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朝陽ヨル

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一章〈communication〉~可愛いお前に直球勝負~

拓視点

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 だりぃ……。何がだりぃって、学生なら誰でも思うんじゃね? 昼食った後の授業……ねみぃ……

「ふぁ……あ~……」

 ヤベェ寝そう
 ひゅるるる……コツン

「いてっ!?」

 何だ? 何か当たった! ……あ? 紙飛行機? 顔上げたくねぇな……大体予想つく。どうせアイツだろ……
 ひゅるるる…………グシャッ!
 飛んできた紙飛行機を片手で握り潰した。
 だから飛ばしてくんなって! 思わず掴んじまっただろが! やたらいい笑顔で手振ってくるし……誰が返してやるか。……ん? なんかジェスチャーして……紙……見ろってことか?
 カサッ
 キレイにきっちり折ってる。ムダに器用なヤツ……。で、何々……

『寝顔もキュートだな』
 
 グシャグシャグシャグシャペイッ!
 残念な顔すんな! んなこと書いてあったら誰でも捨てるわッ! あんなものグシャグシャに丸めてゴミ箱へ一直線だ。あー……ねみぃ。つかなんだ、ねみぃ以外にこう……ボーッとなるっつーか……

「---ーということになります。では、これから二人組みになって下さい」

 授業をまともに聞いてなかったが、教師が指示を出している為何となく理解する。
 はぁ、二人組み? 現国の時間で対話術がどうのって、道徳の授業かよ

「チョーコ!」
「うおっ!?」

 有馬が迷わず隣にやってきた。隣の席のやつもいつの間にか移動していたらしい。

「て、テメッ、何でこっち来てっ」
「動いていいって言われたからな。一緒にやろ?」
「はっ! 誰がテメェなんかと」
「でももう決まったみたいだよ?」

 うわ……マジか
 周囲の反応を見る限り、確かに丁度ペアが出来て収まっている様子だ。

「よろしく」
「……ふんっ」

 またやたらといい笑顔を向けてくるコイツの顔なんざまともに見ないで顔を逸らしてやった。
 対話術とかなんだよ……コイツ来たせいで目ぇ覚めちまった
 そもそもこの授業自体に興味がない。勉強はさほど嫌いではないが、この授業内容は気が乗らない。

「対話術とはコミュニケーションの一つです。相手の目を見て話してみましょう」

 何がコミュニケーションだよ。目ぇ覚めちまったしやるけど
 相手の目……?
 チラッ

「っっ!! ちち、近ぇよっ!!」

 隣の席に座っていたハズの有馬の顔がドアップに映る。覗き込んできている。

「いや、だって、目を見るってこういうことだろう?」
「距離考えろ馬鹿ッ!」
「えー。そのクリックリした目を間近で見られるのがいいのに」

 俺は危険を察知しガタガタと椅子ごと後退って距離を取った。

「表情も大切ですよ。笑っている、怒っている、悲しんでいる、楽しんでいる。表情を観察するだけで色々な感情を読み取ることが出来ます」

 表情……コイツ、表情は豊かだよな……

「チョコ、笑って」
「え……いきなり笑えとかムリ」

 普段から笑わないのに、突拍子もなく笑うことなんか不可能に近い。真顔で返答すると、有馬は知ってたと言わんばかりの顔で見てくる。
 コイツは笑顔大得意だよな。ほら、無駄にいいキラキラ笑顔するし

「俺、チョコの素敵な笑顔が見たいな」

 んな笑顔向けてタラシみたいなこと言ってくんな! 鳥肌立つだろがっ!

「ムリだって言ってんだろ」
「うーん……じゃあ笑えること考えとく。楽しいこと言ったら笑ってくれるだろう?」
「え。……あ、ああ……まあ、そう……かもな」

 ……コイツなりの配慮……? わけわかんね……俺の笑った顔見たからって何も無いだろ。この授業だって、感情を読み取る? 表情なんざ表面だけで、内で何考えてるかなんてわかんねぇのに。作り笑いってのがいい例だ。人の本当の感情なんて自分しかわかんねぇ。だりぃ授業だな……

「では何でもいいので好きなことを話してみましょう。相手によって話題の選び方も大切です」
「だってさ。俺、チョコの話聞きたいな」
「俺の? 特に話すことねぇけど……」
「じゃあ俺が話していい?」
「ああ」

 なんだ、こいつ意外と真面目に授業受けてんだな。変なヤツだけど委員長だしな

「そうだな……まず可愛い」
「……?」

 何言ってんだこいつ

「見た目は子犬系で、目はクリックリしてる。ちょっと細いけど小さすぎない丁度いい大きさで、よく文句言う声は少し高めで」
「ちょ、ちょっと待て! 何の話してんだよ?」
「え? チョコの話だけど」
「どこがだよ!! 自分の話でもしてろ!!」
「えー、俺のことだよ。俺の好きな人の話してるのにー」
「……ッ!?」

 またコイツはサラッとほざきやがって……ッ

「えー、対話術とはコミュニケーションの一つと伝えましたね。他にもコミュニケーションの代表は『触れる』ことですね」

 は? 触れる……だと? ふざけんな。何がコミュニケーションだ。触れて安心? 毎日こっちはそうならないようビクついて生きてんのによ。あ゛ぁ……イライラする……。いや、イライラっつか、なんだ、ボーッとして……クラクラ……?

「チョコ? チョコ! 顔色悪いじゃないか!」
「……っ」

 大声出すな……頭に響く……

「先生! 明路が具合悪そうなので、保健室へ連れて行ってもよろしいでしょうか?」
「えっ。ああ、頼んでもいいかしら……」

 ……初めて、まともに呼ばれた。今はんなことどうでもいいけど。

「よし、許可を得たなら早速保健室へlet's goだ!」
「ぁっ……んっ……ちょっ、はな、せっ!」

 抱えるとか何考えて……つか一人で行けんだよ……

「授業の始めからフラフラしてただろ? 今は俺に任せて」
「……っ」

 始めから? ……んだよ……っ、ずっと見てたのかよ。具合悪くてダルくてねみぃの気づいてたってことか? あんまり暴れると擦れるし……今だけおとなしくしてるか……

「………頼んだ」
「うん」

 簡単な短い返事をしたコイツの表情……なんつーか……真面目な表情……してた。さっきまでのヘラヘラはどこ行ったんだよ。こんな顔だけ見て感情を読み取るとか、絶対無理に決まってる


 
✿✿✿✿✿



 ---ー保健室。
 ガラッ

「失礼します。……白鳥先生は留守か……」

 こんな誰もいねぇ保健室も珍しいな。大抵いつも誰かはいるのに

「チョコ、下ろすよ?」
「ああ……」

 ベッドが冷たい……これだけでもちっとは楽だな……
 ぴとっ

「ひっ。な、なんだよ!」

 いきなりでこ触んな! ……変な声出るからやめろっての……

「熱あるかなって。んー……ちょっと温かいかもだな。体温計探してくるよ」
「いいって……早く授業戻れよ」

 言っても探し出すし……

「嫌だ。恋人が苦しんでるのに授業なんておとなしく受けていられないよ」
「……恋人って」

 そういや脅されて、んなワケわからん約束したな。俺もこの間にこいつの秘密を探らねぇといけない。……でもこいつ、脅した割になんも仕掛けてこねぇよな……数日経っても今までとそう変わらねぇ。話しかけてくるようになっただけで、別に……うるせぇけど、うるさいだけっていうか……。いや、油断させてる作戦かもしれねえ

「……心配した。顔色悪くて、フラフラしてて……倒れる前で良かった」

 なんかモヤモヤすんな。コイツがこんな心配してくるとか胸くそ悪ぃ……。違う話題……

「……あ、そういやお前、人の名前覚えるの苦手とか言ってたが覚えてたな。俺の名前」
「……チョコの名前だからね」

 ……あー……ダメだ。何でコイツこんなに俺のこと考えてんだよ

「良い名前だよな……明るいみちを拓く」
「……お前のは、なんか、由来とかあんのかよ?」
「ううん。特には。藍庭あいば有馬ありまって呼びにくいよな」

 ……下の名前だったのか。有馬って。てっきり苗字かと思ってた

「うーん……体温計ないな……」
「いいってのに……ねみぃだけだし、寝てれば治るから」
「そっか、じゃあ、ゆっくり休んでな。何かあったらすぐ呼ぶんだよ? 吹っ飛んでくるから」
「…………ふっ? ……っ、ちょ、おま……吹っ飛んでくるってなんだよ……」

 すっ飛んで来る、なら聞いたことあるが。吹っ飛ぶって誰かに飛ばされるのかよ

「チョコ、笑った」
「あ?」
「チョコの笑顔、初めて見た」

 しまった、うっかり気が緩んだ!
 揺るんだ頬を叩いて顔も気も引き締める。
 
「……う、うるせっ! 早く行けって!」
「やっぱり笑顔が一番可愛いよ」
「ああああーーーーっ!」

 もうコイツの顔なんか見てられない。というかコイツに顔を見せたくなくて布団を被って隠した。

「はははは! 添い寝もサービスするよ」
「いらねぇよバカ!」

 ったく……なんなんだよ。恥ずかしいヤツ。まあ、スゲェ心配してたみてぇだし、一応礼は言っとくか。直接本人には言ってやんねぇケド。…………サンキュ
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