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朝陽ヨル

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一章〈love turnⅡ〉~意外な一面とゴムの味~

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「………コレ、お前一人で食う気?」
「いやいや、チョコと二人で」

 どうやら最初の注文時に天ぷら蕎麦膳以外に色々と頼んでたらしい。まだ蕎麦も残ってるのに、有馬が同時にもう持ってきていいとか言ったもんだから、店員がいそいそと運んで来た。抹茶アイス、葛餅が二つずつ。それに加えてあんみつと、ところてんも二つずつある。あまりにデザートの量がおかしい。

「大食い選手権みてえになってっけど……」
「いい例えだねぇ! あの番組楽しいよな」
「呑気に言ってる場合じゃねえだろ。まあ菓子だから食えねぇこともねぇかもしんねぇけど」
「チョコの祝いだからどんどん食べていいよ」

 ……はぁ。何が祝いだ。同意したってだけで祝うようなことじゃねえだろ。本当変わったやつだ。よくわかんねぇ

「……溶けちまうから、先アイス食うわ」
「うん」

 ズルズルズルズズー……

「ごちそうさま」
「食べんの早くね!?」

 有馬の蕎麦が一瞬で消えた! いや、実際一瞬じゃねえけど、俺がアイスを何口かつついてる間にまだ半分以上あった蕎麦が無くなってる。スゲー……

「そうかな?」

 頼んでまだ五分くれぇしか経ってねぇけど……
そりゃ美味いから進むが……にしたって早ぇな。俺も食べねぇと……アイスはまた後で蕎麦食おう。伸びたらマズいし
 ズルズル……ズルズル……
 イマイチ上手く蕎麦を啜れないでいる。それは視線がなんとなく気になるからだ。有馬が食べるのを止めて見てくる。

「……見てねぇで食えよ」
「いやさ、俺食べるの早いみたいだし、先食ったらもっと早く終わっちゃうだろう?」
「……ゆっくり、食えば、いいだろ……」

 もぐもぐもぐもぐ、ゴクン
 しっかり噛んで飲み込む。俺は食べるのがあまり速くない。

「チョコが食べてるのをゆっくり眺めて楽しむのもいいなって思って」
「ゴホッ、ゴホッ……!」
「わっ、大丈夫?」
「……て、テメェこそ大丈夫かよ…」

 頭が。何を見てそんな言葉が出てくんだよ。食べてるの見て楽しむとか悪趣味だろ。それに俺、どう見ても男だよな? ……あ、思い出した。コイツ、ホモだった

「問題ありまくりじゃねぇかぁあッ!」

 がっつり頭を落として下を向き、畳目掛けて心の内を思い切り吐露した。

「チョコ!? 何にそんな悶えてるんだ!?」
「悶えてねぇ!」

 顔を上げて残りの蕎麦を啜っていく。
 もぐもぐもぐもぐもぐもぐ……ゴクン
 よし、蕎麦は終いだ。次はこのあんみつか……こんだけ菓子食ったら胃もたれしそう……

「待ってました! はい! チョコ、あーん」
「………」

 あんみつを乗せたスプーンを突き出してくる。真顔でそのスプーンを見ながら自分のあんみつをつつく。
  なにをやってんだこのバカは

「チョコ! スプーンから落ちちゃうよ!」
「自分で食えこのバカッ!」

 これの為に大量のデザート頼んだのかよ。くっっだらねぇ!

「えー? じゃあチョコが食わせてよ」
「はぁ?」
「あー」
「………」

 ……………………………………………………

「いつまで口開けてんだよ」
「チョコがあーんしてくれるまで」
「ガキかテメェは」

 あ゛ー……座敷で端だからまだ他の客からは見えにくいし、とっととやって終わらせるか……コイツ引かなそうだし

「ほらよっ!」
「んぐっ!? ゴホッゴホッ……!」

 ヤベェッ、勢いつけすぎた!

「あ……その……」
「っえふ……ふぅ~……ふふふ……チョコは……、強引なんだな……」

 ………あ?

「初めてで強引とか、チョコ……もっと優しくしてくれよ……」
 
 涙目になりながらもちょっと嬉しそうに呟いている。
 ……変態トークが始まった。心配しなくてもこれはまったく平気だな
 あんみつの後はところてんと葛餅、溶けかけのアイスを一気に平らげた。やっぱり少し胃がもたれているように感じる。
 げふ……やっと食い終わった……。途中でギブアップして、食ったのほとんどコイツだけど。よく食えんな……俺が食細いのかもしれねぇが。コイツ顔の割に大食いなのか?

「はぁ~やっぱり食後のデザートは美味いねぇ」
「あーそうかよ……良かったな」
「デザートを食べるとまた空いてくるから不思議だよ」
「そら確かに不思議だな……」

 どんだけ食う気だよ、そんな食うから身長伸びたのか? 俺ももう少し食おうかな……
 身長が伸び悩んでいるのは食事かも、だなんて懸念を抱きながら、出された温かい蕎麦茶を飲んで休憩した。

「さて、腹休めたし行くか?」
「ああ……」
「会計お願いします」

 この店高そうだよな……外観とか内装とかいかにも高級って感じだし。

「チョコ、行くよ」
「ああ。……って、会計は!?」
「え? 済ませたよ」
「いや、俺の分!」
「こういう店は分けられないから一括で払ったよ。大丈夫、ここのサービス券持ってたから」

 ぱちん、と。女子が見たら卒倒しそうな薄ら寒いウィンクなんかしてきて、有馬は先に店を出ていった。
 交通費とかさっきから払ってもらってばっかじゃねぇか。アイツも鎌倉初めてなんだろ? サービス券とかあるわけねぇじゃん。カッコつけやがって。………まっ、強制デートならアイツが払うの当然……

「…………」

 ……強制、とか思ってんの……俺だけか……? デートとか言って浮かれて……デートって、カッコつけるもん……かもしれねぇし

「チョコやーい、来ないとはぐれるよ~?」
「え、あ、ああ……」

 ……なんか、またモヤモヤしてきた……

「大仏楽しみだね。ワクワクするよ」
「……だ、大仏で……んなワクワク、とか……なるのか……?」
「ああ、なるともさ! だって仏様だよ? 正に日本の代表じゃないか!」
「そ、そっか……」

 コイツが話してんの、テンションやたら高ぇ時以外は普通……つか、スゲェ天然……、だよな。なんつーか、初めて日本に来てはしゃいでますって感じ

「あの額のおできみたいのとか押したくなるだろう?」
「それは罰当たりじゃね?」
「そうなんだよ……だけど押してみたい衝動に駆られる……。あれは白毫っていって、瞑想した時にあそこから光が放たれて世界を救ったって言い伝えがあるんだよ」
「それ知ってて押したらかなり罰当たりだろ!」

 つか、よく知ってんな。それもパンフレットに書いてあったのか? コイツの頭ん中マジでどうなってんだよ。ドギツイピンクに所々天然っぽさ……パステルカラー入って、頭良さそうな……紫? ……スゲー色合いだなおい
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