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朝陽ヨル

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二章〈rainy season〉~雨は暗い贈り物~

二 有馬視点 有馬攻め(R15)

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「……というわけです先生」
「君たちよく来るね。仮病ということなのかな?」

 保健室に来て白鳥先生に来た理由を話したら苦笑いされた。

「仮病ではないです! 頭がクラクラしてチョコを見ているとドキドキして鼻血が出そうです」
「……だそうだけど、キミは大丈夫なのかな?」
「俺は早く着替えたいだけだ。ソイツ、頭を打ったのは本当らしい」
「あ、そうなの? どの辺?」

 先生は椅子から立ち上がり俺の頭を触ってきた。ぶつけた場所を指して伝えると、優しく撫でられる。

「たんこぶになってるけど包帯巻くほどでもないし、時間が治してくれるよ」

 ポンポンその患部を叩いてくる先生。きっと、大したことないってわかっているからだと思うけど痛いからやめてほしい。

「せっかく来たし横になってく?」
「ええと……少しだけ」

 長居するつもりはないのだけど、チョコの着替えスペースを確保する為だ。ベッドにはカーテンがついてるからね

「あ! チョコ、肝心の着替えってあるかい!?」
「あるわけねぇだろ」
「じゃあ俺のジャージ持ってくるよ」

 チョコの乳首を守るのに必死だったもので替えの服なんてすっかり頭から抜けていた。保健室を出ていき、ホームルーム中の教室へ戻った。

「なんだ早かったな」
「いえ、またいってきます」

 ジャージを持った俺はすぐに教室を出ていく。教室はどっと笑いが起こっていた。廊下でそれを聞いて、また保健室へ直行する。

「手伝ってあげようか?」
「いらねぇよ」

 保健室の扉を開けようとして、白鳥先生とチョコの会話が聞こえてきて開けるのを留まる。ほんの数センチ開けて中を覗いてみた。

「早く脱いだ方がいい。じゃないと風邪を引いて看病されてしまうよ」
「誰にされんだよ」
「今は彼にだろ? 風の噂で聞いたけど、まさか本当に付き合ってるんだね」
「まじかよ。噂とかくっだらねぇ」
「まさか拓くんがね~びっくりしたよ。先生も年取ったな~」

 白鳥先生チョコと親しげ! 何であんなに普通に話しているんだ!? でも俺の方が絶体仲がいいけどね! 仲がいい所を見せつけてやりたいくらいさ! ていうかチョコ脱いでる!?

「チョコーッ!!」

 扉を思い切り開けた。当然ガタンッと大きな音が鳴る。

「こらこら、そんな大きな音を立てて患者がいたら迷惑だろ? それに扉が壊れるって」
「み、見ましたか? チョコの裸……」
「え。そりゃあ脱げば……ねえ?」

 チョコの傍に寄って持ってきたジャージを広げて体を隠してやる。
 白鳥先生もチョコも怪訝な顔をしている。

「どうした?」
「……とりあえずジャージ着て」
「お、おう。じゃあ借りるわ」
「そっちのベッドの方で着替えよう。俺、そこで休んでますのでいいですよね?」
「いいよ。……先生は濡れた制服を乾燥機に入れて、少し一服してくるからゆっくりしてていいからね。それじゃ」

 優しくそれでいて飄々とした声音で言って保健室を出ていった白鳥先生。三十代の若い保健医。俺の勘が訴えてくる。
 白鳥先生は危険かもしれない……
 白鳥先生が出ていって保健室には二人きり。けれど念には念を入れてベッドのカーテンを閉めて、チョコに持ってきたジャージを上下着てもらった。そして並んでベッドに腰掛ける。チョコは距離を取ろうとするけれど、離れて欲しくなくてジャージの裾を掴んで止めた。

「……先生と親しげだね」
「あ? 普通だろ」
「普通に話してるから……友達みたいに。だからちょっと心配で」
「心配? なんで」
「チョコの乳首を守れなかったから」
「…………乳首守るってなんだよ」

 戸惑いと半笑いをしつつも聞いてくれるみたいだ。

「裸を見られてしまったチョコが先生といかがわしい関係にならないか……」
「なるわけねぇだろバカ」
「今日のバカは……ちょっと傷つくな……」
「バカだろ」
「二回も!? 本当にションボリしてしまうよ!」
「お前な、今こうやって話聞いてんだろ。こんな近くにいて。……隣座って話聞きてぇって思うのはお前だけだし」

 チョコは顔を逸らしてしまう。けど隠せていない耳は真っ赤で、顔も同じくらい赤いのだとわかってしまう。
 チョコが照れてる! はあーーっ可愛い可愛いチョコが可愛すぎる! その真っ赤な耳を食べてしまいたい!

「男の裸見られたくれぇでなんでそんな発想になるのか不思議でしょうがねぇよ」
「だってチョコの乳首を見たってことだろう!? 魅惑の乳首を! あの乳首を見たらいかがわしい気持ちになるだろ!?」
「あんまり連呼すんなよ……男の乳首見ていかがわしい気持ちになるのはごく少数だろうよ。白鳥はそんなんならねぇし、別に初めて見られたわけでもねぇし」
「ウソだろ!?」
「身体測定とか見られる機会なんていつだってあるだろが」
「ああそうか……」

 納得はしてもこのもやもやした感情は拭えない。他の男に見られたと考えるだけで嫌だと思ってしまうのは狭量だろうか。

「身体測定以外では見られてないよね? 体育出てないから着替えることも無いし」
「しょっちゅう見られてるぞ。つか白鳥がいたからこの学校に来たわけだし」
「……なにそれどういうこと?」

 白鳥先生がここの保健医だから受験したってこと?

「昔から知り合いだからな。俺の体質の事情も知ってるし、そういうヤツがいる学校の方がちっとは安心だったし」

 白鳥先生もチョコの体質知ってるのか。確かにちゃんと理解して協力してくれる人がいるのは心強いよな。でも昔からの知り合いなのか……というかしょっちゅう見られてるって?

「乳首をしょっちゅう見られる間柄……? チョコの乳首は俺のだよっ!」

 チョコの顔を見て至極真面目に言ったつもりなんだけど、チョコは突然吹き出した。

「さっきからなんだよ。どんだけ乳首にこだわってんだよ」
「そんな笑い事じゃないよ。俺にとっては一大事さ!」

 チョコが笑ってる隙を見て、俺はチョコの上ジャージを胸まで捲り上げた。

「なにしてんだよ!」
「チョコの乳首の初見が白鳥先生なら、俺はチョコの乳首を弄る初めてをもらうことにする!」
「またわけわかんねぇこと言うな!」

 抵抗され捲ったジャージを下ろされるも手はジャージの下を既にくぐっている。直接肌に手を滑らせて乳首に触れる。

「あっ……やめっ、ろっ!」
「ジャージで擦れてたからかな? 立ってる」
「ん、触んなぁ……っ」
「こんな触って欲しいって言ってるみたいにびんびんになってるのに」

 ジャージの下で俺の手はチョコの両方の乳首をこねくり回している。
 チョコは抵抗しているけど片手ではどうにも出来ない。片方の手は口を押さえていて声を出さないように頑張ってる。なのに漏れてきちゃう声がとても可愛い。

「ここがウィークポインツにならない人もいるけど、チョコは絶大なようだね」
「どこだって……変わんねぇよっ」
「そんなことないさ。でもチョコは敏感だからどこだって可愛い反応してくれるね」

 こねくり回していた指で乳首を摘み上げると、びくんと大きく身体が跳ねた。

「あっ、ああっ」
「はあ……可愛い……」
「やめろっての……!」

 火事場のなんとやら渾身の力で突き飛ばされてしまった。

「やっぱお前スゲー元気じゃねぇか!」
「チョコの着替えの為に来ただけだからね。チョコの着替えをクラスの皆に見せないようにする為にはこれしか思いつかなかったんだ」
「アホか!!」
「だってチョコの乳首を誰にも見せたくなかったんだよ! というか白鳥先生にはしょっちゅう見られてるってなんだい!?」
「……身体を診てもらってんだよ」
「もしかして……ぜ、全身……?」
「あのな、診療としてだからな? 白鳥は俺の主治医だからそれで診てもらってたんだよ。別に全身じゃねぇし」
「主治医……そうなんだ」

 なんだ、そうなのか……それなら安心……

「診療ってもしかして……触診……とか?」
「そういうのもあるけど……お前みたくヤラシイ手付きじゃねえ」
「やっぱり触診なんだね!?」
「ガキの頃の話だからな!」

 やっぱり白鳥先生は侮れない……! 子供の頃のチョコにあれやこれやと触っていたなんて……!

「はっくしゅっ」
「あ、大丈夫?」

 くしゃみをしたチョコにベッドの掛け布団を背中から掛けてやる。やっぱり冷えてしまったのだろうか。

「……敏感な体質のこと抜きにしてもあんまり身体が強くねぇんだよ。よく体調崩して、それで白鳥んとこの病院に世話になってたんだ。お前が思ってるみてぇな変なことはしてねぇから」
「そうなんだ……ごめん。白鳥先生にジェラシーを感じてつい」
「ジェラシーって何だ?」
「ヤキモチだよ。あんまり仲良く話してるから」
「仲良く話してたつもりは毛頭ないんだが……」
「でもそういう間柄ではないことがわかってスッキリしたよ」
「そりゃあ良かったな」

 小さい頃からの知り合いなら信頼出来るのは当然だよな。まさか身体測定の前にも見られていてしかも触られていたなんて。白鳥先生に先を越されまくっている。
 俺とチョコは付き合ったばかりでまだあまり信頼関係を築けていないかもしれない。でも俺たちの関係はこれからもっと先へ進んでいくんだ。白鳥先生の知らないチョコを沢山知っていく為に。

「白鳥先生には負けないよ」
「向こうは相手にもしてなそうだけどな」

 チョコが着替えたので俺の目的は果たした。
 チョコは少し悪寒がするとのことでそのままベッドで休むことになり、俺は教室へ戻った。
 頭痛か脳震盪で保健室に行ったヤツが戻ってきて、どうして付き添いの明路が戻って来ないのか先生に問われたが、そこはちゃんと事情を説明した。クラスメートからは「なんか変なことでもしてきちゃったんじゃないのー」とからかわれたが、遠からず当たっていることもあって沈黙を貫くことにした。
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