99%興味【打ち切り】

朝陽ヨル

文字の大きさ
上 下
53 / 73
二章〈ocean view〉~海で秘められし魅惑のTKB~

四 拓視点

しおりを挟む
 蛇口ハンドルを捻りシャワーを頭から浴びる。砂浜に倒れたり海水を被ったり動き回って汗をかいた身体だ。全身に満遍なくシャワーをかけて流していく。
 運動は嫌いじゃない。休日にマラソンをしたり、筋力トレーニングをすることがある。基礎体力をつけておくようにとガキの頃に白鳥や白鳥の父親である医師から言われたからだ。授業で体育を受けられない分、日常生活上で運動して体力や筋力をつける必要がある。基礎体力をつけて栄養を摂取し免疫力や抵抗力をつければ、敏感な身体を治すことに繋がるかもしれないと言われていた。
 まあ実際あんまり体力とか関係なさそうだけどな
 敏感体質は病名があるわけではなく、精神的ストレスから過敏になったのではないかとも言われている。だから定期的な運動はストレス発散の為でもあった。ただ一人で出来る運動は限られている。
 バレーボールなんてテレビで観たのを見真似でやっただけだが……

「楽しかったな……」

 浴室内で呟いてもシャワーの音でかき消された。シャンプーで頭部を洗い、ボディソープで全身を洗ってシャワーで流すと汚れが落ちてさっぱりする。脱衣室でバスタオルを頭から被りタオルドライし、上から下へ順に身体を拭いていく。
 ドライヤーはいいか。暑いしどうせすぐに乾くよな
 服を着て脱衣室から出る。すると有馬がトイレから出てくるのと鉢合わせる。
 自分はもう服を着ているのに、有馬はまだ水着姿だ。風呂に入る前に言っていた言葉を思い出してつい股間に目を向けてしまった。わざわざ確認することではないのだが。 

「ヌかなかったのか?」

 有馬の股間の膨らみは風呂に入る前と変わらない。寧ろ増しているようにも見える。

「ヌこうとはしていたんだけど、ちょっと興奮しすぎてしまってね」
「はあ? まあいいか。お前も入ってこいよ」
「そうするよ」

 やたらと顔が綻び機嫌が良さそうだ。普段から機嫌が悪いわけではないが、今は一段と機嫌が良さそうで不気味だ。
 有馬が脱衣室に入っていったのを見送りベッドに腰掛ける。自宅のベッドとは違い高級感のある素材で弾力がある。昨日寝て、今朝このベッドから起きたとはいえ慣れない感触。

「ふぁあ……ちっと眠くなってきたな」

 普段の体力作りの為の運動と違い楽しかった。誰かと運動するのは楽しい。だからはしゃぎすぎたんだ。薄っすらと睡魔が押し寄せてきて目蓋が重くなってくる。ベッドに横になって目蓋を閉じた。

「はあ…………修学旅行ってこんなんでいいのか?」

 イメージしていた修学旅行とは違う。もっと堅苦しくて文化的な、建造物見学や美術館などに行くだけだと思っていた。一日目、二日目は正にそんな感じのコースではあったが、三日目は本当に自由過ぎる気もする。
 変だけど、やっぱ有馬といるのは楽しいんだよな。いつも明るいし、好かれてるってわかるからなのか気楽で気を遣う必要もないし。こんな学校の行事じゃなくて普段から遊べればいいんだけどな
 学校の行事だから。そんな口実は無しにして。

「んっ……」

 数分眠っていたかもしれない。頬を撫でられた感触がして閉じていた目を開いた。ぼんやりとした視界は段々と鮮明になり有馬の顔を映す。

「上がったのか。つか何触ってんだよ」
「寝てるからつい」
「ついってな……。……!?」

 身体を跨がれ上から見下ろされている。別にその体勢が驚いた要因ではない。腹に押し当てられる妙な違和感があったからだ。

「おまっ、ソレッ!」
「ああ、やっぱりわかるかい?」
「わざとだろ!」
「うん、まあ……ね」

 苦笑している有馬だが、悪いとか困ってるとかそういう感情は無さそうだ。それよりも何かを期待しているような目をしている。
 有馬は下着一枚で上半身裸だ。なけなしの一枚は窮屈そうなモノで押し上げられていて、俺の腹をつついてくる。

「ちゃんとシャワーは浴びてきたんだけどさ、どうもこっちは治まってくれなくてね。というか正直に言ってしまうとヌケなくて」
「はあ?」
「ちゃんと説明するならば、好きな本人が同じ部屋にいるのに本人を想像しながら別の場所でヌくのはなんだかなあと思って。どうせなら本人でシようかなって」
「え……それって……俺の前でマスかくってことか……?」

 自慰行為を見て欲しい願望でもあるのかと思って戸惑いつつ聞いてみたがそうではないらしい。

「ホテルで二人っきりだろ? 自由行動時間だから誰にも邪魔されることはないし、お互いシャワーも浴びたし、これだけ好条件が揃ってるとさ、そろそろ……シテみたいなって思ってるんだ」

 真剣な表情をしていてもわかる。薄く紅潮した頬が照れや緊張を伝えてくる。それがこちらにも移ってきて同じような表情になってしまう。
 話の内容だって曖昧にしてはいるがなんとなくだが理解している。こんな状況だ。わからないハズがない。

「それってつまり……」
「前に言ってた『いつか』は、今じゃダメかい?」

 ドクンッ……ドクンッ……
 心臓が大きく早く鼓動する。早鐘のように鳴る。シャワーで流した身体にじんわりと汗が滲んでくる。止めたいのに止められない。自分の身体ではないみたいだ。

「ダメじゃねえ、けど……」

 有馬は特別。でもだからといってすんなりと自分の身体を差し出すには度胸が足らない。

「やっぱり怖い?」
「そりゃあそうだろ……だってお前が今したいことって、その…………フツーに生きてたらしないことだろ」
「……そうかもね」

 男女のカップルならしないことだろう。男同士で付き合ったとしても片方はしないことが多いだろう。もしかしたらそれは偏見で、実はそうじゃないのかもしれない。他のカップルなんて知らない。
 俺は有馬と付き合ってるんだ。嫌々付き合ってた時とは違う。ある程度の覚悟はもう何日も前からしてる。なのに、いざって時になんでこんな風に臆病になるんだ

「お前が初めてケツ弄った時はどうだったんだよ。怖くなかったか?」
「怖かったよ。初めは自分で拡げてただけだけど、誰かにシテもらうっていうのは緊張するし、やっぱり……嫌われてしまうのが一番怖い」
「嫌われる?」

 ケツの穴が広がって出血多量で止まらなくなるとか痔になるとか激痛だとかそういう怖さじゃなくて?

「好きな相手に幻滅されるのって怖いだろ?」
「相手の身体を触ってなんで幻滅すんだよ」
「それは、そういう恋人の例が世の中にたくさんあるからで、男女間でそういう事例があるのに男同士なんてもっと可能性あるじゃないか」

 バレーボールをしていた時も、ホテルに戻ってきた時も、さっきまではあんなに明るい表情をしていたのに、今は必死に不安そうな表情を隠そうとしている。

「それって前にお前のケツを弄った時に話してた、声が変とかそういうの気にしてんのか?」
「声だけじゃなくて、ほら、男なら同じものも付いてるし特別顔が可愛いとか綺麗とか、興奮するような要素って少ないだろう? 寧ろ萎えるんじゃないかって……」

 普段俺の身体を見て興奮してるヤツが何を言ってるんだ。ナルシストで自分の顔がカッコいいとかキレイとか言ってるくせに。
 コイツもいざって時は、臆病になるんだな……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...