのだ。
どどどどどうしよう。
僕がちゃんと兄ちゃんの話を聞いてなかったばっかりに・・・。
落ち着かず、家の中をウロウロしていると、玄関の“ユウくんとケンちゃん”が目に留まった。
玄関にちょこんと座る可愛いペアのヌイグルミ。
もう泣きそうだ。
『兄ちゃんにプロポーズして貰えるかも。』なんて浮かれてた自分がバカみたいだ。
・・・どうしよう・・・。
引っ越して、以前より広くなった自宅の玄関ホールで兄ちゃんの帰宅を待つ。
取り合えず、まず兄ちゃんに謝らなきゃ。
高校生の告白事情も、流行ってる乙女ゲームも、嘘教えてごめんなさいって。
ペアリングが欲しかったから嘘ついたの、って言ったら兄ちゃん怒るかな。
『恋人に嘘つく子なんて嫌い。』って言われちゃったらどうしよう。
ソレから、兄ちゃんの研究所の人達にも謝らなきゃ。
研究所の人達、お仕事の出先で話題にしちゃったりしてたらどうしよう。
僕のせいで『世間に疎い無知な研究員』とかって言われてないかな。
ごめんなさい。
「・・・ぐすっ・・・」
嘘ついた僕が泣くなんて卑怯だと思うけど、涙が止まらない。
沢山の人に迷惑をかけちゃった。
兄ちゃんに嫌われたらどうしよう。
兄ちゃん、ごめんなさい。
僕の事、嫌いにならないで。
僕は玄関のドア前でグズグズと座り込んだ。
◆◆ ◆1時間後◆ ◆◆
ピーンポーン、ガチャガチャ。
家のインターホンに続いて鍵を開ける音・・!
兄ちゃんが帰って来た!
「けーん。ただい・・・おわ!」
ドアの直ぐ側に踞ってたせいで兄ちゃんが驚いた声を出した。
でもそんな事気にしていられない。
僕・・・謝らなきゃ。
「驚いたよ健、かくれんぼでもしてたの?
ドアにぶつからなかった?」
優しく声をかけてくれる兄ちゃんに、意を決して少しづつ顔を上げ、ゆっくりと見上げる。
「あのね~、兄ちゃん。」
僕の事、嫌いにならないで。
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