99%興味【改訂版】

朝陽ヨル

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二章〈take a cold〉~熱に浮かされる本能~

一 有馬視点

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 外は風が強いけれど台風は来ないようだ。でも俺の心には嵐が吹き荒れている。
 チョコが学校休み……!
 今日も会えると思ってルンルン気分で学校に来たというのに、肝心のチョコが学校に来ていない。ホームルームが終わってからメールを送ってみても返信無し。授業が始まってしまって仕方なくスマートフォンを鞄にしまうけど、チョコのことが気になって全然集中出来ない。
 やっぱり風邪を引いてしまったのかな。くしゃみしてたし。休むくらいだから熱出たのかな。身体が弱いと言っていたし、よく保健室を利用してそうなんだよな。そこでまた白鳥先生との仲が進展してしまわないかそっちも心配だよ。いやいや今はそんなことよりも今のチョコがどうなのか……ちゃんと家で寝てるよな。登校して来てて途中で倒れてたりとかしないよな? それで知らないオジサンに介抱されてるとかしないよな!?

「次、藍庭読んで」
「えっ。あ、はい。すみません何ページですか」

 指定されたページを開くとそのページには図形しか書かれていない。

「それは数学! 今は英語だぞ」
「ああそうだった! 英語英語……ははは」

 作り笑いをしつつ英語の教科書を机から探して取り出し、指定のページの英文を確認すると流暢に読み上げた。

「はい、ありがとう。今の英文は……」

 英語が得意だからってよく当ててくる英語教師。授業なんだから平等に当てて欲しい。
 授業が終わると即座に鞄からスマートフォンを取り出して画面を開く。メールの通知があり開いて見るとチョコからのメッセージで歓喜する。

『熱出たから休んでる』

 熱出たのか……可哀想に……

『学校の帰りにお見舞いに行ってもいいかな』

 メールを打つのもしんどいかもしれないので簡潔なメールを送った。

『うつるからくるな』

 数分後に更に簡潔な返信がきた。感染るからということは咳も出てるのかもしれない。心配だけど行って迷惑をかけてしまったら本末転倒だ。

『わかった。何かあったら連絡ちょうだい。お大事に』

 労い文を送信して画面を閉じる。自分が出来ることは心配することと、授業を受けてノートを記入すること。あとで見せてやれば多少助かるだろう。
 チョコの分まで授業頑張るぞ!
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