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夢の中の出来事(美咲SIDE)
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…冴子の部屋には一晩、いや二晩泊まったのだったか。
恵比寿の自宅までどうやって帰って来たのか、それさえあまりよく思い出せない。
冴子の部屋を出る時、どんな言葉を最後に残したろうか。気の利いた事を言えたか、それどころではないという様相のまま逃げ出したような恰好になりはしなかったか。
自信はない。
いや、帰宅したのは夜の事だ。体内時計が狂うほど行為にふけったのは、何年ぶりだろうか。それも、あまりよく思い出せない。
「……」
年末で、しかも過労かもしれないという症状で病院へかかるのも今一つ良くない気がして、メンタル系のクリニックを開業している同年代の知人に軽く相談してみると、「休みが足りないのよ」などと乱暴に打ち捨てられてしまった。
12月は本当に精神的にしんどかった。特に袴田の件はまだなんとも決着していないし、仮に彼が諦めてくれたとしても、彼の周囲はどう言うのだろうか。
そんな事を考えて何が変わるわけでもないのに、彼の味方を自称する人たちから自分が揶揄されるのではないか、という不安が立ち込めてくると、それだけでかなり滅入ってくるのだ。
休みが足りない、そんな事はわかっている。実際休んでいないのだから。
どこかの本だったか、ネット記事で、女性の性欲のピークは40代だ、というのを読んだ事がある。
自分でも、おそらくそうなんだろうなと思う。仮に出産や子育て経験で生活パターンががらりと変われば、もしかしてそんな事を実感する暇はないのかもしれないけど、いやあってもそれは感じるのかもしれないけど、特に自分のように仕事中心の暮らしを継続してきていると、なおさらそれは実感される気がした。
一旦体力が底をつくと、回復には時間がかかる。その事は、それこそ30代も半ばになって極端に実感するようにもなり、意識してきたつもりだったのに、冴子の身体を目の前にして、ああいうしおらしくも物欲しげな態度を目の当りにして、それでも自分を優先するという選択肢に立ち戻る暇はなかった。
そんな事を考える余裕すらなかったのではないか。
つい先日冴子の身体や美容をケアしてやらねばと決意したはずなのに、お正月休みで数日空きとなったのを幸いに、早速やってしまった感が否めない。
改めて、使い慣れたシャワーで身体を洗い流して、パジャマに着替えて眠る事にする。何か食べる気にはなれなかったが、シャワー上がりに喉が渇いて、イオン系機能性スポーツ飲料をひとしきり飲んでからベッドに入った。
冴子の部屋での最後の半日は単に眠っていただけだったのだけれども、それでも冴子が気にする通り、シングルベッドで女性二人とは言え一緒に眠るには狭い。お互いの身体がどこかしら触れて、重なり合うようにして眠っていたから、結局精神的にはあまり休まっていないだろう。それはきっと冴子も同じはずだ。
「…」
じっとベッドに横たわって、冴子の部屋での出来事を一つ一つ思い出してみる。記憶が飛んでいる部分もあるが、例えば冴子がアサイーボールを作ってくれた、という事だったり、さかのぼって冴子が「いいのか」という表情で自慰をしている場面だったりが思い出されてくる。
…そうだ、更に冴子のためにリモコンローターやコスプレ衣装も買ったっけ。あれはどこに届く設定にしていたか。確か私の部屋だったように思うが。
もう一つ、重要なのは、確か私が「もう一日ここで過ごす」という趣旨の事を宣言した時に冴子が見せた従順そうな表情だった。
…あの時、私は冴子に何と言ったんだったか。その場の勢いに任せて、思いつくままの言葉をそのまま口にしていたから、より一層思い出すのに苦労する。
「自分の発言を忘れない」のは、能力の問題ではない。その言葉を事前に用意している、または自分の持つボキャブラリの中から選択しているだけの事だからだ。
「なぜ」その言葉を選んだのか、理由があるから、自分が何と言ったのかを正しく思い出せるのだ。理由のない発言は、その言葉でなければならない必要性があるのかないのかわからないから、忘れてしまう。
だから私は、「なぜ」その言葉を聞いて冴子がああいう表情になったのかを考える事に集中する。
…それで芋づる式に思い出した。「もう一日飼われろ」と言った事を。
冴子は期待したのだろうに、あんな事になってしまって申し訳なく思う。
でも、冴子は私の様子が変わっても、それほど狼狽もせず必要と思われる対処を施してくれた。
冴子を見ていると、乾いたスポンジのように、どこまでも快楽を吸収して、それでもまだいけるといった風情で欲しがっているようにも見えるのだが、かと言ってそれを必ずや与えなかったとしても、わかりやすく不満そうにする素振りは見せない。
それは、不満だが態度には出していないだけなのか、それとも本当にあってもなくてもどちらでもいいのか、いつどちらの気持ちなのかは私にもよく読み取れないでいる。
いつも、前者かもしれない、という不安はあるのだが。
スマホを見ても、冴子からのメッセージは届いていない。
自分が何かメッセージを送って、それに私が返信しなければならないと考える事すら遠慮しているのか。冴子ならそういう思考をしかねないが。
もう一つ、冴子に嘘を吐いている事がある。
その事が昨日の私の発言で、冴子に気付かれたかもしれないと思っているので、いずれ訂正しなければならないのだが、冴子はもうその事すら忘れているかもしれない。
それはこの部屋の持ち主が、冴子に説明したはずの「弟夫婦」のものではなく私のものだという事だ。
初めて会った時、ここが自宅だと知られたくなかったのと、冴子が部屋の広さに恐縮していたのでつい言ってしまった嘘だ。
昨日私は、冴子に「住むなら私の部屋にしなさい」というような事を言ったけど、冴子は特に違和感を持っている様子はなかった。ここが弟夫婦の部屋であるという情報自体が、冴子の頭の中では相当薄らいでいるのかもしれない。
まあ、冴子と暮らすのなら、ここを出てまた新しく住む場所を変え手みてもいいのかもしれない、と思った。
*-*-*-*-*-
…ここはどこだろう。とても大きな部屋に大きなデスク、ハイバックシートに背中を預けて私は座っている。
目の前にはレターケースとパソコン、壁にはたくさんの書類がとじられたファイルが並んでいる。
会社だろうか、でもここは役員室?…こんな部屋あったろうか、と考えてみるがよくわからない。
すると足元に冴子が跪いていて、なぜか私の股間に顔を埋めている。
ぱっと辺りを見渡して、とりあえず人の気配がない事にほっとしていると、どこのものかわからない制服姿の冴子がおもむろに私のショーツを下ろして、秘部にしゃぶりついてきた。
「…お姉さま」
冴子は私が履いているタイトスカートを片手でたくし上げて椅子と私の身体の間にそれを挟むと、再び口淫を始める。
「冴子、っ…」
冴子が舌を尖らせて、私の花弁の間を下から舐め上げていく。萌芽の先端でくるくると舌を回して、最後にはジュッと音を立てて萌芽に絡んだ唾液と蜜を吸った。
それを機械的に繰り返し行っていく。
私は思わず冴子の頭を押さえつけるように両手で軽くつかんだ。
冴子の、さらりとした黒髪が乱れてしまうのが嫌だと思う反面、これを乱すのが自分だけの特権のようにも思えてきて、知らずその髪に指が絡んでいく事にも優越感を覚えた。
冴子はさきほどからの動きを辞める様子もなく、「んっ」「はぁ」という小さな吐息をこぼしながら口淫を続けている。
…冴子の下半身、ショーツの中は今頃どうなっているだろうか。蜜が溢れそうなほど興奮しているだろうか。
「…っ」
ごくわずかに身体が痙攣して、小さく達した感覚が来ると、私の身体は一気に弛緩した。両脚が自然と左右に開いて、冴子の頭をつかんでいた両手も離れて、ただだらりと椅子に沿わせるだけの恰好になってしまう。
恥ずかしいとか、申し訳ないという気持ちが消え去って、もっと、というはしたない欲望だけに支配されている事が、きっと見た目にもよくわかる事だろう。羞恥心などどうでも良い、と思い始めると声も自然に漏れてしまう。
「あ、冴子…上手いわよ」
「…はい」
口淫の合間に、冴子はうまく会話に応じてくる。
長い髪が前に落ちないように、私は冴子の髪に再び触れて冴子自身の耳にかけてやった。
冴子がぱっと嬉しそうな表情を見せたのもつかの間、いきなり私の秘部全体に噛みつくようにしゃぶりついてズズーッと蜜を吸い上げた。
「や…あ…っ、それもいい」
冴子はしつこくズズー、っと繰り返し盛大に音を立てて私の秘部に吸い付く。その音に紛れて私も喘ぎ声をあげた。
「あ、あ…すご…い、いいよ…」
冴子は、今度は唇の上下を使って、膨らんだ私の萌芽をしごいてくる。唇でしごきながら、舌先で萌芽の先端をつついたり、嘗め回してくる。
「冴子、それも…好き、あ…ん……」
せっかく、髪が汚れないようにと気を使ったつもりなのに、冴子は気にしないどころか、むしろ自分の顔や髪に蜜が付いて汚れる事を望んでいるかのようだ。
そんな姿を見ていると、冴子は自分自身の美しい顔や身体を汚されるのが好きなのか、と邪推したくなるし、冴子自身もそれで興奮する傾向がある事を自覚しているらしい。
頭の中だけで、「そんな風だから変な男につけ込まれちゃうんだよ、冴子は」と突っ込むが、それを言葉にはしない。
口淫を続ける冴子に、喘ぎながらも聞いてみる。
「冴子、んっ……も、濡らしてるの?…」
冴子が目だけを上げて頷いてくる。
その、恥ずかしそうな態度にまたこちらも興奮する。
既に派手に口淫を続けて、十分恥ずかしいを通り越した行為に及んでいるはずなのに、自分が濡らしているかどうか答えるのに改めて恥ずかしがるのか、と。
「…お姉さま、ここ、どんどん溢れてきてます」
「冴子もでしょ?…は、あ…ん……」
「…はい」
冴子が、態勢を変え手更に身体を下に沈めたような位置に陣取る。横座りのような姿勢になったのだろうか。まるで私のこぼした蜜を下から受け止めるような角度で、花弁の下端までくまなく嘗め回す。
…そしてどうやら、冴子自身も我慢できなくなったのか、自分で自分の下半身を弄り始めたようだった。
「…冴子、何してるの」
「…あ…その」
「自分で触ってるのかしら」
「…」
ごまかすように冴子はまた私の秘部をぺろぺろと嘗め回すようにして口淫を再開させた。その動きはまるで雌犬のようで、私も思わず身体が硬直しそうになる。
「あ、冴子…それ、ずっとして……あぁんっ…」
もし、バター犬というものが実在するのであれば、今されているこの感覚に近いかもしれない、などと奇妙な妄想にとらわれながら、私は大きく果てた。
だがそれと同時に、冴子の身体に溜まったものを一刻も早く吐き出させてやりたい、という気持ちにもとらわれていた。だから実際に達した快感に浸っていたのはほんの一瞬の事だっただろう。
「…あ、はぁ…はぁ」
達した後も、しばらく痙攣する秘部に吸い付いて、ゆるゆると舌を動かしていた冴子がようやく顔を離すと、口の周辺にはべっとりと蜜がついて、目も当てられないぐらい汚れていた。しかし冴子はわざとらしくその蜜で汚れた顔を私に向けてくる。その様子は誇らしげですらあった。
「…お姉さま」
「そこに座りなさい」
私の方は、少なくとも顔に関して言えば、冴子とは違いメイク一つ崩れていない状態だ。そんな状態のまま私は冴子に向かって冷たく言い放った。冴子は撃たれたように、でもいつもそうしているかのような自然な動きで、おずおずと私の目の前の巨大なライティングデスクに腰を引っかけるようにして座った。冴子の脚がわずかに床から浮いて、不安定な態勢になる。
言っている私だって、下半身は蜜でぐちゃぐちゃの状態なのだから、そんな冷淡に冴子を突き放せるような立場でもないような気はするが、ここは仕方ない。思いついて足を組んでみると、私の汚れた場所はたちまち隠れて、何事もなかったかのような姿に変わる。
「……」
「それでいいの?」
冴子が脚をふらふらさせているので、私は詰問する。冴子は少し考えながら、正解を探っているようだった。
「何がしたいのか、言ってみて」
「…」
「大丈夫、誰も来ないから」
「はい」
冴子は、小さな声で「おまんこ触りたいです」と告げてきた。
「誰の?」
冴子の瞳が一瞬潤んだように光る。
「その…私、自分の…です」
「いやらしい子ね」
「…はい」
冴子は下を向いているが、顔にへばりついた蜜を拭おうともしない。もはや自分の顔が蜜で汚れている事すら、忘れてしまっているようだった。
「いいわよ、して見せて」
「…はい」
すかさず冴子の脚が開いてデスクの上に乗る。デスクの上でM字開脚した状態で、冴子はいきなり自身のショーツの中に手を突っ込んで中のものを弄り始めた。
「…あ、あんっ…!」
冴子がいきなりかなり大きな声で喘ぐので私は一瞬びっくりした。この状況に、私以上に冴子が興奮しているのがわかる。
「すぐいっちゃいそうね、冴子」
私はわざとらしく余裕のある微笑を浮かべて見せながら、椅子を動かして傍らにあるパソコンのキーボードを叩いた。
私の視線が反れて、冴子は泣きそうになりながら訴える。
「見てくれるって…」
「して見せてとは言ったけど、見ててあげるとは言ってないわよ?」
「…」
私がわざと意地悪をしている事に、冴子も気付いているはずだ。
それなのに、私ときたら冴子に触れたくて仕方ないのに、我慢しきれる自信がないのもあってわざとこんな事をして、自分でもこれは酷いと思う。
しかしそれもほんの一瞬の事で、見られていないならそれはそれで冴子はどうせ勝手にやるタイプだ。冴子は諦めたのか、もう自分の好きなようにやろうと思ったのか、さきほどと同様に声をあげながら自慰を再開している。
「あ、お姉さま…っ」
私が見ている時にはそんなにやたらと「お姉さま」とは呼んでこない気がするのだが、見ていないとなれば話は別なのか、冴子は「お姉さまぁ」と何度も声に出しながら喘いだ。
「お姉さま、お姉さま…いっちゃう」
「もういくの?困ったわね」
「だって、あ…っ…!」
冴子の指の動きが、ショーツ越しにもわかるぐらいで、直接見えない分かえってそれが卑猥だった。
指の動きによってショーツの内側からクチュッと音が漏れてくる。
「あ、あ…お姉さまぁ…もう…」
「我慢できないのね、そんなにイきたいなら思う存分弄りなさい」
「はい…っ…あ…!」
冴子が達した気配があり、それまでじっくりとではなく横目に冴子の様子を見ている程度にしていた私は、再び椅子を動かして冴子の正面に回る。
達したはずなのに、冴子の指はまだ緩慢に動いていた。それもまたとてつもなく卑猥に見えた。
「何やってるの、冴子」
「…はぁ……ん」
「まだ欲しいのかしら」
「はい…もっと、したいです」
私は、冴子の指などお構いなしに冴子のショーツのクロッチの横から指を突っ込んで、冴子の秘部めがけて差し入れた。
「はんっ…」
そこは私の指をあっさりと受け入れる。
「ねえ…見えてるわよ?冴子」
「やめ、…あっ…や…そこです…お姉さま、そこ…だめ」
ショーツの、足の付け根側を強く引っ張ってそこから無理やり私が手を入れているので、冴子の秘部は正面からでも丸見えだった。これをやるとショーツがだめになるかもしれない、とほんの一瞬思ったけれど、辞める気にもなれない。
いつの間にか冴子の手はショーツの中から抜かれていて、両手は机の天板の上に着いた状態で、腰を私の方に突き出してきている。
冴子は身体全体でおねだりしているかのようでもあり、私はまた毒づきたくなるのをこらえながら、沸き上がるいやらしい欲望に任せて冴子の秘部や、その奥の冴子の感じる部分を徹底的に攻めた。
「あ、また…いっちゃう…お姉さま、お姉さま…」
「またイきそうなの?さっきイったばかりでしょ」
「だってそこ、されたら…あ…もうっ…んん…」
冴子が首を仰け反らせて左右に振って見せる。達する事から逃げたいとでも言いたげに。
「…聞こえるでしょ?冴子のいやらしい音」
「…っ、あ…」
冴子の喘ぎ声が一瞬静かになる。私の言う通りに、自分の股間からこぼれる音に耳を傾けているのだ。
感じながらも私の言葉に従順に従う、冴子のそういう所が猛烈にそそるのだ。だから私は、いや誰でもきっと、冴子に命令したくなる。
わざと音を立てて、冴子の奥深くに挿入した指を動かす。入口付近には私の指の根本が擦れていて、鈍い音を立てている。
冴子は静かになったまま、浅い呼吸を繰り返して快感に集中しているようだった。
「お姉さまの、指が…入ってると思うだけで、もう…」
冴子がそんな事を口走ると同時に、冴子の身体から力が抜けて、私の指先にしっかりとした圧力がかかった。
まるで、指を抜くなと言われているようで、冴子の言葉が伝えてくる満足感とは裏腹に、身体では絶対にこれ以上の快感を与えなければ許さない、と言われているようだ。
冴子はその矛盾に気付いてはいても、それを是正するような真似はしない。そういう娘だ。
「…」
「冴子、すっごい締め付け、ここ」
指を動かそうにも動けない様を知らせると、冴子はどうしたらいいのかわからないという表情になった。
「抜けないんですか」
「…どうかな」
「待ってください」
何とか、私の指が抜けるようにするためになのか冴子が身体をよじる。密着していた部分が少し浮いて、すっと指が抜けた。
私は思わず可笑しくなってしまう。
「…もしかして過去にもあったとか」
「…ありません」
少し怒っているようだったが、どうやら本当らしい。冴子なりに考えて、どうにか指が抜けるように工夫した結果のようだった。
*-*-*-*-*-
「…あ」
目が覚めて、私はさっきまでの光景が夢の中の出来事だったのかとわかり、全てが腑に落ちる感覚になった。
社でどんなに偉くても、あんな単独の役員室なんてなかったはずだし、冴子が着ていた制服も、社の受付のものとも秘書課のものとも違う。
更に考えてみれば、冴子は仕事の時髪は下ろしていないはずなのに、さっきは髪を下ろしていたではないか。
「…」
枕元には、冴子がやけくそ気味にクリスマスプレゼントとして私にくれた雪だるまのぬいぐるみがある。カーテン越しに陽射しがさしていて、もしかしたらもう昼近いのかもしれない。それが喉の渇きと尿意でなんとなくわかる気がした。
…夢でなら、体力の限界もなく無尽蔵に行為を続けられるなあ、などと、自分らしくもない事を考えながら、ミネラルウォーターに口をつけた。
そうすると空腹感を覚えて、自分の体力が戻りつつある事も感じられる。
「夢に冴子が出てきたよ」
冴子にそんなメッセージを送ると、「何か心配です」と、よくわからない返信が来た。
美咲「大丈夫、すごくリアルな夢で冴子は素直でいい子だった」
冴子「もしかして、変な内容の夢ですか」
美咲「変じゃない」
夢の内容までは知らせる事もないだろう。もしかしたら近い将来、夢と同じようなシチュエーションが来ないとも限らないし。
ほんの少し秘部が濡れているような気がしてトイレに行ってみると、案の定という状態だった。でもまたここから自慰をしてしまうと止まらないような気がして、辞める事にする。
それからなんとなく部屋着に着替えて軽く朝食を済ませ、ニュースアプリなどを眺めていると、宅配の荷物が届いた。
何だったろうか、と見慣れない差出人の名前を眺めつつ考える。
宛名は自分になっているのでとりあえず荷物の箱を開いた。
「これ…ね」
空けてなるほど、これは冴子と一緒に買った、アダルトグッズのネットショップからの荷物だった。
中身を改めながら、その時の冴子とのやり取りの記憶を呼び起こす。
冴子はあまりノリノリではなかった気がする。慣れているのかと思いきや、そうでもないらしい事に驚いたものだ。
唯一冴子が選んだと言って良いリモコンローターを取り出してみる。
冴子の身体にフィットするだろうか。音はうるさすぎないだろうか。
冴子は「音が大きいのは無理」と言って、静音設計のものを選んでいるので、これは比較的価格レンジは高い方だと思う。
装着する部分は淡い紫色をしていて、これを装着してからショーツを履いても、それほど目立たないだろう。
さっき見た夢の影響からか、一度自分で試したくもなったが、これは冴子のものだからと思い我慢する。
その他は半ば私が勢いで選んだコスプレ衣装の数々だ。
「数々」、具体的には五着以上ある。こんなに買ったのか、と昨日の自分の事なのに信じられない。
そのうちの一つのパッケージ写真に私はぎょっとした。
…さっき夢で冴子が着ていた制服にそっくりだったから。
「…これなのね」
クリームイエローのボウタイブラウスに黒とグレーのチェック柄のベスト、黒のタイトスカートという、コスプレ衣装の割にけっこう落ち着いたデザインである。強いて言うならスカート丈がけっこう短く、深いサイドスリットが入っている所が、わずかにコスプレ衣装臭い所か。
…きっと冴子には似合うだろう。
自分の記憶の信頼性が疑わしいので、他のコスプレ衣装も改めた。
特に冴子に着て欲しいと思ったのが、神社にいるような巫女さんの衣装、これも間違いなく冴子に似合うと思うが、着せてそれからどうするのか、と真面目に考えると、プレイに役立つ術が見当たらない気がする。
「…あれ?」
冴子のために選んだとは思えないものが一着出てくる。フェイクレザー製のボディスーツだった。
…これはどさくさ紛れに冴子がクリックしたものだろうか。私が選んだ記憶はないが、話の流れで冴子が私に勧めたかもしれない。
これも、いつどう使うのかと冷静に考えると、何だかしょーもない買い物だったような後悔に襲われてしまう。
ひとまず衣装類はたたんでひとまとめにしておき、リモコンローターは箱に戻してしまっておく。
…冴子は今頃どうしているだろうか。実家にでも帰る支度をしているかもしれない。
私はと言えば、帰省らしい帰省はしない。もう何年、いや十年近くそうしていると思う。親戚筋に顔は出すが、早々に退散するようにしている。長居してもろくな事にならないからだ。
「…冴子」
衝動的に、冴子がくれたぬいぐるみを抱きかかえて撫でてみる。
手触りが良いから、というような理由で選んだと言っていたっけ。
それを抱えたまま、私は再び眠る事にした。寝室のカーテンだけを閉め、部屋着は脱いで裸になる。
ぬいぐるみを抱えただけの恰好でベッドに潜り込み、そのまま眠りに落ちた。また、冴子の夢が見られるようにと願いながら。
恵比寿の自宅までどうやって帰って来たのか、それさえあまりよく思い出せない。
冴子の部屋を出る時、どんな言葉を最後に残したろうか。気の利いた事を言えたか、それどころではないという様相のまま逃げ出したような恰好になりはしなかったか。
自信はない。
いや、帰宅したのは夜の事だ。体内時計が狂うほど行為にふけったのは、何年ぶりだろうか。それも、あまりよく思い出せない。
「……」
年末で、しかも過労かもしれないという症状で病院へかかるのも今一つ良くない気がして、メンタル系のクリニックを開業している同年代の知人に軽く相談してみると、「休みが足りないのよ」などと乱暴に打ち捨てられてしまった。
12月は本当に精神的にしんどかった。特に袴田の件はまだなんとも決着していないし、仮に彼が諦めてくれたとしても、彼の周囲はどう言うのだろうか。
そんな事を考えて何が変わるわけでもないのに、彼の味方を自称する人たちから自分が揶揄されるのではないか、という不安が立ち込めてくると、それだけでかなり滅入ってくるのだ。
休みが足りない、そんな事はわかっている。実際休んでいないのだから。
どこかの本だったか、ネット記事で、女性の性欲のピークは40代だ、というのを読んだ事がある。
自分でも、おそらくそうなんだろうなと思う。仮に出産や子育て経験で生活パターンががらりと変われば、もしかしてそんな事を実感する暇はないのかもしれないけど、いやあってもそれは感じるのかもしれないけど、特に自分のように仕事中心の暮らしを継続してきていると、なおさらそれは実感される気がした。
一旦体力が底をつくと、回復には時間がかかる。その事は、それこそ30代も半ばになって極端に実感するようにもなり、意識してきたつもりだったのに、冴子の身体を目の前にして、ああいうしおらしくも物欲しげな態度を目の当りにして、それでも自分を優先するという選択肢に立ち戻る暇はなかった。
そんな事を考える余裕すらなかったのではないか。
つい先日冴子の身体や美容をケアしてやらねばと決意したはずなのに、お正月休みで数日空きとなったのを幸いに、早速やってしまった感が否めない。
改めて、使い慣れたシャワーで身体を洗い流して、パジャマに着替えて眠る事にする。何か食べる気にはなれなかったが、シャワー上がりに喉が渇いて、イオン系機能性スポーツ飲料をひとしきり飲んでからベッドに入った。
冴子の部屋での最後の半日は単に眠っていただけだったのだけれども、それでも冴子が気にする通り、シングルベッドで女性二人とは言え一緒に眠るには狭い。お互いの身体がどこかしら触れて、重なり合うようにして眠っていたから、結局精神的にはあまり休まっていないだろう。それはきっと冴子も同じはずだ。
「…」
じっとベッドに横たわって、冴子の部屋での出来事を一つ一つ思い出してみる。記憶が飛んでいる部分もあるが、例えば冴子がアサイーボールを作ってくれた、という事だったり、さかのぼって冴子が「いいのか」という表情で自慰をしている場面だったりが思い出されてくる。
…そうだ、更に冴子のためにリモコンローターやコスプレ衣装も買ったっけ。あれはどこに届く設定にしていたか。確か私の部屋だったように思うが。
もう一つ、重要なのは、確か私が「もう一日ここで過ごす」という趣旨の事を宣言した時に冴子が見せた従順そうな表情だった。
…あの時、私は冴子に何と言ったんだったか。その場の勢いに任せて、思いつくままの言葉をそのまま口にしていたから、より一層思い出すのに苦労する。
「自分の発言を忘れない」のは、能力の問題ではない。その言葉を事前に用意している、または自分の持つボキャブラリの中から選択しているだけの事だからだ。
「なぜ」その言葉を選んだのか、理由があるから、自分が何と言ったのかを正しく思い出せるのだ。理由のない発言は、その言葉でなければならない必要性があるのかないのかわからないから、忘れてしまう。
だから私は、「なぜ」その言葉を聞いて冴子がああいう表情になったのかを考える事に集中する。
…それで芋づる式に思い出した。「もう一日飼われろ」と言った事を。
冴子は期待したのだろうに、あんな事になってしまって申し訳なく思う。
でも、冴子は私の様子が変わっても、それほど狼狽もせず必要と思われる対処を施してくれた。
冴子を見ていると、乾いたスポンジのように、どこまでも快楽を吸収して、それでもまだいけるといった風情で欲しがっているようにも見えるのだが、かと言ってそれを必ずや与えなかったとしても、わかりやすく不満そうにする素振りは見せない。
それは、不満だが態度には出していないだけなのか、それとも本当にあってもなくてもどちらでもいいのか、いつどちらの気持ちなのかは私にもよく読み取れないでいる。
いつも、前者かもしれない、という不安はあるのだが。
スマホを見ても、冴子からのメッセージは届いていない。
自分が何かメッセージを送って、それに私が返信しなければならないと考える事すら遠慮しているのか。冴子ならそういう思考をしかねないが。
もう一つ、冴子に嘘を吐いている事がある。
その事が昨日の私の発言で、冴子に気付かれたかもしれないと思っているので、いずれ訂正しなければならないのだが、冴子はもうその事すら忘れているかもしれない。
それはこの部屋の持ち主が、冴子に説明したはずの「弟夫婦」のものではなく私のものだという事だ。
初めて会った時、ここが自宅だと知られたくなかったのと、冴子が部屋の広さに恐縮していたのでつい言ってしまった嘘だ。
昨日私は、冴子に「住むなら私の部屋にしなさい」というような事を言ったけど、冴子は特に違和感を持っている様子はなかった。ここが弟夫婦の部屋であるという情報自体が、冴子の頭の中では相当薄らいでいるのかもしれない。
まあ、冴子と暮らすのなら、ここを出てまた新しく住む場所を変え手みてもいいのかもしれない、と思った。
*-*-*-*-*-
…ここはどこだろう。とても大きな部屋に大きなデスク、ハイバックシートに背中を預けて私は座っている。
目の前にはレターケースとパソコン、壁にはたくさんの書類がとじられたファイルが並んでいる。
会社だろうか、でもここは役員室?…こんな部屋あったろうか、と考えてみるがよくわからない。
すると足元に冴子が跪いていて、なぜか私の股間に顔を埋めている。
ぱっと辺りを見渡して、とりあえず人の気配がない事にほっとしていると、どこのものかわからない制服姿の冴子がおもむろに私のショーツを下ろして、秘部にしゃぶりついてきた。
「…お姉さま」
冴子は私が履いているタイトスカートを片手でたくし上げて椅子と私の身体の間にそれを挟むと、再び口淫を始める。
「冴子、っ…」
冴子が舌を尖らせて、私の花弁の間を下から舐め上げていく。萌芽の先端でくるくると舌を回して、最後にはジュッと音を立てて萌芽に絡んだ唾液と蜜を吸った。
それを機械的に繰り返し行っていく。
私は思わず冴子の頭を押さえつけるように両手で軽くつかんだ。
冴子の、さらりとした黒髪が乱れてしまうのが嫌だと思う反面、これを乱すのが自分だけの特権のようにも思えてきて、知らずその髪に指が絡んでいく事にも優越感を覚えた。
冴子はさきほどからの動きを辞める様子もなく、「んっ」「はぁ」という小さな吐息をこぼしながら口淫を続けている。
…冴子の下半身、ショーツの中は今頃どうなっているだろうか。蜜が溢れそうなほど興奮しているだろうか。
「…っ」
ごくわずかに身体が痙攣して、小さく達した感覚が来ると、私の身体は一気に弛緩した。両脚が自然と左右に開いて、冴子の頭をつかんでいた両手も離れて、ただだらりと椅子に沿わせるだけの恰好になってしまう。
恥ずかしいとか、申し訳ないという気持ちが消え去って、もっと、というはしたない欲望だけに支配されている事が、きっと見た目にもよくわかる事だろう。羞恥心などどうでも良い、と思い始めると声も自然に漏れてしまう。
「あ、冴子…上手いわよ」
「…はい」
口淫の合間に、冴子はうまく会話に応じてくる。
長い髪が前に落ちないように、私は冴子の髪に再び触れて冴子自身の耳にかけてやった。
冴子がぱっと嬉しそうな表情を見せたのもつかの間、いきなり私の秘部全体に噛みつくようにしゃぶりついてズズーッと蜜を吸い上げた。
「や…あ…っ、それもいい」
冴子はしつこくズズー、っと繰り返し盛大に音を立てて私の秘部に吸い付く。その音に紛れて私も喘ぎ声をあげた。
「あ、あ…すご…い、いいよ…」
冴子は、今度は唇の上下を使って、膨らんだ私の萌芽をしごいてくる。唇でしごきながら、舌先で萌芽の先端をつついたり、嘗め回してくる。
「冴子、それも…好き、あ…ん……」
せっかく、髪が汚れないようにと気を使ったつもりなのに、冴子は気にしないどころか、むしろ自分の顔や髪に蜜が付いて汚れる事を望んでいるかのようだ。
そんな姿を見ていると、冴子は自分自身の美しい顔や身体を汚されるのが好きなのか、と邪推したくなるし、冴子自身もそれで興奮する傾向がある事を自覚しているらしい。
頭の中だけで、「そんな風だから変な男につけ込まれちゃうんだよ、冴子は」と突っ込むが、それを言葉にはしない。
口淫を続ける冴子に、喘ぎながらも聞いてみる。
「冴子、んっ……も、濡らしてるの?…」
冴子が目だけを上げて頷いてくる。
その、恥ずかしそうな態度にまたこちらも興奮する。
既に派手に口淫を続けて、十分恥ずかしいを通り越した行為に及んでいるはずなのに、自分が濡らしているかどうか答えるのに改めて恥ずかしがるのか、と。
「…お姉さま、ここ、どんどん溢れてきてます」
「冴子もでしょ?…は、あ…ん……」
「…はい」
冴子が、態勢を変え手更に身体を下に沈めたような位置に陣取る。横座りのような姿勢になったのだろうか。まるで私のこぼした蜜を下から受け止めるような角度で、花弁の下端までくまなく嘗め回す。
…そしてどうやら、冴子自身も我慢できなくなったのか、自分で自分の下半身を弄り始めたようだった。
「…冴子、何してるの」
「…あ…その」
「自分で触ってるのかしら」
「…」
ごまかすように冴子はまた私の秘部をぺろぺろと嘗め回すようにして口淫を再開させた。その動きはまるで雌犬のようで、私も思わず身体が硬直しそうになる。
「あ、冴子…それ、ずっとして……あぁんっ…」
もし、バター犬というものが実在するのであれば、今されているこの感覚に近いかもしれない、などと奇妙な妄想にとらわれながら、私は大きく果てた。
だがそれと同時に、冴子の身体に溜まったものを一刻も早く吐き出させてやりたい、という気持ちにもとらわれていた。だから実際に達した快感に浸っていたのはほんの一瞬の事だっただろう。
「…あ、はぁ…はぁ」
達した後も、しばらく痙攣する秘部に吸い付いて、ゆるゆると舌を動かしていた冴子がようやく顔を離すと、口の周辺にはべっとりと蜜がついて、目も当てられないぐらい汚れていた。しかし冴子はわざとらしくその蜜で汚れた顔を私に向けてくる。その様子は誇らしげですらあった。
「…お姉さま」
「そこに座りなさい」
私の方は、少なくとも顔に関して言えば、冴子とは違いメイク一つ崩れていない状態だ。そんな状態のまま私は冴子に向かって冷たく言い放った。冴子は撃たれたように、でもいつもそうしているかのような自然な動きで、おずおずと私の目の前の巨大なライティングデスクに腰を引っかけるようにして座った。冴子の脚がわずかに床から浮いて、不安定な態勢になる。
言っている私だって、下半身は蜜でぐちゃぐちゃの状態なのだから、そんな冷淡に冴子を突き放せるような立場でもないような気はするが、ここは仕方ない。思いついて足を組んでみると、私の汚れた場所はたちまち隠れて、何事もなかったかのような姿に変わる。
「……」
「それでいいの?」
冴子が脚をふらふらさせているので、私は詰問する。冴子は少し考えながら、正解を探っているようだった。
「何がしたいのか、言ってみて」
「…」
「大丈夫、誰も来ないから」
「はい」
冴子は、小さな声で「おまんこ触りたいです」と告げてきた。
「誰の?」
冴子の瞳が一瞬潤んだように光る。
「その…私、自分の…です」
「いやらしい子ね」
「…はい」
冴子は下を向いているが、顔にへばりついた蜜を拭おうともしない。もはや自分の顔が蜜で汚れている事すら、忘れてしまっているようだった。
「いいわよ、して見せて」
「…はい」
すかさず冴子の脚が開いてデスクの上に乗る。デスクの上でM字開脚した状態で、冴子はいきなり自身のショーツの中に手を突っ込んで中のものを弄り始めた。
「…あ、あんっ…!」
冴子がいきなりかなり大きな声で喘ぐので私は一瞬びっくりした。この状況に、私以上に冴子が興奮しているのがわかる。
「すぐいっちゃいそうね、冴子」
私はわざとらしく余裕のある微笑を浮かべて見せながら、椅子を動かして傍らにあるパソコンのキーボードを叩いた。
私の視線が反れて、冴子は泣きそうになりながら訴える。
「見てくれるって…」
「して見せてとは言ったけど、見ててあげるとは言ってないわよ?」
「…」
私がわざと意地悪をしている事に、冴子も気付いているはずだ。
それなのに、私ときたら冴子に触れたくて仕方ないのに、我慢しきれる自信がないのもあってわざとこんな事をして、自分でもこれは酷いと思う。
しかしそれもほんの一瞬の事で、見られていないならそれはそれで冴子はどうせ勝手にやるタイプだ。冴子は諦めたのか、もう自分の好きなようにやろうと思ったのか、さきほどと同様に声をあげながら自慰を再開している。
「あ、お姉さま…っ」
私が見ている時にはそんなにやたらと「お姉さま」とは呼んでこない気がするのだが、見ていないとなれば話は別なのか、冴子は「お姉さまぁ」と何度も声に出しながら喘いだ。
「お姉さま、お姉さま…いっちゃう」
「もういくの?困ったわね」
「だって、あ…っ…!」
冴子の指の動きが、ショーツ越しにもわかるぐらいで、直接見えない分かえってそれが卑猥だった。
指の動きによってショーツの内側からクチュッと音が漏れてくる。
「あ、あ…お姉さまぁ…もう…」
「我慢できないのね、そんなにイきたいなら思う存分弄りなさい」
「はい…っ…あ…!」
冴子が達した気配があり、それまでじっくりとではなく横目に冴子の様子を見ている程度にしていた私は、再び椅子を動かして冴子の正面に回る。
達したはずなのに、冴子の指はまだ緩慢に動いていた。それもまたとてつもなく卑猥に見えた。
「何やってるの、冴子」
「…はぁ……ん」
「まだ欲しいのかしら」
「はい…もっと、したいです」
私は、冴子の指などお構いなしに冴子のショーツのクロッチの横から指を突っ込んで、冴子の秘部めがけて差し入れた。
「はんっ…」
そこは私の指をあっさりと受け入れる。
「ねえ…見えてるわよ?冴子」
「やめ、…あっ…や…そこです…お姉さま、そこ…だめ」
ショーツの、足の付け根側を強く引っ張ってそこから無理やり私が手を入れているので、冴子の秘部は正面からでも丸見えだった。これをやるとショーツがだめになるかもしれない、とほんの一瞬思ったけれど、辞める気にもなれない。
いつの間にか冴子の手はショーツの中から抜かれていて、両手は机の天板の上に着いた状態で、腰を私の方に突き出してきている。
冴子は身体全体でおねだりしているかのようでもあり、私はまた毒づきたくなるのをこらえながら、沸き上がるいやらしい欲望に任せて冴子の秘部や、その奥の冴子の感じる部分を徹底的に攻めた。
「あ、また…いっちゃう…お姉さま、お姉さま…」
「またイきそうなの?さっきイったばかりでしょ」
「だってそこ、されたら…あ…もうっ…んん…」
冴子が首を仰け反らせて左右に振って見せる。達する事から逃げたいとでも言いたげに。
「…聞こえるでしょ?冴子のいやらしい音」
「…っ、あ…」
冴子の喘ぎ声が一瞬静かになる。私の言う通りに、自分の股間からこぼれる音に耳を傾けているのだ。
感じながらも私の言葉に従順に従う、冴子のそういう所が猛烈にそそるのだ。だから私は、いや誰でもきっと、冴子に命令したくなる。
わざと音を立てて、冴子の奥深くに挿入した指を動かす。入口付近には私の指の根本が擦れていて、鈍い音を立てている。
冴子は静かになったまま、浅い呼吸を繰り返して快感に集中しているようだった。
「お姉さまの、指が…入ってると思うだけで、もう…」
冴子がそんな事を口走ると同時に、冴子の身体から力が抜けて、私の指先にしっかりとした圧力がかかった。
まるで、指を抜くなと言われているようで、冴子の言葉が伝えてくる満足感とは裏腹に、身体では絶対にこれ以上の快感を与えなければ許さない、と言われているようだ。
冴子はその矛盾に気付いてはいても、それを是正するような真似はしない。そういう娘だ。
「…」
「冴子、すっごい締め付け、ここ」
指を動かそうにも動けない様を知らせると、冴子はどうしたらいいのかわからないという表情になった。
「抜けないんですか」
「…どうかな」
「待ってください」
何とか、私の指が抜けるようにするためになのか冴子が身体をよじる。密着していた部分が少し浮いて、すっと指が抜けた。
私は思わず可笑しくなってしまう。
「…もしかして過去にもあったとか」
「…ありません」
少し怒っているようだったが、どうやら本当らしい。冴子なりに考えて、どうにか指が抜けるように工夫した結果のようだった。
*-*-*-*-*-
「…あ」
目が覚めて、私はさっきまでの光景が夢の中の出来事だったのかとわかり、全てが腑に落ちる感覚になった。
社でどんなに偉くても、あんな単独の役員室なんてなかったはずだし、冴子が着ていた制服も、社の受付のものとも秘書課のものとも違う。
更に考えてみれば、冴子は仕事の時髪は下ろしていないはずなのに、さっきは髪を下ろしていたではないか。
「…」
枕元には、冴子がやけくそ気味にクリスマスプレゼントとして私にくれた雪だるまのぬいぐるみがある。カーテン越しに陽射しがさしていて、もしかしたらもう昼近いのかもしれない。それが喉の渇きと尿意でなんとなくわかる気がした。
…夢でなら、体力の限界もなく無尽蔵に行為を続けられるなあ、などと、自分らしくもない事を考えながら、ミネラルウォーターに口をつけた。
そうすると空腹感を覚えて、自分の体力が戻りつつある事も感じられる。
「夢に冴子が出てきたよ」
冴子にそんなメッセージを送ると、「何か心配です」と、よくわからない返信が来た。
美咲「大丈夫、すごくリアルな夢で冴子は素直でいい子だった」
冴子「もしかして、変な内容の夢ですか」
美咲「変じゃない」
夢の内容までは知らせる事もないだろう。もしかしたら近い将来、夢と同じようなシチュエーションが来ないとも限らないし。
ほんの少し秘部が濡れているような気がしてトイレに行ってみると、案の定という状態だった。でもまたここから自慰をしてしまうと止まらないような気がして、辞める事にする。
それからなんとなく部屋着に着替えて軽く朝食を済ませ、ニュースアプリなどを眺めていると、宅配の荷物が届いた。
何だったろうか、と見慣れない差出人の名前を眺めつつ考える。
宛名は自分になっているのでとりあえず荷物の箱を開いた。
「これ…ね」
空けてなるほど、これは冴子と一緒に買った、アダルトグッズのネットショップからの荷物だった。
中身を改めながら、その時の冴子とのやり取りの記憶を呼び起こす。
冴子はあまりノリノリではなかった気がする。慣れているのかと思いきや、そうでもないらしい事に驚いたものだ。
唯一冴子が選んだと言って良いリモコンローターを取り出してみる。
冴子の身体にフィットするだろうか。音はうるさすぎないだろうか。
冴子は「音が大きいのは無理」と言って、静音設計のものを選んでいるので、これは比較的価格レンジは高い方だと思う。
装着する部分は淡い紫色をしていて、これを装着してからショーツを履いても、それほど目立たないだろう。
さっき見た夢の影響からか、一度自分で試したくもなったが、これは冴子のものだからと思い我慢する。
その他は半ば私が勢いで選んだコスプレ衣装の数々だ。
「数々」、具体的には五着以上ある。こんなに買ったのか、と昨日の自分の事なのに信じられない。
そのうちの一つのパッケージ写真に私はぎょっとした。
…さっき夢で冴子が着ていた制服にそっくりだったから。
「…これなのね」
クリームイエローのボウタイブラウスに黒とグレーのチェック柄のベスト、黒のタイトスカートという、コスプレ衣装の割にけっこう落ち着いたデザインである。強いて言うならスカート丈がけっこう短く、深いサイドスリットが入っている所が、わずかにコスプレ衣装臭い所か。
…きっと冴子には似合うだろう。
自分の記憶の信頼性が疑わしいので、他のコスプレ衣装も改めた。
特に冴子に着て欲しいと思ったのが、神社にいるような巫女さんの衣装、これも間違いなく冴子に似合うと思うが、着せてそれからどうするのか、と真面目に考えると、プレイに役立つ術が見当たらない気がする。
「…あれ?」
冴子のために選んだとは思えないものが一着出てくる。フェイクレザー製のボディスーツだった。
…これはどさくさ紛れに冴子がクリックしたものだろうか。私が選んだ記憶はないが、話の流れで冴子が私に勧めたかもしれない。
これも、いつどう使うのかと冷静に考えると、何だかしょーもない買い物だったような後悔に襲われてしまう。
ひとまず衣装類はたたんでひとまとめにしておき、リモコンローターは箱に戻してしまっておく。
…冴子は今頃どうしているだろうか。実家にでも帰る支度をしているかもしれない。
私はと言えば、帰省らしい帰省はしない。もう何年、いや十年近くそうしていると思う。親戚筋に顔は出すが、早々に退散するようにしている。長居してもろくな事にならないからだ。
「…冴子」
衝動的に、冴子がくれたぬいぐるみを抱きかかえて撫でてみる。
手触りが良いから、というような理由で選んだと言っていたっけ。
それを抱えたまま、私は再び眠る事にした。寝室のカーテンだけを閉め、部屋着は脱いで裸になる。
ぬいぐるみを抱えただけの恰好でベッドに潜り込み、そのまま眠りに落ちた。また、冴子の夢が見られるようにと願いながら。
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