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はじめての失神

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シャワーソープと揃いになっているボディローションのバニラの香りに、はっと思い出した。そういえば美咲さんは「ケーキもある」と言っていなかったか。

「お姉さま、あの、ケーキってさっき」
「え?」
「その、食べる方のケーキです」
「…あー、それね」

美咲さんは丹念に私の身体にローションを伸ばしつつ、「そっちはこういうケーキじゃないのよね」と、よくわからない答えが返って来た。

「…食べたい?」
「いえその、忘れていたので」
「そう、まだお腹いっぱいでしょ?本物のケーキは、冴子が食べたくなった時でいいわよ」
「…わかりました」
「じゃ、気を取り直して私は冴子をいただく事にするからね」
「は、はい」

とっさに返事をしてしまったが、一体どういう事かと考えていると、私の足元に跪いている美咲さんがいきなり私の秘部を舐め始めた。美咲さんの手が「もっと脚を開いて」と促してきたので私は美咲さんが舐めやすいように両足を開いて立ち、美咲さんの両肩に手を置いて身体を支えた。

「……」

達したばかりで一旦身体が落ち着いているのもあり、最初のうちはさほど感覚がなかったけれど、美咲さんのいやらしい舌使いに、次第に私の膝はがくがくと小刻みに震えてきて、姿勢も徐々に前傾するような恰好になっていく。必死で立ち姿勢を維持しつつ美咲さんの肩にしがみついていた。

「お、お姉さまっ…く…」

美咲さんは落ち着いた調子でぴちゃぴちゃと音を立てながらひたすら私の秘部を吸っている。
時々「ん」と軽く吐息を漏らしながら、優しく私の花弁に舌を絡ませて、秘部から漏れ出る蜜をヌルヌルと周囲に広げていきながら、舌先では器用に花弁や萌芽をくすぐるから、私はその不規則な刺激に耐えるのが苦しいぐらいだ。

私たちがいる脱衣所兼洗面所は明るく、見下ろせば美咲さんの唇や舌が私のいやらしい場所に触れて動いているのがよく見える。
さっきベランダで優しく、ベッドルームで激しくキスしてくれた美咲さんのその唇が、今は私の秘部に触れていやらしい音を立てながら中を掻き回し、外を舐めまわしていると思うと、ものすごい興奮がこみ上げてきた。

「っん…あ…あ!……気持ちいぃ、です…すごく」

美咲さんは頷きもせず行為を継続している。私の言葉なんてまるで聞こえていないように。
だからという訳ではないが、私は美咲さんの反応がなければないほど、うるさく喘いで訴えてしまうのだ。

「あ、あ、…っ…すご…っ…」

ほんの一瞬だけ、美咲さんの視線がこちらに向いたような気がしたが、再び目を伏せて私の秘部への愛撫に集中してしまう。
自分の身体の一部に集中してくれているはずなのに、そうされると心だけ置いていかれたような気分になってしまうのは何故なんだろう。

「お姉さま、お姉さまぁ…っ…」

何度も何度も、私はそう呼びかけた。美咲さんはそれに言葉では答えなかったが、口淫を更に激しくさせて応じてくれた。
わざとズズッという音を立てて萌芽を吸い、どんどん溢れてくる蜜によってその水音は低くなっていく。
クチュクチュッと、舌先で内側を掻き回す動きに、身体が硬直した。

「…お姉さま、もう、だめです…立っていられません」

美咲さんはやはり何も言わなかった。代わりに両手で私の太腿を掴んで固定するようにしつつ、更に脚を広げさせながら、口全体を使って私の秘部に吸い付いてくる。

「あ…っ!あ、あ、や……だめぇ…」

私は、もう抑制のきかなくなった声で、ただ快感を訴える。
なんで、美咲さんは私なんかにこんなにしてくれるの?という疑問を抱えながら、それでもひたすら口淫を続けてやめようともしない美咲さんに、心の中では「やめないで」と訴えているのだ。

「お姉さま、イきそう、だめ…いくっ…」

萌芽を、真空状態になるくらいの力で強く吸われた瞬間に私は達してしまった。既に崩れかけていた膝がくじけて、美咲さんの肩口に倒れ込むと、美咲さんは優しく私の身体を支えてくれた。

「…立ってるの、辛かったね?」
「……」

そう言う美咲さんの口元は私のこぼしたいやらしい蜜で濡れ光っている。私はなぜかその瞬間我慢できなくなり、美咲さんが手の甲で口元を拭う前にすかさず唇を重ねた。

立ったままでいるのは楽ではなかったけれども、制限のかかった姿勢で快感に耐える心地よさもまた、私にはこの上ないものだった。
美咲さんが私の秘部にしてくれた動きを再現するように、私は美咲さんの唇に舌を這わせる。美咲さんがどんな快感を私に与えてくれていたか、わかって欲しいと思って。
そしてできれば、美咲さんにも同じようにしたい気持ちを伝えたいのと、同じように自分がされる時の気持ちよさの予感も味わって欲しいと思った。

美咲さんが少し苦しげな吐息を漏らすぐらいまで、ちょっとしつこくキスを続けてから、聞いてみる。

「今日は私が色々されちゃう日なんですか」
「まあ、そうね」

キスで少し表情が変わった美咲さんがそう答える。
一瞬、今自分はどんな顔をしているだろうという思いにかられたけれど、私はあえて洗面所の鏡は見ないようにした。

「冴子、舐めたいの?」

私の思いを感じ取ってくれたのか、美咲さんは私の頬を撫でながら尋ねてきた。

「…はい」
「じゃ少しだけ、させてあげるけど…その後は私が冴子を攻めるからね」
「わかりました」

再びベッドに移動し、私たちは互いの秘部を舐め合い刺激し合った。
今度は私が上になり美咲さんの顔をまたいで四つん這いになり、美咲さんの身体に胸を押し付けながら、さきほどからの口淫で美咲さん自身も少し興奮していたのか、軽く蜜をたたえた花弁に私はしゃぶりついた。

「あぁ…冴子、早く腰を下げて」

美咲さんの喘ぎ声を聞きたくて腰をわざと浮かせていたのだが、目的のそれが聞けたので、私は素直に腰の位置を落として、美咲さんが舐めやすいような所で身体を固定した。

お互いの、くぐもった喘ぎ声と秘部を舐めるぴちゃぴちゃという音が混じり合って、本当に卑猥な音が部屋中に響いていた。
美咲さんは思いのほか興奮していたようで、私が舌先で軽く入口をくちゅくちゅと舐めただけでも身体を震わせている。

私は、さっき美咲さんにしてもらったように、控えめな舌の動きで優しく美咲さんの萌芽を吸ってみたり、入り口からほんの少しだけ舌を挿入させてそこを軽く掻き回す動きを繰り返した。
私の下半身を通じて美咲さんの吐息や声が響いてきて、焦れているのがよくわかる。

溢れてきた蜜を音を立てて吸い取り、今度は思いっきり激しく花弁をしゃぶったり、萌芽を吸ったりした。ほどなく美咲さんは私の秘部に口をつけたまま喘ぎ、達したようだった。

私は、達した後の美咲さんの秘部を静かに舐めて蜜をきれいに吸い取っていく。蜜洞が大きく開いて、それがものすごくいやらしかった。
この穴に、思いっきり「あれ」を突き入れたいという衝動に襲われるが、それと同時に私の蜜洞も、きっと十分それに近いぐらい開いているような気がして、それを美咲さんに見られている事に突然思い至った。
いやらしいのは美咲さんだけじゃない、自分こそそうじゃないか、と。

*-*-*-*-*-

「あ!…っあ…は、っ……」

気が付くと、私は美咲さんに「あれ」でめちゃくちゃに突かれまくっていた。はじめは向かい合って唇を重ねるようにしながら奥までじっくりと、そして身体を起こして更に深く埋めるように「あれ」を沈められてから、今度は四つん這いにさせられて、後ろから激しく中を犯されている。

「っ、う……激しい、です…お姉さま」
「…激しいの?でも、もっとでしょ?」
「は、はい…あ!あ、…い…」

一旦ギリギリの所まで浅く引き抜かれた「あれ」が、再び最奥までずどんと打ち込まれる。お互いの身体を熟知している関係でないとできない動きだ。

それを数回繰り返した後、再度ギリギリ浅い所まで「あれ」を引き抜いて、わざと止められてしまった。

「冴子、まだ入れて欲しい?」
「はい…入れて欲しいです」
「じゃもっとお尻を突き出して」
「はい、…こうですか?」

ベッドに両肘をついて、私は背中を反らしお尻を高く突き出した。枕に顔が埋もれてしまいそうになり、顔を横に向ける。

「ほんと、いやらしいのね、冴子は」
「……」

そういう意地悪な言葉を、美咲さんはわざと言って私を煽っているのだ、とわかる。

「だって、お姉さまの…気持ちよくて、欲しくなっちゃうんです」
「…」
「だからお願いします」

わずかにお尻を振って美咲さんにおねだりをすると、美咲さんは「そんな事までして」とほんの少しだけ呆れたような口調で呟いてから、すぐに「あれ」を深く突き入れてくれた。さっきまでとはまた角度が変わって、より自分のお腹側の内壁がえぐられるように刺激され、私は衝撃を受けたように叫んでしまう。あまりに気持ち良かったから。

「あっ!…あ!…だ…めぇ…すご……」

そのまま、ズボズボと「あれ」が前後に出し入れされるたびに、私の内壁の、その強烈な快感をもたらす場所が何度も何度も擦りあげられていき、私は意識が飛びそうな感覚に襲われた。
同時に、うつ伏せになった態勢のためシーツに両方の乳首が擦れて、それも快感を倍増させる刺激となる。

後ろから激しく突かれて身体が前後にゆすられ、シーツに擦れる乳首の刺激も変則的で、私はたったそれだけの刺激にさえ虜になってしまいそうだった。

「あんっ、あ…あい…お姉さまぁ」

美咲さんに、私のこの気持ちよさが伝わっているだろうか。美咲さんのしてくれる事で私がどれだけ感じているのか、わかって欲しくて、私は少しでもその快感が伝わるようにと、願うようなつもりで声をあげていたが、実際にはそんな考え事をする余裕もほとんどなくなり、私はひたすら撃ち込まれる「あれ」の動きに合わせてただ身体を前後に震わせ、自分でもわからないような声を出しているだけだったのではないかと思う。

気が付くと、私は四つん這いではなく横向きになってベッドに横たわっていた。そばに美咲さんがいる。

「…冴子失神しちゃってたよ?」
「…え、そんなはずは」
「ほんの少しだけど、声も出さなくなっちゃったみたいになったから」
「え…全然、わかりません」

意識が途切れた感覚なんて自分には全然ない。
気を失う時は、徐々に世界が真っ白になって、あー自分は気絶するんだと自覚しながらするものだと思っていたのに、実際は違っていた。

身体としては、満たされた感覚はある。でも、記憶は途切れていないのだ。

「私は気絶したつもりはないです」
「あら、そうなんだ」
「でも、すごく満たされた気分なんです」
「それは良かったわね」
「……」

セックスで完全に満たされて、帰ってこられないぐらいのオーガズムを体感するという事も、私の想像とは全然違った。激しく身体を震わせて声をあげてするものだと思っていたのに、見た目にはきっと大した変化もなしに勝手にこてんと転がったぐらいに見えていたのかもしれない。

「変な感じなんです、色々と」
「そう?どこもおかしくはないけどね」
「……」

急に、強烈な睡魔に襲われて、私は返事もできずにそのまま眠ってしまった。
私にとって、これまでには経験した事のない、肉体的な充足感と、満足感に包まれて、とても幸せなクリスマス・イヴとなった。

*-*-*-*-*-

「…こういうのじゃないって、そういう事だったんですね」

翌朝早めに起きて、朝からケーキを食べたくなり、美咲さんにケーキを切ってもらった。クリスマスの定番と言えば定番だが、最近あまり主流とは言えないかもしれない、丸太をイメージした「のえる」が登場したのだ。

おそらくは、甘いバニラの香りのクリームが乗ったケーキではない、という意味合いで、美咲さんはあんな事を言ったのだろう。

「これは冴子にあげる」

ケーキの上に飾られていた、チョコレート製のとんがり屋根の家が、私の取り皿の端に置かれる。

「…朝からケーキにチョコレートってのもすごいわね」

美咲さんが笑いながらそう言うけれど、私は案外大丈夫だったりする。

「…でも、甘いものは夜より朝に食べた方が、太りにくいとも言われてるんですよ」
「へー、そうなんだ」

美咲さんは、言いながら温かい紅茶を入れてくれる。私は、砂糖もミルクもいらない事を伝えて、ケーキに手をつけた。

いつものように仕事に向かう朝に、こんなものを食べていられる贅沢に感謝したい気持ちになった。明るい部屋でケーキを食べるのが、なんだか罪悪感でもあり、贅沢でもあり、とてもじゃないけど働く気になれなかったりもした。

「おいしいです」
「そう、なら良かった」
「お姉さまは、食べないんですか」
「うーん、私は後にしようかな」

そう言いつつも、心の中では私だけが一人ケーキを食べているのに恐縮してるんだろうな、と気付いてはいるようだった。

「一人分はいらないから、冴子が食べさせて」
「…食べさせて、って…」
「一口だけで十分だから」

私はほんの少し考えてから、美咲さんが何を求めているのか察して、フォークに一口分のケーキを刺して美咲さんの口元に運ぶ。

「こういう、事ですよね」
「うん」

美咲さんが、ぱくっとそのフォークにかぶりついてケーキを食べる。
食べ物が、人の口の中に吸い込まれていくのがやけにリアルに感じられた。

「なるほど、まあ、ケーキだね」
「おいしくないんですか」
「うーん、普通?」
「……」

一晩たっても、まだ毒っ気が抜けない美咲さんの様子に、私はだんだん心配になってきた。

「昨日から気になっていたんですが、お仕事で何かあったんですか?…」
「…ない」
「じゃあ、どうして、なんとなくいつもと違う感じなんですか」

美咲さんは答えてはくれなかった。話してわかる内容ではないと思われてしまったのだろうか。それともせっかくの朝一番にわざわざ言う事でもないと判断したのだろうか。きっと、「ない」というのは嘘だろう、というのはわかる。

「…お姉さまが辛いのは、私も辛いです」
「冴子?」
「…あまりうまく言えませんが、その」
「うん」
「昨日の私みたいに、何もかも忘れてしまうぐらいに、お姉さまを気持ちよくさせたいです」
「…真面目なようでとんでもない事言うのよね、冴子は」
「はい?……」

でも、多分私にできる事なんてそれぐらいしかない。
話をする相手として役不足という事なら、いやらしい事にふける相手として使ってもらうのでも全然構わない。私はそういう気持ちで言ったつもりだけど、美咲さんにその心意まで伝わってはいない気がした。

「あの、私がお姉さまの役に立つ事は、それぐらいしかないのかなと思いまして」
「そんな事、ないに決まってるでしょ」
「でも」
「…まあ冴子にそう思われても仕方ないぐらいの事はしてるけど、それだけしかない、なんて事はないんだからね」
「はい……」
「まあ、余計な事は考えずに、召し上がれ」
「はい」

ケーキと、飾りのお菓子も食べ終えて私は身支度をした。
荷物の中に入れている秘書検定のテキストが目に入る。次の1級の試験は6月だ。
これに合格できたなら、受付担当の課長との定期面談でその事を伝えようと思っている。
社の異動の仕組みは透明性が低いものの、アピールするだけしておく分には問題ないだろう。

仮に秘書課への異動が叶ったとして、私が美咲さんの担当になれるかはわからない。
でも、当然新入りがいきなり役員の専属秘書に抜擢される事は確率的にも低いはずで、そうなればチームでどこかの部長職の担当を割り当てられる可能性はあると思う。

急に袴田氏の事を思い出して気が滅入るけれど、未来の事はわからない、と気を取り直して私は美咲さんより早く部屋を後にした。
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