Golden Spice

朝陽ヨル

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馴れ初めの続き(R18)

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「ラー様、機嫌直してください」 

 アレッシュは苦笑しながら、ベッドでうつ伏せになっているラーの腰をマッサージしている。
 そのラーはしかめっ面でアレッシュの顔を見ようとしない。 

「……お前、遅漏か」
「いやあ~久々と伝えたじゃないですか」
「久々なら尚のこと早く出せ。尻が痛い。痔にでもなったらどうしてくれる」
「ハハハ……責任とりますとも言い切れないんですよね。その分、貴方の手足にでもなりますよ」
「……ふんっ」 

 すっかりご機嫌斜めになり、敬語に戻して話しかけても機嫌が直ることはない。マッサージもほとんど意味が無いのではないかと思うが、やらないよりかはマシだろうと続けている。 

「貴方がそれだけ魅力的で、もっと抱きたいと身体が反応した結果ですよ。それに身体の相性も良さそうでしたし」
「もっと抱きたいと思うなら、もう少しスパンを考えろ」
「……それはつまり、また抱いてもいいということですか?」
「…………。…………私が受け手になることは今後お前以外に無いだろう。気が向いたらな」 

 『お前以外に無い』というのは最大の褒め言葉だ。抱かれてもいい相手として認めてもらえたということ。傍にいることを求められ、夜の相手としても認められた。下僕とも友人とも違う、恋人という程の甘い関係とも少し違い、愛人という関係が一番近いような気がする。
 しかしあれだけ情事の最中に暴言を吐いたにも関わらずよく認められたものだ。それだけラーの度量が大きいということだろう。 

「それと、二人きりの時は畏まらなくていいと言っただろう。友人とでも思って接しろ」
「さすがの俺でも友人とはシねえよ」
「それもそうか」 

 グルッとうつ伏せから仰向けになるラー。そしてアレッシュに向かって両腕を広げる。 

「抱け」
「……」 

 ーー……あ、抱きしめろってことか 

 思考がエロい方向にしか向いておらず迷ったが、きっと今の雰囲気ではそういうことではないだろうと判断する。
 ラーの体を抱き起こし、胡座をかいてその上にラーを座らせて抱きしめてやる。 

「これでいいか?」
「ん」 

 そしてラーもアレッシュの首に腕を回し、肩に顎を乗せて抱きしめ返した。
 こうも素直に甘えられると悪い気はせず、よしよしと背中を撫でてやる。 

「……お前に夢を託した者」
「ん? ああ」
「その者が……少し羨ましい。お前のような癖の強い人間を動かす程の器なのだろう」
「あの方を褒めてくれるのはシンプルに嬉しいな」
「人望とは勝手に身に付くものではないからな。人望があれば人材など後で着いてくる。そういう意味ではアルスの素直さも好ましい」 

 口振りがやや感傷的で、尊大な態度のラーでも他人を羨んだり、悩んだりすることがあるのだと推する。 

「アンタがアルス様みてえだったら、今俺はここにいねえよ。素直さだけより、発破かけて刺激するようなのが上には必要だろ。アンタはそういうタイプだ。だから俺はこうしてのこのこやって来たんだろ」
「フッ、そうだな。そういうやり方もあるな」 

 ラーは短く笑いを漏らし、その瞬間にアレッシュの耳に噛み付いた。
 アレッシュは噛まれてから咄嗟に顔を引いて、噛まれた耳を手で覆う。 

「いててっ。なんだよいきなり」
「ハハハッ。刺激とはこういうものではないのか?」 

 口角を上げて悪戯っぽく笑うラー。感傷的だったのはきっと気の所為かもしれない。
 アレッシュは睨むとまではいかないが真顔でラーの顔を見ている。 

「アル、風呂へ連れていけ。汗ばんで気持ち悪い」
「はいはい、仰せのままに」 

 ーーとんだ我儘な女王様に捕まった気分だ 

 内心そんな風に思いながらもこれからの生活に光が差してきたように思えた。
 ベッドから降り、ラーを抱えてまたあの悪趣味な風呂場へ。そこでは背中を流したり、浴槽内では後ろから抱えて腕のマッサージをするなど、情事の前の風呂よりもスキンシップが増えた。
 後日、王宮に呼び出したアルスに「暫くコイツを借りたい」とラーからの申し出があった。
 あれだけ仲が悪そうだったのに……とアルスは不思議そうな顔をしていたが、「アレッシュが良いのであれば」と快諾してくれた。
 アルスはまた他国を巡る為に出国し、アレッシュはそれを見送ってラーのもとへ戻る。 

「これからよろしく頼みます。ラー様」
「ああ。お前の行く末を見届けよう」 

 玉座に座るラーと、跪くアレッシュ。公では立場に差はあれど、プライベートの二人きりでは近く、同じ目線で、夢を探して目指し続けていくのだろう。
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