13 / 13
第十三回
しおりを挟む
ーー四年後。
『スーパー戦隊シリーズ三十五周年 新しい試み! 初の女性レッド! ……だって。スゲーじゃん』
電話越しに海人が読み上げたのは新聞記事で、インタビュー雑誌、ニュースでもその話題が取り上げられていた。
「ありがとう」
『夢、叶えたんだな』
「うん」
『なんだよ、あんまり嬉しくなさそうだな』
「嬉しいよ! ……嬉しいんだけど、なんか本当にこれって自分のことなのかなって実感が湧かないっていうか……」
『そうだよな。予想してたよりも大きく載ってるしな』
「そうなの! まさかこんなにドーンと話題になると思ってなくて!」
『いいんじゃねえの。女優として名前が知られるのはいいことだろ』
「そうだけど……エゴサしてみて賛否両論なんだよね。女がレッドは変とか」
『賛否両論なのはどの作品だってあるだろ? それに、ある意味そういうのも狙いなんじゃねぇの?』
三十五周年のスーパー戦隊シリーズは、七色戦隊ニジレンジャーというタイトルに決定している。コンセプトは『自分の【好き】を他人に決めつけられたくない。自分の色【個性】は自分で決める。マジョリティの圧に負けるな、【個性】で打ち勝て!』というものだ。
「かもね。世の中には色んな人がいる。文句や否定が怖くて本音で話せなかったり、隠したり、嘘を吐かないといけなかったり。そういう人たちに少しでも勇気をあげられたらいいな」
『じゃあ頑張らないとだな』
「うん! あっ、それより百瀬さんの次のドラマ予告観た!?」
『それよりって……ホント百瀬 白椏のこと好きだよな』
「それはそうだよ! だって百瀬さんだよ!?」
『はいはい』
百瀬さんは俳優業に復帰。その際に実は桃色が好きだということを公表すると、桃色=可愛いものが好きというイメージが付いた。ダンディな男性が可愛いものが好きというギャップで話題を呼び、人形や動物などの可愛いものとを掛け合わせたドキュメンタリーやドラマに出演している。
「次のドラマはペット絡みでさ、絶対に感動するやつだよ! 絶対ボロ泣きする~!」
『感動系じゃなくても、カッコいいアクション見たって泣くだろ』
「百瀬さんのカッコよさ満点過ぎて泣ける」
『ははは、そういうところお前は変わらないな』
「海人はなにか変わった?」
『オレはまだまだ勉強中だからさほど変わらないな。親父からも色々学ばせてもらってるよ』
いつも名前で呼んでいてすっかり忘れていたけど、海人の名字は青木。百瀬さんの元マネージャーの青木 颯太さんは海人の父親だった。どうやら海人から、あたしが女優を目指してるとかレッドに憧れてるって聞いてたみたい。
海人は大学で勉強しながら、父親に話を聞いたり直接仕事を見て学んでいる。テレビ業界に興味があるらしい。
「そっか。海人も頑張ってね」
『未来の大物女優に負けないようにな』
「あはは、まずはその一歩を踏み出さないと」
ニジレンジャーが放送されると、スーパー戦隊シリーズは男児向けだが、男児だけでなく、女性がレッドということで女児も、コンセプトのお蔭か大人も視聴するようになった。多様性を謳う今の世の中のニーズに合っていたようで、スーパー戦隊シリーズでは異例の高視聴率を記録した。
そして、スーパー戦隊シリーズが好きで特にシュゴレンジャーが好きというあたしの名前は一躍有名となる。シュゴレンジャーはトレンドワード三位になる程の快挙を達成し再放送された。
シュゴレンジャーの再放送をきっかけに百瀬さんの名前も更に世の中へ知れ渡ることとなる。
シュゴレンジャーを広めた立役者としてあたしが、功労者として百瀬さんがトークバラエティ番組にゲストとして一緒に出るという夢のような時間も。
ーーたくさん努力して、運も味方してくれて、色んな人の協力があったからあたしはこうしてレッドになる夢を叶えることが出来た。一度は諦めた夢だったけど、また夢を追いかけて本当に良かった……。
「スーパー戦隊最高!!」
END
『スーパー戦隊シリーズ三十五周年 新しい試み! 初の女性レッド! ……だって。スゲーじゃん』
電話越しに海人が読み上げたのは新聞記事で、インタビュー雑誌、ニュースでもその話題が取り上げられていた。
「ありがとう」
『夢、叶えたんだな』
「うん」
『なんだよ、あんまり嬉しくなさそうだな』
「嬉しいよ! ……嬉しいんだけど、なんか本当にこれって自分のことなのかなって実感が湧かないっていうか……」
『そうだよな。予想してたよりも大きく載ってるしな』
「そうなの! まさかこんなにドーンと話題になると思ってなくて!」
『いいんじゃねえの。女優として名前が知られるのはいいことだろ』
「そうだけど……エゴサしてみて賛否両論なんだよね。女がレッドは変とか」
『賛否両論なのはどの作品だってあるだろ? それに、ある意味そういうのも狙いなんじゃねぇの?』
三十五周年のスーパー戦隊シリーズは、七色戦隊ニジレンジャーというタイトルに決定している。コンセプトは『自分の【好き】を他人に決めつけられたくない。自分の色【個性】は自分で決める。マジョリティの圧に負けるな、【個性】で打ち勝て!』というものだ。
「かもね。世の中には色んな人がいる。文句や否定が怖くて本音で話せなかったり、隠したり、嘘を吐かないといけなかったり。そういう人たちに少しでも勇気をあげられたらいいな」
『じゃあ頑張らないとだな』
「うん! あっ、それより百瀬さんの次のドラマ予告観た!?」
『それよりって……ホント百瀬 白椏のこと好きだよな』
「それはそうだよ! だって百瀬さんだよ!?」
『はいはい』
百瀬さんは俳優業に復帰。その際に実は桃色が好きだということを公表すると、桃色=可愛いものが好きというイメージが付いた。ダンディな男性が可愛いものが好きというギャップで話題を呼び、人形や動物などの可愛いものとを掛け合わせたドキュメンタリーやドラマに出演している。
「次のドラマはペット絡みでさ、絶対に感動するやつだよ! 絶対ボロ泣きする~!」
『感動系じゃなくても、カッコいいアクション見たって泣くだろ』
「百瀬さんのカッコよさ満点過ぎて泣ける」
『ははは、そういうところお前は変わらないな』
「海人はなにか変わった?」
『オレはまだまだ勉強中だからさほど変わらないな。親父からも色々学ばせてもらってるよ』
いつも名前で呼んでいてすっかり忘れていたけど、海人の名字は青木。百瀬さんの元マネージャーの青木 颯太さんは海人の父親だった。どうやら海人から、あたしが女優を目指してるとかレッドに憧れてるって聞いてたみたい。
海人は大学で勉強しながら、父親に話を聞いたり直接仕事を見て学んでいる。テレビ業界に興味があるらしい。
「そっか。海人も頑張ってね」
『未来の大物女優に負けないようにな』
「あはは、まずはその一歩を踏み出さないと」
ニジレンジャーが放送されると、スーパー戦隊シリーズは男児向けだが、男児だけでなく、女性がレッドということで女児も、コンセプトのお蔭か大人も視聴するようになった。多様性を謳う今の世の中のニーズに合っていたようで、スーパー戦隊シリーズでは異例の高視聴率を記録した。
そして、スーパー戦隊シリーズが好きで特にシュゴレンジャーが好きというあたしの名前は一躍有名となる。シュゴレンジャーはトレンドワード三位になる程の快挙を達成し再放送された。
シュゴレンジャーの再放送をきっかけに百瀬さんの名前も更に世の中へ知れ渡ることとなる。
シュゴレンジャーを広めた立役者としてあたしが、功労者として百瀬さんがトークバラエティ番組にゲストとして一緒に出るという夢のような時間も。
ーーたくさん努力して、運も味方してくれて、色んな人の協力があったからあたしはこうしてレッドになる夢を叶えることが出来た。一度は諦めた夢だったけど、また夢を追いかけて本当に良かった……。
「スーパー戦隊最高!!」
END
0
お気に入りに追加
2
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
『10年後お互い独身なら結婚しよう』「それも悪くないね」あれは忘却した会話で約束。王子が封印した記憶……
内村うっちー
青春
あなたを離さない。甘く優しいささやき。飴ちゃん袋で始まる恋心。
物語のA面は悲喜劇でリライフ……B級ラブストーリー始まります。
※いささかSF(っポイ)超展開。基本はベタな初恋恋愛モノです。
見染めた王子に捕まるオタク。ギャルな看護師の幸運な未来予想図。
過去とリアルがリンクする瞬間。誰一人しらないスパダリの初恋が?
1万字とすこしで完結しました。続編は現時点まったくの未定です。
完結していて各話2000字です。5分割して21時に予約投稿済。
初めて異世界転生ものプロット構想中。天から降ってきたラブコメ。
過去と現実と未来がクロスしてハッピーエンド! そんな短い小説。
ビックリする反響で……現在アンサーの小説(王子様ヴァージョン)
プロットを構築中です。投稿の時期など未定ですがご期待ください。
※7月2日追記
まずは(しつこいようですが)お断り!
いろいろ小ネタや実物満載でネタにしていますがまったく悪意なし。
※すべて敬愛する意味です。オマージュとして利用しています。
人物含めて全文フィクション。似た組織。団体個人が存在していても
無関係です。※法律違反は未成年。大人も基本的にはやりません。
僕を待つ君、君を迎えにくる彼、そして僕と彼の話
石河 翠
現代文学
すぐに迷子になってしまうお嬢さん育ちの綾乃さん。
僕は彼女を迎えにいくと、必ず商店街のとある喫茶店に寄る羽目になる。そこでコーヒーを飲みながら、おしゃべりをするのが綾乃さんの至福の時間なのだ。コーヒーを飲み終わる頃になると、必ず「彼」が彼女を迎えに現れて……。
扉絵は、遥彼方さんのイラストをお借りしています。
この作品は、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
夏服に着がえて
あおみなみ
青春
片思いの彼のこと、ほかの中学校に行った親友、両親のケンカ…15歳なりに、それなりにいろいろあります。
ある平凡な女子中学生「私」の、めくるめくひと夏の経験(深い意味はない)
Y/K Out Side Joker . コート上の海将
高嶋ソック
青春
ある年の全米オープン決勝戦の勝敗が決した。世界中の観戦者が、世界ランク3ケタ台の元日本人が起こした奇跡を目の当たりにし熱狂する。男の名前は影村義孝。ポーランドへ帰化した日本人のテニスプレーヤー。そんな彼の勝利を日本にある小さな中華料理屋でテレビ越しに杏露酒を飲みながら祝福する男がいた。彼が店主と昔の話をしていると、後ろの席から影村の母校の男子テニス部マネージャーと名乗る女子高生に声を掛けられる。影村が所属していた当初の男子テニス部の状況について教えてほしいと言われ、男は昔を語り始める。男子テニス部立直し直後に爆発的な進撃を見せた海生代高校。当時全国にいる天才の1人にして、現ATPプロ日本テニス連盟協会の主力筆頭である竹下と、全国の高校生プレーヤーから“海将”と呼ばれて恐れられた影村の話を...。
もしもあの世とこの世でSNSがつながるなら。
雪水
青春
あの世とこの世、決して交わることのない2つの世界がもしSNSを通して繋がったなら、というお話。
女の子の名前は春香、男の子の名前は結城。男の子視点でお話が進んで行きます。
途中嘔吐表現が含まれます。ご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる