お姉様と呼んでいいですか

那須野 紺

文字の大きさ
上 下
27 / 53

貴重な肉食モード

しおりを挟む
美咲さんは大きな深呼吸を一度だけしてから電話の通話ボタンをタップした。
私は、まだ美咲さんを背後から抱きすくめたような態勢だったので、通話相手に私の存在が気付かれないように動きを止める。スマホから漏れる声がもろに聞こえてきた。

『部長、申し訳ありません、いつ頃戻られるかと思って』

おそらくは企画部の部下であろう男性の声が聞こえてくる。
美咲さんは視線だけで「大丈夫」と私を安心させるように見つめてから、会話を始めた。内容を聞かれる事は気にしていないらしい。

「ごめんなさい、もう少ししたら戻るから」

美咲さんはそれだけ言って通話を終えてしまう。相手も心得ているようで、あまり騒ぐでもなく、短く「わかりました」とだけ答えていた。
きっと、1分よりもっと短い単位、それこそ10秒、5秒という時間単位で仕事をしている人たちなのだ、と私は理解する。愚痴や文句を言う時間、それすら惜しいと手を動かす人たち、それが美咲さんの率いているチームなのだろう。

「…コンビニに行ってくるって言って出たんだけど、それにしては長かったのかな」

こういう電話がかかって来る事は滅多にない、と言いながら美咲さんは溜め息をつく。「私がトイレにでも行ってたら電話なんか取らないのに、何考えてるんだか」とも付け加える。

私はさっと時間を確認した。美咲さんがここに着いてから20分以上が経過していると気付く。
「…ごめんなさい」
自分がどんな表情でその言葉を口にしたか、正直わからなかった。大切な人の大切な仕事の時間を奪ってしまった、とその瞬間は罪悪感に支配されていたと思う。

「大丈夫、すぐに片付けるから」
美咲さんはそう言いながら私の手に部屋の鍵を握らせてきた。

「これ…」
「部屋で待ってて」
「…」
「私だって冴子に触りたい」

美咲さんはそう言いながらも私から身体を離して、改めて身だしなみを整えた。
「替えのパンツ持ってきてないのに」
言いながら美咲さんはスカートの中に手を突っ込んでショーツだけを脱いだ。私は反射的にそのショーツを受け取る。他意はない。
ただ美咲さんが自分の蜜で汚したショーツをしまう場所がないと思ったから反射的に手を出してしまっただけなのだが、美咲さんは当たり前のように私にそれを託した。

「一度トイレには行くけど」
「…あの、残りはノーパンでお仕事されるんですか」
「そうなるわね」
「す、すみません」
「…ホント、冴子をノーパンで働かせるつもりが、先に私がこんな事になっちゃった」

もう一度美咲さんはほっと深呼吸をする。そうすると、かなり仕事モードの美咲さんに戻った感じがした。

「…お姉さま」
「ん?」

私は改めて、渡された蜜まみれのショーツを凝視する。もう片方の手には美咲さんの部屋の鍵を握っているのだが、美咲さんが脱いだショーツを見ているだけでも妙に興奮してしまうのだ。

「どうかした?」
「これ…履いてオナニーしてもいいですか」
「早く行きなさいっ」

美咲さんにぴしゃりと叱られ非常階段から追い出されるように外へ出た。最低限渡されたショーツが人目に晒されないよう急いでバッグにしまいながら、私は小走りに会社から離れて美咲さんの部屋へと向かった。

*-*-*-*-*-

「あ、あ……冴子…そんなにしちゃ、だめ…」

美咲さんの帰りを待って、私は美咲さんが嫌と言うほどしつこく身体を求めた。道具は一切使わず、キッチンでもバスルームでもリビングでも構わず美咲さんの身体を暴いて敏感な部分を重点的に舐めて触った。

「教えてください、お姉さま…どうすればもっと感じますか?」

溢れ出た蜜でぬるついた指を使い、美咲さんの萌芽をくるくると撫でまわしながら尋ねる。
言葉はいらない。美咲さんの反応、喘ぎ声が何もかも教えてくれる。ただひたすらにそれを探求していく過程が、美咲さんにとってはしつこく終わらない快楽の沼に堕ちるような感覚として受け止められているのかもしれない。

「冴子、だめ、いっちゃうっ…、あんっ…!」

知っているつもりだったけれど、刺激を重ねていくにつれて美咲さんの感じ方、感じるポイントも微妙に変わっていくのがわかる。こうなると、萌芽を甘噛みしなくても、美咲さんは簡単に達して止まらなくなる事も、今日まで知らなかった。

一糸まとわぬ姿となり二人でベッドの上で秘部を舐め合いながら、互いに与え合う快感に反応して声をあげていく。
最初は美咲さんが上に位置していたが、「何もできなくなっちゃう」と上半身が崩れてきて腰も浮かせてしまうので、ポジションを変え手私が上になり徹底的に美咲さんの秘部を攻めた。美咲さんの身体は時々びくっと痙攣したり、ぐったりと脱力したような感じにもなった。私が触りすぎたので入口のあたりが過敏になってしまったのかもしれない。

「冴子、あなたも明日仕事でしょ?」
「…明日は休みます」

深く考えずにそんな事を言う自分がいた。美咲さんを寝かせるつもりはなかったからだ。愛し合う交わりではなく、暴きながら奉仕する、今日はそういう事になっている。

「お姉さまはもう、嫌になっちゃいました?…しつこいから」
「そんな事、ない…あぁ…っ」
「ほら、ここも」
「やんっ、だめっ、……いく…冴子…いっちゃうの…」
「お姉さま、ほんとに素敵です、その顔…声も」
「あぁ…は…あぅ…!」

他の誰よりも、一番多く美咲さんをイかせた相手になりたい。
美咲さんの感じる場所を誰よりも知っていたい。
美咲さんが、私とでないとたどり着けない快感を味わって欲しい。

「お姉さま」

気が付くと、達してぐったりとした美咲さんの股間を挟むようにしながら私は自分の秘部を美咲さんの秘部に擦りつけていた。

「お姉さま、私も…イきたいです」
「冴子」

腰を振って美咲さんの柔らかく敏感な花弁に、自分のそれを絡ませる。美咲さんは私の腰に両手を添えてその動きを助けてくれた。同時に美咲さん自身も軽く身体を揺らして私のリズムに合わせて秘部を擦り合わせてくれる。

「あ…あ……気持ちいいっ…」

私自身の中からも蜜がどんどん溢れてきて、響く水音がくちゃくちゃという音からパチュッ、パチュッという音に変化していく。

「冴子、凄くいやらしいわよ」
「あぁ…そんな…っ…」

さんざん美咲さんの身体を愛撫しているだけで出来上がってしまったのか、私はあっけなく達してしまった。だがそのまま休む気にはなれなくて、美咲さんを洗面所まで連れて行き、先ほどの非常階段での行為をなぞるような恰好で、その続き宜しく今度は「あれ」を装着して美咲さんを後ろから思い切り突きまくった。洗面台に手を着いて喘ぐ美咲さんの表情が鏡越しに確認できる。

「あ、あ…すごいっ……っく…」

「あれ」を奥まで突き入れながら美咲さんに密着する。わざと美咲さんの背中に自分の胸を押し当てながら、深い所で腰を小刻みに動かした。それに伴い美咲さんの身体も小刻みに揺れる。

「冴子…冴子…っいい…あ…」

密着させていた身体を起こして角度を変えながら、同じリズムで美咲さんの奥を小刻みに突く。そうすると美咲さんの長い髪がゆらゆらと揺れて、それを後ろから見ているとなんだか妙に興奮してしまった。もっと揺らしたくなり少し腰の動きを大きくすると、美咲さんの髪が更に大きく揺れて、私の動きが視覚的に確認できるような気がした。

鏡を覗くと、快感に夢中になっている美咲さんの表情がよく見える。同時に美咲さんをどんな顔で攻めているのか、自分の表情も目に入ってしまった。

私はこんなにいやらしい表情で美咲さんと交わっているのか、と驚愕する。

単に興奮しているのとは違う、交わる事によって消耗するどころか、むしろ生き生きとしていくような、艶めかしいのにどこか明るい顔をしているのだ。その時に、自分はセックスによって人の生気を吸い取って生きているのではないか、という錯覚に陥り慄然とさえした。

美咲さんはこんな顔をしている私とずっと交わっているのか、そう思うと妙な気持ちになった。
過去に「ギブアップ宣言」して私の前から去っていった男性の気持ちがわかった気がしたからだ。
こんな顔で美咲さんを攻めまくる私を、美咲さんは手放したくないと言う。つまり美咲さんだって相当な好き者、という事なのだ。

「お姉さま、鏡を見て」
「っ……」

目を閉じて快感に浸る美咲さんにわざとそんな言葉をぶつける。感じまくる自分自身の顔も見て欲しかったし、嬉々として美咲さんを攻める私の顔も見て欲しかった。

美咲さんは「わかっている」というような表情を見せながらも私の言葉に従い鏡越しに私と目を合わせてくれた。
一瞬緩めた腰の動きを、そこで再度激しくする。

「だめ、そんな…しちゃ…」
「お姉さま」

私たちは鏡越しに目を合わせたままで行為を続ける。そうするとまた別の部分で興奮が沸き起こり、今度は合わせた目を離せなくなった。

「冴子、いく、いくっ……」
「お姉さま」

私は美咲さんの腰をしっかりと掴んで自分の腰を激しく打ち付けた。美咲さんから溢れた蜜は太腿をつたい、私の下腹部も汚している。私は私で間接的な興奮でも十分に秘部が熱くなり、美咲さんほどではないものの蜜を垂らしていた。正直、自分があまり濡れてしまうと「あれ」がずれそうになるのでそれは避けたいのだが、難しい話である。

「っ…冴子、いっちゃうよ、また…い……あんっ…!」

美咲さんの身体が崩れ落ちる。私はそれを支えながらバスルームへと移動した。くまなく美咲さんの身体をお湯で洗い流していく。それが終わるとまた美咲さんの身体にしゃぶりついた。

「ちょっと待って、明日の予定がどうだったか、確認するから」

美咲さんはどうにかそれだけ言って、二人でバスルームを出る。タオルを羽織っただけの姿で、美咲さんはスマホでグループウェアにアクセスしてスケジュールを確認した。

私は考える。
今日遅くまで仕事だったという事は、もしかすると明日の午前中に重要な発表や提出物があって、それの準備だったのではないか、と。そうなると明日は通常通りの出勤がマストになる。
あるいは今日の仕事は今日中のもので、明日のためのものとは違う場合、朝一で重要な何かというのは入っていない事も考えられた。社の部長会議などは概ね週の頭が多いから、定例のミーティング関係が入っている可能性は低い。
どちらだろうか、と私は期待も不安も入り混じった気持ちで美咲さんを待った。

「……」
「…午前休なら取れそうだから、朝までさせてあげる」
「ほんとですか、半々でダメかもと思ってたんですが」
「ほんと、運が良かったわ」
「?」
「冴子の本気な肉食モードは、底なしで怖いわね」
「すみません…」
「でも、遠慮しーな冴子がこれだけガツガツしてるんだから、付き合わないなんて損だもの」
「…あの、本当に午前休取れるんですよね」

なんだか無理をさせているような気がして一瞬焦ってしまう。確かに今日は美咲さんを寝かせたくない気持ちではあるのだが。

「ほら」

美咲さんがスマホの画面をこちらに見せてきた。明日のスケジュールには、午前中に一本部内のミーティングが入っているようだった。何かのプロジェクトの進捗確認の会議のようである。

「これは…?」

詳細の確認も許された感じがして、会議のメンバーも確認してみると、美咲さんとあと3名ほどの名前があった。

「私は聞いてるだけのメンバーだから、毎回必ずいなくてもいい類のものよ、小さな案件で課長補佐の子がリーダーを務めているから、念の為私が同席する事になってるけど、別件でもっと重要な会議が入れば外れる事もよくあるし」
「そうなんですか」

秘書検定勉強中の私は、ついつい美咲さんのスケジュール表に興味がわいてしまい、同プロジェクトの進捗会議が隔週で行われている事も、自然とチェックしてしまっていた。

「せっかくの肉食モードがトーンダウンしちゃったかしら」

美咲さんが笑いながら私に話しかける。けれど、私が興味津々に見ているスマホを取り上げる気はないらしい。

「こんなにいろんな予定がぎっしり入ってるんですね」
「勝手に入ってるものもあるし、出なくていいのに一応入れられてるものも相当あるから」
「…」

美咲さんは「はー」と深く息を吐いた。「ちょっとは休憩させてもらえるのね」などと言いながらミネラルウォーターをあおっている。
私ははっとして美咲さんにスマホを返した。
「その、リアルな、それも多忙な部長職の方のスケジュールを見る事は滅多にないので」
「そんな事言って、そのうちの一つの予定をすっぽかすのをそそのかしたのは冴子でしょ」
「すみません…でも」
「そう、冴子の顔には詫びる気持ちなんてこれっぽっちも現れてないわよ、見たでしょ」
「…はい」
「もういいの?」

美咲さんは私が差し出すスマホの事を言っているようだった。一瞬気をとられてしまったものの、予定を一つ飛ばしてまで時間をもらったのだ。無駄にするわけにはいかない。
「大丈夫です」
「じゃ、ちょっとは私も元気になったし、今度は冴子を攻めるからね」
「はい」

そして夜を徹して美咲さんが満足するまで私は弄ばれ、それが途切れると私は美咲さんの感じる場所と触り方の探求を繰り返して朝を迎えた。

「クリスマスプレゼントはどうしたらいいですか」
「まだそんな事考えてるの?」
「…だって、何もなしというわけにはいかないです」

少しの仮眠の後、もう少しで支度をしなければという時間の所で私は美咲さんに尋ねていた。
カーテン越しに日中の明るさがはっきりとわかる部屋の中で、ベッドに潜り込んで身体を密着させながら会話をするのは、とても贅沢な時間に思える。

「めちゃくちゃきれいにめかし込んだ冴子を見られればそれぐらいで十分なんだけど」
「…それが良いという事であればそれもしますけど」
「うん、だからあまりこだわる事ないんだから」
「はい…」

美咲さんは午前休だが私は思い切って年休を取る事にした。仮病を使ったので「珍しいね」と電話に出た友紀に言われ罪悪感もあったけれど、今日だけは休ませてもらう事にする。

「鍵は置いて行くから冴子はもう少し寝てなさい」

美咲さんは身支度をほとんど済ませているが、私は半ば裸でベッドに横たわったままだった。

「はい、ありがとうございます」
「…その恰好で敬語もすごい違和感があるわね」

私が謝るより先に美咲さんはくるりと向き直って支度に戻ってしまった。

「それにしても、さっきのやつ」

背中を向けたまま、美咲さんが話しかけてくる。私は上半身だけ起き上がって美咲さんを見た。

「冴子は皆勤賞だったのね、これまで」
「…そうですよ」

生真面目な事を揶揄された気がする。

「たかだか休みの連絡一つであんなに罪悪感丸出しにしなくても、大丈夫なのに」
「…」

私の休みの申し出の電話があまりにたどたどしかったのか、その様子を思い出してのコメントのようだ。

「ばかにしてるわけじゃなくて、冴子が真面目な娘で良かったなって話」

なんだかそれも冗談のようで疑わしい。

「だからこそ、私が急遽半休を取るのに対してあれだけすまなさそうにしてたわけでしょ」
「…はい」
「さんざん時間外で働いても残業代はつかないし、私はわりと休める時には休む派だから、そんなに気に病む事はないわ」
「そうですか」
「うん」

美咲さんは「はい」とわざわざベッドサイドに私の分の軽食も用意してくれた。クロワッサンとコーンスープ、それにハムエッグとピクルスの乗った皿をトレイに載せてサイドテーブルに置き、そのまま「じゃあね」と行ってしまった。変にそこにいると私が恐縮するのを見越しているかのようだった。
しおりを挟む
「お姉様に夢中なはずなのにその他の誘惑が多すぎます」

本作の続編です。
メールでのご感想はこちらまでどうぞ。
感想 5

あなたにおすすめの小説

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...