99%興味【改訂版】

朝陽ヨル

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一章〈love turn〉~初デートは素直に~

二 有馬視点

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 ああ……自然豊かでいいな鎌倉。薄汚れた東京の空気とは全く違う……いや空気で考えたらもっと山とか田舎に行った方が良かったかな? うーん……だけど欲しい物は鎌倉にありそうだし。……まあいっか。チョコがいればいいし。チョコがいることに意味があるんだ。

 外を眺めていたら看板に鎌倉の文字が。

「チョコ、次だよ鎌倉」
「……知ってる」
「なっなんだって!? 初めて来たのに鎌倉の場所がわかるなんてさすがはチョコ!」
「今アナウンスしてただろが」
「お、おー気づかなかったよ。ついチョコに夢中で」

 あ、またスゴイ熱烈な視線を……

「そんな目で見られたら俺、興奮しちゃうだろ?」
「黙れ変態!!」
 
 ぷしゅぅ……
 
 電車が開い……あ……チョコが先に行ってしまった。きょろきょろして迷子みたいだ可愛いな!
キョドってる………ああ……こんな人が多いのに一人で行ったらぶつかって……

「ぁぅ……っ」

 かっ……! 触れたトコ押さえて顔赤らめて!
かわいいじゃないかああああああっ!!!!

「はぁ、はぁ、だ、ダメじゃないかチョコ、そんな早く行っちゃ~」
「う、うるせぇよ……! その荒い息づかい何とかなんねぇのかよ」

 そのツンツンがまたいい! 俺の萌をくすぐるその仕草は狙ってんの!?

「とっとと行くぞ」

 そう言ってまた足早に進もうとしているチョコ。 

「なんだ、チョコも鎌倉楽しみなんじゃないか」
「っ、チゲェし!! 早く終わらせて帰りてぇんだよ!」
「あははは、時間はたっぷりあるんだよ? 急がなくても観光名所は逃げないって」
「買い物してとっとと帰るんだろ」
「言ったじゃないか。デートだって」
「……まあそんなこと言ってたが……」

 ちょっとしょんぼりしてる。まるでご主人様が見当たらなくなった仔犬のようだ。でもそんなに早く帰りたいのか……

「もしかして今日……他に用事あった?」
「………ねぇ、けど」
「けど、俺とデートが嫌?」
「ッ! ………んなこと、自分で言ってんじゃねぇよ。嫌、つか……面倒……つかっ! テメェが脅さなければ……」

 脅す? なんのことだろう?

「脅してなんかないよ。いつ俺がそんなこと」
「あん時バラすとか……あ゛あっ……んなことグダグダ言ってねぇで行くんだろ? 鎌倉!」
「ああ……うん」

 チョコ……俺が……俺のことが

「突っ立ってねぇで行くぞ」
「あっ……待ってくれよ」

 嫌い、なのか……?

 もう後ろを振り返らないで改札口へ真っ直ぐに向かっていく。
 そんなチョコの後ろを不安が過りつつもついていく俺。ただ俺はチョコとデートを楽しみたい、楽しんでもらいたいって思っているだけなんだけどな。
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