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朝陽ヨル

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一章〈love turnⅡ〉~意外な一面とゴムの味~

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「さぁ着いた! 鎌倉大仏! チョコ、大仏だ!」
「あーはいはい」

 はしゃぐなって……お前メチャクチャ目立ってんぞ

「チョコ、一緒に写真撮ろう?」
「は? いや、俺は……」
「ほらほら笑って……ピース!」

 パシャッ
 いきなり写真を撮られた。反射的に真顔にはならなかったハズだが。
 ……ぜってー顔引きつった……

「じゃあ買い物行ってくるよ。楽しみに待ってて」
「おう……」

 有馬は颯爽と目当ての店へ入っていった。
俺は適当に座る場所を見つけて座って待つことにした。

 楽しみに、か……。せっかくこんな電車乗り継いでまで来たんだし、もっと楽しんだ方がよかった気がする。変にアイツとか周りの人を気にしたりとか……そんなのヌキにして。もっと……

「はぁ……」
「チョーコ!」
「なんだよ、早……ぶっ!!」
「凄く良いだろう!?」

 ほんの数分で戻ってきた。くぐもった声でも確かに有馬の声だとわかり顔を上げたら、そこにいたのは。

「仏様のご尊顔だ!」

 大仏のマスクを被った男がいた。
 だ、大仏のマスクとか……

「……~~~~ッ、ははははっ! な、なんつーモン買ってんだよ!」

 こんなんゼッテー笑っちまうだろ……!

「これは俺のコレクションさ! ずっと買いたかったんだ」
「はぁ~~へぇ~~、コレクションとかよくわかんねえけど、良かったんじゃねぇの?」

 あ。なんか、今……ちょっと楽しいかも……。スゲー自然と笑えた気がする

「………」
「……?」

 何も言わねぇ。どうしたんだ? マスク被っててよくわかんねぇけど……下向いて……マスクを取るのか? …………まさか

「……ちょ、チョコ……コレ、抜いて……抜け、ない……っ」
「はぁっ!? おま、このバカッ!」

 思いっきり大仏の頭を引っ張った。抜けたからいい。ただ、二人してその場から勢い余ってぶっ飛んで尻餅ついて、周りにいた観光客がこっち見て笑ってきたり指差してきたりしたのがスゲェ恥ずかしい。

「あ、ありがとう、チョコ」
「ッ~~~か、帰んぞバカッ!!」
「チョコ!?」

 は、恥だ!! あんな大勢の前で転んで目立って、子供みてぇにはしゃいで!
 恥ずかしすぎて、俺はひたすら駅に向かって歩いた。振り向きもせず、ただただ進んだ。
 あんなヤツ知るかっ! クソッ!



✿✿✿✿✿



 ーーーー駅にて。

「チョコ、待って!」
「あ゛?」
「ごめん、恥ずかしかった? チョコの顔見れば分かるよ」
「っ……な、んで、んなこと……」
「だって涙目だし」
「!」

 慌てて追いかけてきた有馬は息を切らしている。
 罪悪感を感じないといえば嘘になるが、コイツの言葉を聞いたらまた恥ずかしさが込み上げてきた。目頭が熱くて、思い切り目を擦って、赤くなるくらい強く。

「……目立つのは……嫌い?」
「あ……当たり前だ!!」
「そっか……本当にごめん」

 頭を下げてそう言ってきた有馬。タイミングがいいのか悪いのか電車がきた。その電車に乗って座ると、俺は疲れてたのか目が重くなり、都合よく眠ってしまった。



✿✿✿✿✿



 途中で何度か起こされながらやっとのことで戻ってきた。電車から降りて、帰り道が同じ方向らしく、不本意ながら隣を一緒に歩く。

「あぁ……今日は楽しかった。一日があっという間だったよ」
「………疲れた」

 ねみぃ……けど、でもまあ、楽しかった気がする。ビクついた生活から少し離れることが出来た。そんな気がした。電車で無防備に寝るなんて今まであり得なかったから。

「……またどこか行きたいな」
「………」

 どこか人が少ねぇ所なら行ってやらないこともねぇかもな

「なぁ、チョコ」
「ふぁ~、あー……ああん?」

 ヤッベ、ちょーねみぃ。あれ、なんだよ……やたら真面目な顔して……

「お前さ、本音を隠してないか?」
「……は?」

 なんだ? 突然、なんか………嫌な感じする……

「本当は、俺のこと嫌いなんだろう?」
「な……、何言って……」
「デートに誘っても強制とか脅しだって言うし、早く帰りたいって言ってたもんな」

 そりゃ思ってたけどよ……。バラされたくなかったらデートしろとか、そういう脅しだろって……

「あんな恥ずかしい思いをさせちゃったしな」
「っ……あ、あれはわざとだったのかよ……!」
「わざとじゃないよ。けど……俺といると……、今後も目立ちそうだから……」

 抜けねえとか言ってスッ転んで悪目立ちはした。腕舐めてきたり気持ち悪いこともされた。ところどころ変な妄想してて引いた。けど……………さっきからなんだよ。苦笑いしてそんな話……これじゃ、まるで……

「……チョコ、ちょっとだけお願い。目を閉じて」
「は、はぁ?」
「お願いだから」
「っ……」

 寂しそうな顔で『お願い』なんて言われたら、そうせざるを得ない。おとなしく目を閉じると、ガサゴソと袋の擦れる音が聞こえた。

 音が止んだ……んん!??

「ん!! ……っぁ……て、テメェッ!!」
「ごめん、もう触らないから」
「おい待てコラァッ!!」

 有馬は走り去っていった。追いかけようにも疲れていてそんな気力も湧かない。それにこっちも混乱している。一瞬だった。ほんの一瞬。
 
「はぁ~~~~……マジで意味わかんねぇよクソがッ!!」

 大仏マスクでキスしてくるとか!! 俺の初は大仏かよ!!

「いやチゲェ、そうじゃねぇ……そういうんじゃなくて」

 もっと……もっと大事なモン、なくなった気がする……
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