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朝陽ヨル

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二章〈fireworks〉〜儚いひと夏の花〜

一 拓視点

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 微熱が出て保健室のベッドで休ませてもらっている。有馬に鞄を持ってきてもらい、昼食を食べて昼休みも保健室で過ごしていた。

「体調はどう? 少しは良くなったかな」
「ちっとダルいけど薬も飲んだし、午後の授業には出られそうだ」
「そっか、それなら良かった。でも無理はしないようにね」
「健気だね~」

 カーテン越しに声が聞こえた。保健医の白鳥がにやにやしながらカーテンを開けて入ってくる。

「なんだよ白鳥」
「様子を見に来たんだよ。本当だ、顔の赤みも引いてる」
「んっ」

 白鳥の手が額を覆ってくる。

「そんなあからさまに睨まないでくれよ」

 額から白鳥の手が離れると有馬の顔が見えて、確かに分かりやすく白鳥を睨んでいた。そういえば勝手にライバル視していたんだった。
 白鳥はきっとこの状況を楽しんでいるに違いない。

「そうだ、キミたちは花火大会行くの? 最近学生たちが話してるけど」

 毎年海岸沿いで行われる花火大会がある。ここ最近クラスでもその話題で持ちきりだ。来週から夏休みで予定に入れる人は多いだろう。

「行くわけねぇだろ」

 というか、行けるわけねぇだろ……こんな身体で
 花火大会の会場までは電車を乗り継いで行かなければいけない。普段の電車なら一番端の車両の隅でなんとかなっているが、イベントの日の電車なんて満員になるに決まってる。つまり人と触れることは不可避だ。そんな危険に自ら突っ込もうなんて気には到底なれない。

「先生は行くんですか? 可愛い彼女を連れて」
「うーんどうだろうなぁ……仕事次第かな」
「えっ。彼女はいるんですか」
「いるよ」

 サラッと言ってのける白鳥に、俺はなんとも思わなかったが、有馬は嬉しそうな顔をしていた。

「キミたちそろそろ戻った方がいいんじゃない? 授業に遅れるよ」

 言われて時計を見れば、昼休みが終わりそうな時間だった。鞄を持って保健室から出ていく。

「白鳥先生にはちゃんとお相手がいたのか……これでライバルが減った!」
「まだそんなこと考えてたのかよ。ライバルなんかいねぇっての」
「甘いよ! チョコは魅力的なんだ、いつどこからライバルが現れるかなんて分からないんだよ!?」
「あーはいはい」

 呆れて適当な相槌を打つ。有馬の大袈裟な発言は今に始まったことじゃない。

「ねえ、チョコ」
「あ?」
「さっきの花火大会のことなんだけどさ……実はアーシャが行きたいって言ってて、チョコも一緒にって話してたんだけど……どうかな?」
「どうって……俺は……」

 行きたくないわけじゃない。どちらかといえば行ってみたい。けれどこの身体では無理なことだ。

「ああ、ごめん。一応聞いてみただけなんだ。さっき行かないって言ってたし、体質のこともあるもんな」
「悪ィ……」
「仕方ないさ。アーシャには用事があるってことにして断っておくよ」

 苦笑いをして、教室に戻ったところで話が途切れ自分の席に着いた。
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