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気持ちを自覚してから
繁栄の刺激
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授与式のことが放映され、職場では同僚からも上司からも『おめでとう』とたくさんの祝福の歓声が上がった。嬉しくないと言ったら嘘になるが、アレッシュにとっては重要なことではなく喜びは薄い。だが仕事後が楽しみで、皆へ接する顔はいつも以上ににこやかだった。
「……貴方、なんだか今日気持ち悪いわ」
横目で不審そうな目で見てくるシャリーファがいた。昨日も来ていたが本当に仕事で来ているのか疑いたくなる。
「悪かったな。今日は久々に予定が入って機嫌が良いんだよ。アンタはどうなんだ? 今日も先輩に会いに来たんじゃねえの?」
「は、はあ? そんなわけないでしょ。誰があんな人にっ……仕事で来て、今だってついでに貴方に話しかけてあげたのよ!」
ほんのり顔を赤く染めて怒りを露にしてこの過剰な反応、そしてこの言い草、絶対脈アリだろう。手を上げてやれやれと呆れながら対応する。
「へいへい。仕事で来たんなら、何がご用件ですかー」
「貴方が呆けてる間に他の人に手続きしてもらったわよ。今は待ってるだけ」
「あっそ」
「ああそうだ、栄誉勲章おめでとう」
「ん、ああどうも」
「あんまり嬉しそうじゃないわね」
「嬉しいには嬉しい。だが俺には過ぎたる物って気がして素直に喜べないんだよな」
「そっ。謙虚なことね。認めてもらえたのだから誇るべきよ。努力をしても気付かれず認めてもらえない人が大勢いるというのに。ある意味嫌みだわ」
「嫌みを言ってるつもりはねえよ」
会話を続けようとしたが、隣の窓口でシャリーファが呼ばれて行ってしまった。きっと戻って来ることはないだろう。シャリーファの方が嫌みったらしい性格をしている。そして努力家。彼女が言っていた『気付かれず認めてもらえない人』というのは自身のことを指している。悔しいから当たりに来た。それが分かっている為、もし彼女が戻ってきてもただ慰めの言葉を伝えることしか出来ないだろう。
アレッシュは子供の頃から優秀だった。愛想が良くて大人受けが良く、気さくな性格と頼り甲斐があって友人も多い世渡り上手。身体能力が高く、知能もそこそこで悪くはない。存在感を放っていた。そして運良く、目立たないことも出来た。周りに溶け込み違和感がない。子供の頃は子供と遊び、大人とも遊んだ。飲み屋にいても仲の良い大人が連れてきたのだろうと溶け込み、たくさんの情報を得てきた。騎士としてある程度の地位を手に入れて、指示を出しておけば騎士の仕事は成り立った。上層部に潜り込んでも、地位があるのだからいるのは当然かと黙認されることもあった。いつの間にか王の近くにいても、誰も文句を……違和感を告げなかった。
昔から何でも出来るように見られた。しかしもちろん出来ないことだってある。別に他人を見て羨ましいと思うことはない。自分の方が大抵出来ることが多いのだから。
嫌みを言わずにさらっとやってのける。大抵の人は憧れを抱くことが多かったが、彼女にはそれが嫌みったらしく映ったのだろう。シャリーファのように敵対心を持って真っ向からぶつかってくるタイプは周りにいなかった。気の強い人は嫌いじゃない。
ーー……いやいや、初対面で煽ってきたヤツいた。マニスがあんなだからな……そりゃあ気の強さで言ったらトップクラスだし、気が強いヤツに好感持てるのは自然なことだよな
夜が待ち遠しい。
呆けていても仕事はしっかりこなせるのがアレッシュだ。テキパキと仕事をこなし、さっさと退勤する。何かの悪いフラグは簡単にへし折っていった。今のアレッシュを止められる者などいない。
「……貴方、なんだか今日気持ち悪いわ」
横目で不審そうな目で見てくるシャリーファがいた。昨日も来ていたが本当に仕事で来ているのか疑いたくなる。
「悪かったな。今日は久々に予定が入って機嫌が良いんだよ。アンタはどうなんだ? 今日も先輩に会いに来たんじゃねえの?」
「は、はあ? そんなわけないでしょ。誰があんな人にっ……仕事で来て、今だってついでに貴方に話しかけてあげたのよ!」
ほんのり顔を赤く染めて怒りを露にしてこの過剰な反応、そしてこの言い草、絶対脈アリだろう。手を上げてやれやれと呆れながら対応する。
「へいへい。仕事で来たんなら、何がご用件ですかー」
「貴方が呆けてる間に他の人に手続きしてもらったわよ。今は待ってるだけ」
「あっそ」
「ああそうだ、栄誉勲章おめでとう」
「ん、ああどうも」
「あんまり嬉しそうじゃないわね」
「嬉しいには嬉しい。だが俺には過ぎたる物って気がして素直に喜べないんだよな」
「そっ。謙虚なことね。認めてもらえたのだから誇るべきよ。努力をしても気付かれず認めてもらえない人が大勢いるというのに。ある意味嫌みだわ」
「嫌みを言ってるつもりはねえよ」
会話を続けようとしたが、隣の窓口でシャリーファが呼ばれて行ってしまった。きっと戻って来ることはないだろう。シャリーファの方が嫌みったらしい性格をしている。そして努力家。彼女が言っていた『気付かれず認めてもらえない人』というのは自身のことを指している。悔しいから当たりに来た。それが分かっている為、もし彼女が戻ってきてもただ慰めの言葉を伝えることしか出来ないだろう。
アレッシュは子供の頃から優秀だった。愛想が良くて大人受けが良く、気さくな性格と頼り甲斐があって友人も多い世渡り上手。身体能力が高く、知能もそこそこで悪くはない。存在感を放っていた。そして運良く、目立たないことも出来た。周りに溶け込み違和感がない。子供の頃は子供と遊び、大人とも遊んだ。飲み屋にいても仲の良い大人が連れてきたのだろうと溶け込み、たくさんの情報を得てきた。騎士としてある程度の地位を手に入れて、指示を出しておけば騎士の仕事は成り立った。上層部に潜り込んでも、地位があるのだからいるのは当然かと黙認されることもあった。いつの間にか王の近くにいても、誰も文句を……違和感を告げなかった。
昔から何でも出来るように見られた。しかしもちろん出来ないことだってある。別に他人を見て羨ましいと思うことはない。自分の方が大抵出来ることが多いのだから。
嫌みを言わずにさらっとやってのける。大抵の人は憧れを抱くことが多かったが、彼女にはそれが嫌みったらしく映ったのだろう。シャリーファのように敵対心を持って真っ向からぶつかってくるタイプは周りにいなかった。気の強い人は嫌いじゃない。
ーー……いやいや、初対面で煽ってきたヤツいた。マニスがあんなだからな……そりゃあ気の強さで言ったらトップクラスだし、気が強いヤツに好感持てるのは自然なことだよな
夜が待ち遠しい。
呆けていても仕事はしっかりこなせるのがアレッシュだ。テキパキと仕事をこなし、さっさと退勤する。何かの悪いフラグは簡単にへし折っていった。今のアレッシュを止められる者などいない。
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