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近くて遠い顔(冴子→美咲SIDE)

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美咲さんの部屋へ戻って、また二人で一緒に眠って迎えた明け方の事。

「……ん?」

妙な感覚のある場所を、ぼんやりと見やって驚いた。
開かれた私の両膝の間で、美咲さんが私の股間にしゃぶり付いているのだ。

…いつから?それに、どうして?

穏やかな口淫に、身体の力は抜けていくし、気だるい眠気の中でそれはとてつもない恍惚感を運んでくる。
身体はただ弛緩していくばかりだ。

…美咲さんの隣でちゃんと眠るまでに、私はかなりの時間を要していた。
正直、なかなか寝付けなかったのだ。
どんな顔で会えばいいのか、考えてもよくわからないし、そもそも美咲さんは出て行けとも帰ってくるなとも言っていない。
私が勝手にしばらく留守にしただけの事なのだ。

だから、何でもないような調子でこの部屋に戻って来た。
それで少し美咲さんと話をして、普通に寝る事にしたのだけど。

再会してから美咲さんの様子は確かにおかしかったけど、何がどうとは断定できない。
単に落ち着きがないと言うか、余裕がないと言うか、何か他の事を考えているかのような感じで、私はその違和感についてとてもじゃないけど言及する気にはなれなかった。

だって、美咲さんは確実に、この期間に他の人間と交わっている。
その事だけは私にははっきりと感じ取れた。
これこそ、何がどうという訳でもないし、明確にその痕跡を認めた訳でもない。
ただそういう匂いがした、それだけの事だけど、私にはわかったのだ。

本来美咲さんが積極的に「そういう」事をするような人柄ではない気がして、思い上がりかもしれないが私が理由でそうさせてしまったかもしれないと思ったから、その事にも触れなかった。
でも考え事らしきものとその件はおそらく別である。

問題は、美咲さんにとってその、誰か知らない人との行為はそこそこ良かったに違いないという事である。
だからこそ、あ…身体はどこか満たされているなあ、と嗅ぎ取る事ができた。

私の心の中は一瞬だけざわっとしたけど、それ以上の事は何も思わなかった。
そんな事は、あって当然の事だからだ。私のしている事のほうがよほどたちが悪い。

満たされていると嗅ぎ取っていた、その身体を使って美咲さんは明け方から私に口淫を施している。
しかも淡々と。

私が覚醒した事をほんの一瞬視線を上げるだけで確かめた素振りを見せた後も、美咲さんはそれまでと変わらない調子で、猫がミルクでも舐めるかのようにその行為は継続された。

「…はぁ……」

脱力の吐息が漏れる。
わずかに身体をよじるが、かえって美咲さんの顔に自分の秘部を押し付ける結果になった気がした。
それでも、美咲さんは黙って同じようにその場所をペチャペチャと舐め続ける。

「起きた?」とか何とか、言葉をかけてもらう方が気楽なのに、どうやらそれはなさそうだ。
この、緩やかな刺激のままではそのうちかえって焦れておかしくなるかもしれないという不安さえ感じる。

そんな感慨にとらわれていると、ふいに美咲さんの舌先が私の膨らんだ萌芽の裏側をとらえた。

「……あっ」

明確に、それっぽい声で喘いでしまった。
それに呼応するように美咲さんの両手がぐっと私の膝を押さえつけてくる。
屈むような恰好に脚を折り曲げられて、それまでよりも秘部が上を向いて美咲さんの前に晒された。
それに合わせて態勢を変える時だけ、美咲さんはふぅっと息を漏らした。

…何で、何も言ってくれないんだろう。
いや、別にこの行為に言葉は必要ないし、許可だっていちいち取る必要もないけれど。

ほどなくして、美咲さんは本気モードの口淫を開始する。
私を、絶頂まで導くための行為が始まったのだとすぐにわかった。

「あ、あの……あ、んっ」

多分、他の誰のものよりも滑らかな感触の、美咲さんの唇や舌が私の敏感な場所のあちこちを、不規則に刺激してくる。
身体が溶けるんじゃないかと思うぐらい熱くなるし、その場所には特に血が集まっていくように思えた。

美咲さんの舌は妙に力強く私の蜜穴の奥をこじってくる。
それが執拗で、私は堪らなくなった。

「だ、め…それ…」

それを聞いたからなのかどうかわからないが、美咲さんはさっとその動きを止めて今度は萌芽をくるくると嘗め回してくる。

「あぁぁっ、ん…」

快感のゲージが一段階上がって、私はその場所に一歩近づいていく。
私の反応で、美咲さんにもそれがわかったはずだ。

身体は正直で秘部にはどんどん蜜が溢れていくのに、美咲さんはそれもくまなく吸い取るように舐め尽くす。
すすり音がどんどん下品ではしたない音に変わるので、私はますます大胆に声を上げたくなった。

「はぁん、あ…気持ちいいっ」

もう、その先の行為をねだるかのように甘く喘ぎながら、私は美咲さんを見た。
美咲さんはやっと口を離して、ぬめった口元をこちらに向けながらようやく言葉を発する。

「…冴子」

何を、されるんだろうか。
迷いは一瞬で消える。
なぜなら美咲さんは既に「あれ」を装着しているのだとわかったから。

「時間がないの」

次にそう言われて、今日が平日なのだとようやく思い出した。
時計を見ようと思ったが、それより先に美咲さんが偽竿をどかんと挿入してきたので、一瞬意識が飛んでそれができなくなる。

「あっ…っあ…くぅ…」

あわや軽く達したかもしれないと思っていると、美咲さんはこう言った。

「何、オナニーもしてなかったの?」

貫く瞬間の隘路の締め付けにそれを直観したのだろう。
私は小刻みに頷くが、まともに美咲さんの顔を見られない。
貫かれたショックで、思うように口が利けないでいた。

「…でも、ごめんね」

美咲さんはそのまま大きなストロークで偽竿を引いて、また勢い良く貫いてくる。

「…っあ…あ!」

衝撃が大きくて私は泣きそうな声を上げてしまった。
でも、ものすごく気持ち良い。

「…そうそう、そうやって感じてる所、いっぱい見せてね」

美咲さんの声は穏やかだが、やっている行為は荒々しい。
ガツン、ガツンと数回奥まで穿たれてから、今度は奥深くまで突っ込んだ偽竿を小刻みに前後させてくる。
…だめだ、もう達してしまうと観念すると、それはすぐにやって来た。

「あ、あ…っ…っちゃうっ」
「うん、イって見せて」

…そういう言葉は言うのかよと思いながら、私は美咲さんの前であっさりと、だが大きく達した。
自分の秘部が、まるで偽竿を握るかのように強く締め付けているのがわかる。

美咲さんはちょっと笑って、「これ動かせないんだけど」と腰を前後に軽く振るが、偽竿は中でとらえられてびくともしなかった。

どうせ、わざとやっているに違いない。
軽く欲望を満たされる事で、私の貪欲、いや強欲の扉は開く。
わずかに与えられた餌をたいらげてから、もっとよこせとせがむのだ。

「冴子はこうでなくっちゃね」

その点をあまり褒めないで欲しい。
自分自身でそれを恥じて、その上で諦めて認めている事なのだから。

「上になって」

美咲さんが私の身体を抱えて後ろに倒れるように寝転がる。
入れ替わりに私が美咲さんの上に乗っかる状態になった。

*-*-*-*-*-

冴子は反省の気持ちを自分なりに、禁欲によって昇華しようとしたのだろうか。
ばかばかしいが、なんて可愛い娘なんだろうと思った。

冴子が戻らなかった間、私は仕事中も冴子をランチに誘わなかった。
多忙ならばあり得る事で、周囲も違和感を持つ事はない。

だから、まともに冴子と顔を合わせたのは本当に数日ぶりだったのだ。
冴子はまるで、家族旅行か出張から帰ってきたかのように、何事もなかったかのような様子でこの部屋に戻って来た。

ただ、私の冴子に対する見方が変わったのか何なのか、その瞬間に思った事は「冴子はこんなに綺麗な娘だったろうか」という事だった。

その事は本人にも少し伝えた。言われてもどう返していいかわからなかったろうけど、冴子は複雑な表情で喜んでいた。
中身を知らない人間からしか、綺麗だと言われなかったから、と。

当初はそうだとしても、深い仲になると自分をそうは形容しなくなる相手としか関わってこなかったのだ。
それを見て私は、冴子の中に厳然と横たわる、いわば根底にあって絶対に変えられない感情の正体が「諦め」なのだと気づいた。

私にとって冴子は、わかりやすくて真面目で、貪欲さに対して自分自身素直でいようとする、そういう娘だという認識でしかなかった。
勿論容姿が優れているのは一目瞭然だが、たった数日距離を置いてみて、それだけで冴子の事がこんなにもわからなくなるのか、と顔を見てから思った。

それぐらい、冴子の表情からは何も読み取る事ができなくなっていた。
だからその原因なり理由を思考するのに集中するあまり、冴子が扉の鍵をかけたのを見逃してしまったり、普段とだいぶ違うおかしな様子を晒してしまった。

珍しく思考がまとまらなくて、私は先に寝ると冴子に伝えたけれど、やたらと冴子に心配された。
きっと、自分の所為かもしれないと思ったのだろう。

だから、「冴子がこんな綺麗な娘だったのかって思っちゃったから」と、本人に伝えたのだ。

思考の乱れは混乱となり、それは膨らんでいけばどこかへぶつけたくなる。
だから私は冴子に何か手を出せば、見えるものがあるのだろうかと考えた。
私が挙動不審だったから、二人してギクシャクした空気のままとにかく眠る事になったけど、冴子は戻って来たんだしもう別にいいじゃないかと思えなかったのは、きっと私がよそで遊んでしまったからかもしれないなどと、冴子の目の前に居ながら考えない方がいいような事もほんの少し考えたりした。

それで余計複雑になってしまったのかもしれない。

冴子は、行動こそ脈絡はないが欲望に忠実という点では一貫してわかりやすい。
自分はどうだ。行動のみならず思考さえも脈絡がない。
冴子は絶対に、どうしてそうしたのかなんて聞いて来ないに決まっているけど、それより先にもう一人の自分が聞いてきてしまうのだ。

「どうしてと言われても、自分でも正直よくわからないんだよね」

答えとしてはそういう事なんだけど、自分で説明できない内容をわかれと言ってわかる他人など居るはずがない。
だから冴子にわかれとは言わない。
そもそもその必要さえないんだし。

やけになってふて寝するように床に就いたら案外あっさり眠れてしまって、その所為で早く目が覚めた。
冴子はなかなか眠れなかったようだったから、ようやく今睡眠が深くなった頃かもしれないと思う。

まあ帰って来たという事は、そういう事で良いんだろうと寝起きの頭はシンプルに思考した。
つまりそれは、いつでも冴子を好きに抱いていいという事だ。

できればすぐには起こしたくないから、私は静かに冴子の手を握ってみたりして、それから徐に冴子の脚を開かせ口淫にふけった。
その味さえも、こうだったっけ、なんて思えてくるから感覚の記憶など怪しいものだと思う。

自分はダメだな、と思いながら改めて冴子の蜜の味を記憶するように舐めていると、あっという間に時間は過ぎてしまった。
さすがに冴子も覚醒して、緩やかに与えられる心地良さに身を任せるように、少しずつ熱い吐息を漏らし始める。

どうせめちゃくちゃに抱くのだと思ったから、適当な所で冴子を一番犯している実感のわく、「あれ」を使う事に決めていた。
同じような形の道具なら冴子だって持っているだろうし、この数日間に使ったかもしれない。

でも、自分の手の力だけで挿入する感覚と、他者一人分の重力を伴って撃ち込まれるそれは、まったく別種の刺激をもたらすのだ。
つまり、セックスとオナニーで得る快楽は別種のものという事になる。

そんな事は、経験を重ねていればしごく当然の事であって、その時々でそれぞれに、欲しい瞬間はあるものだ。
正直バイブオナニーで得る快感は正に、人ではない人工物のもたらす特殊な、終わらないような永続的な刺激によりもたらされる。
それと、これ…は、種類が違う。

冴子にいちいち断りを入れるつもりなど皆無だった。
どうせ大丈夫に決まっているからだ。
でも、突っ込んだ瞬間あまりに抵抗が強く感じられて、もしやと思った。

それから、冴子という人物と、禁欲という言葉のアンバランスさに可笑しいとさえ思った。
でも、滅多にないであろうこの状況はありがたく受け取る事にさせてもらう。
少し苦しい感じはあるだろうが、冴子もそれを楽しめる身体にはできているはずだ。

冴子を自分の身体の上に乗せて、まずは身体を起こした状態にさせ下から小刻みに中を突くと、冴子の大きく張りのある左右の胸がふるふると揺れた。
それはもう本当に、卑猥なのだけど良い眺めだった。

冴子の顔と、揺れる大きな胸の両方を一番堪能できるのはこの体位だと思う。

…きっと過去の男にもそれは気に入られていただろうな、と思うがもはや比較される事など何とも思わない。
彼らが冴子を称賛する事と、私が冴子を称賛する事の、冴子にとっての重みや価値が比較にならないからである。

一旦達して神経の通りが良くなった身体は、些細な刺激も過剰に解釈し大きなエネルギーに変換させる事ができる。

言葉にはせず「ここだよね」というポイントを執拗に擦ると、冴子の身体がぐらりと揺らいで倒れそうになった。
そこで、私の手で冴子の腰を掴み揺れないように固定してやると、動かない分ますます突かれる刺激を拾いやすくなった身体は悲鳴を上げるように快楽に悶える。

その事が、結合部から響く水音の変質により否応なく伝わってきた。

「あ、あんっ…あはぁっ……」

この、とてつもなく卑猥で良い眺めに、冴子の甘い喘ぎ声がプラスされると、さすがに同じ動きを維持しているのは面白くなくなって、冴子の中に打ち込むストロークを深く、大きくしたくなり、その欲望を素直に実行へと移す。

「…あっ、い、また…イくっ」

冴子の身体が一瞬痙攣して、いよいよ身体を起こしていられなくなったのか私の胸に倒れ込んできた。
すかさず冴子の頭を片手で抱えて、もう片方の手では冴子の腰をしっかり引き寄せながら、上下を同時に掻き回した。
キスは柔らかく、そして偽竿は力強く、冴子の内側に入って秘密の場所を乱していく。

「……っ」

自然と冴子の唾液が口内に流れ込んで来て、私はある種の征服感を感じながらわざとらしくそれをすすって冴子にその音を聞かせてやった。
冴子は既に私の口の中に声を響かせて、快感を伝えてきている。

…またイっちゃいそうなの?と目だけで問うが冴子の目は焦点が合っていない。
もう、私の存在は意識されていないのかもしれなかった。

私は膝を立てて下半身ごと持ち上げるように、何度も冴子の中の偽竿を激しく出し入れした。
冴子の腰も、つられて跳ね上がってはまた落ちてきて、ますます深い挿入感を得ているはずである。

荒波にもまれる小舟のように、冴子の身体は私の上で振り回されてただ彷徨う。
だが航海とは違い、かならず私がある所へ連れていくのだとわかっているから、冴子にはそれができるのだ。

…もう、冴子の内壁からはすっかり硬さは消えてすんなりと偽竿を受け入れながらその動きに沿うように適度に吸い付いてくる。
行為によって形が自在に変化したり、激しい動きに備えるかのように潤滑駅が湧いてくるのは、本当に神秘的だ。

私も感じているはずなのに、頭の中はかなり冴えていて、冴子の様子を観察する事はきちんとできていた。

「お、お姉…さまぁ」

聞き取れないほど呂律が回らない口の動きで冴子が小さく呼びかけてくる。
でも、それはもう意識の外にある言葉なのかもしれなかった。

改めて冴子を組み敷くようにベッドに押さえつける態勢を取り、自由になった自分の身体をめいっぱい使って、冴子の花弁の中央を貫き突き下ろすように中を掻き回した。
ずっと激しくしてるから、気持ちいいと思っているかどうかも怪しいけれど。

「あ、あ…あんっ…」

冴子の喘ぎ声は弱く細いものに変わっている。
声が枯れて息切れしてきたのだろう。

もう一度、偽竿の先端を上向きに返して冴子の最も感じる場所をダイレクトに突き擦る。

「っあ、ひ…ぁ……っん」

私たちの間から言葉がなくなって、荒い呼吸と喘ぎ声、それから結合部が立てる水音のみが満ちる時間がやって来る。

私の下で、そして上で冴子を何度も果てさせてもなお、私の腰は動きを止めなかった。
いや、私が納得する量冴子の中を突くまでの間に、冴子が勝手に何度も達しただけの事である。

…ここまで激しく冴子を、しかも平日の朝に抱いた事はあったろうかと記憶を手繰るが、それは頼りないものでしかない。
冴子の蜜の味さえ、忘れていた私なのだから。

「…ごめんね、もう少しだけ」
「い、いんです…好きにして、ください…あぁぁっ…」

冴子の性欲が底無しでありがたい限りだ。
一方的な行為なのに、冴子はそれらの全てを拾って快楽として受け取ってくれている。

冴子の身体には私の汗がたくさん落ちたけど、それを申し訳ないとは思わなかった。
その雫さえも受け止めればいいと思いながら、何度も何度も冴子の身体を犯し続けた。

「だめ…また……もうぅ、凄いです」
「……」

本当にもう、いい加減にしないとまずい時間に差し掛かっているはずなのだが、そんなプレッシャーが尚更私を昂らせてしまうのか、まだまだといった風情で冴子を求めてしまう。

…そんな事、会社人生の中で一度として思った事がなかったのに、どうせ管理職なのだから適当に出勤すれば良い、などという不埒な考えがよぎりそれに甘えたくなった。
なんとなく、冴子もそれを望んでいるような気もするし。

「ねえ、やめられそうにないんだけど」
「……」

冴子は熱を帯びた、呆けた表情で私を見つめてくるばかりで何も言わない。
何も言う気がないのかと思って強引に唇を重ねるけれど、冴子はただ「んん」と甘く吐息を漏らしながらそれに応じてくる。

今度はしばらくの間舌を絡ませキスに夢中になっていたが、冴子が急に動きを止めてこう言ってきた。

「あれを、使いましょう」
「…?」
「あれですよ、リモコンの」

冴子がそれを積極的に使おうと言い出した事に、私は驚いた。
ましてや仕事中にそれを身に着ける事は、冴子が最も避けたい行為のはずである。

「…大丈夫なの?」
「だって…したいって言われちゃうと、それしかないかなと思って」
「……」

「電車の中でも、ランチの最中でも、お茶の支度の途中でも…好きな時に私にいやらしい事ができる方法としては、これしか…」

「しか」と言うが私はそれすら思いついていない。
確かな方の記憶を探って、今日の私のスケジュールと進藤さんのスケジュールの推測をしてから、私は冴子に命じた。

「やっぱりダメ、今日は休むか半休にしなさい」
「……」
「直接、させてくれなきゃ私が納得できない」
「…わかりました」

冴子が秘書課の上役に休みの電話をかける間を待つのがこうも長くしんどいものか、と私は思っていた。

冴子の電話が終わるや否や、私は再び冴子の唇を唇でふさいで、突っ込んだままの「あれ」で冴子の中を掻き回す。

「…こんなの突っ込まれたまま電話しちゃうなんて」
「だってそれは…っん、あぁ…ん」

もう少しだけ、濃密な時間を過ごしたい。
じきに今度は私の携帯にごちゃごちゃ連絡が来るはずだが、それまでの少しの間さえも惜しいと思った。

案の定定時を過ぎた直後には携帯が振動したけれど、「いいんですか」と心配する冴子に私は「大丈夫だから」と言って、遅刻の理由にどんな嘘をつこうかを頭の隅で思案しながらも、冴子の身体に溺れたくて、それを婉曲に邪魔した部下を恨めしく思ったりした。

…そうか。
あの、お店の女の子たちと行為に及んだ結果は、私の性的欲求が更に深く強いものに変わったという事かもしれない。

「冴子…こんなにしてるのに、まだセックスが嫌いにならないの?」
「なるわけ、ないじゃないですか…」

私の自分勝手な行為に対してそれを悦ぶ冴子は、確実に私を増長させる事に加担している。

それでいいのか、と思う気持ちとそうでなくてはと思う気持ちが交錯する。
だからまた、混乱が生まれてそれをセックスという形で冴子にぶつけてしまうのだ。

冴子が今朝使おうと提案してきたリモコンローターは、結局二人だけの寝室で、しかも私が冴子を貫きながら留守になった冴子の萌芽に押し当てる形で使用された。
蜜だか潮だかわからないものでお互いべとべとに汚れた下半身を、それでも気にせず、飽きずに密着させ続けた。
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