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十四話 わかり合いたい気持ちと想い
五
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「マミちゃんはなんでいつもエラそうにしてるの? パパとママはエラいかもしれないけど、マミちゃんがエラいわけじゃないよね?」
「はあ? なにそれ。バカにしてるの? このっ」
「うっ……!」
「主!」
愛美に前から両肩を突き飛ばされて尻もちを着いた。クックが近寄るが、ココロは立とうとせずにその座った姿勢のまま愛美を見上げている。
愛美は罪悪感からかそんなココロに見られて怯んでいる。
「人のどりょくを自分がやったみたいに言うのはかっこわるいよ」
真顔で真っ直ぐに愛美を見据えて伝えた。
するとじわじわと愛美の目尻には涙が溜まっていく。
「……んで、……なんでぇ……なんでっ! そんなこと言うのぉ……! あたしのことぜんぜんしらないくせに……わるく言わないでよッ!」
涙ぐみ、強い語調で言い切ると終いには本格的に泣き出してしまう。
「じゃあもっとおしえて」
「…………え?」
「マミちゃんのことぜんぜんしらないから、もっとおしえて。わたしも、わたしのことおしえる。それでちゃんとおともだちになろう?」
真顔だったココロの顔は自然と柔らかく微笑みに変わる。
ココロのそんな顔を初めて見た愛美は目を丸くしたり、渋面を作ったり、戸惑ったりと複雑な気持ちとなってしまい何も答えることが出来なかった。
黙っている愛美に返事待ちのココロ。互いに言葉を発さずゆっくりと時間が流れていく。
ココロはどうしたもんかと考えながら立ち上がろうとしっかり地面に足底を着いて前のめりになった途端、愛美が手を伸ばしてきた。ココロはその手をつかんで立ち上がる。
「マミちゃん、ありがとう」
「……いいよマミで。あたしもちゃん付けしないから。……ともだち……なるんでしょ」
目を逸らしてぶっきらぼうに話す愛美。
もしかしたらお友達なろう作戦は成功したのかもしれない。言いたかったこと、伝えたかったことを言えた。だからすっきりした気分で緊張せず笑顔になれた。
「えっわっ、なななに!?」
ココロは愛美を抱きしめる。これは夏菜から教わったこと。まだ上手に笑顔になるには難しいから。
「うれしいって時はこうしたらいいよって教えてもらったの」
「……あっそ」
突然の出来事に慌てる愛美だったが、ココロが『うれしい』と言っているのだから嬉しいならいいかと満更でもなく、愛美からもココロを抱きしめる。しかし何か言いたげなクックにじっと見つめられると居心地が悪く「もういいでしょっ」と言って離れた。
「パパママの為に色ンナコトシテル、マミは努力家で偉イ……と、フランソワ言ッテマス」
「色んなこと?」
「パパとママのおてつだいしてる。会社の人とかおきゃくさんが来たら、パパのじまんだって言ってもらえるように、あたしがんばっておもてなしするの」
系列会社のシャンプーの使い心地や宣伝、お菓子の味や見た目の感想、子供たちの評判などを伝えているとのこと。
「へえ、すごいね。かっこわるいって言ったのごめん。マミ、かっこいい」
「そうだよ、あたしがんばってるんだから! ……かっこいいって言われるのはじめてだけど、ちょっとうれしい」
「キィキェーッ」
「マミ、可愛イ、カッコイイと言ッテマス」
「そうなの? えへへ、フランソワもチョーかわいくてかっこいいよ」
満面の笑顔でフランソワに抱きつく愛美。
フランソワも長い首やくちばしを愛美の頭に擦りつけたり押し当てている。花型ピヨの愛情表現とされている行為だ。
「うれしい時……こうやってぎゅってしたくなるものなんだね。なんかふしぎ」
「ぎゅってした人にうれしいってつたわるの、まるでまほうみたいだよね」
「まほう? それステキ!」
自分だけが思っていた魔法。元気にしてくれる祖父の言葉の魔法、夏菜から教えてもらったハグして嬉しさを伝えられる魔法。ココロにとってそれらを他の人にも共有できて、共感されたことが嬉しかった。
「……ねえ、たまごからふかさせたって本当?」
「ん? うん、本当だよ」
「そっか……あたしはたまごからふかさせてないの」
「え? ヒナからいっしょにいるって……」
「ヒナだったけどすぐに小ビナになったよ。だからね、ココロがたまごからふかさせてそだててるって言ったから、なんかすっごくまけた~! って思ったの」
「そうだったんだ」
「ココロもフランソワのことみんなみたいにきれいって言ってくれたけど、ココロの…………クックさん見たら本当にくやしくなって……」
「どうしてくやしいの?」
「だってめずらしいもん。そんなしんかけいたい見たことないし」
クックの進化形態は今までに見たことも聞いたことがない新しいものだとピヨ専門医から言われて珍しいことは知っている。だが珍しいからといって悔しいという愛美の気持ちはわからない。
「フランソワより人気出ちゃうかも……」
「クックさんはここの公園だと人気だけど、フランソワちゃんは色んなところで人気でしょ? どっちの方が人気なんてわかんないし、どっちも人気でいいと思う。ピヨさんみんな人気だもん」
「…………そっか。それもそうだよね」
対抗心や嫉妬のような気持ちが完全に払拭されたわけではないが、ココロへの気持ちをこれから少しずつ切り替えていけそうだ。
それから天海宅へ戻り、愛美は祖父に騒ぎ立てたことを素直に謝った。
祖父は帰ってきた二人の表情や雰囲気が柔らかく変化していることに気づき安堵する。
「帰ってきたことだし、かき氷食べるか。イチゴとメロンどっちがいい?」
「「イチゴ!」」
「キィッ」
ココロと愛美の息がぴったり合い、フランソワも嬉しそうに鳴いている。
人数分のかき氷を作り、ピヨには麦茶を与えて和やかな時を過ごす。外はまだ明るいが時刻は夜となり、家から迎えの車を呼んで愛美たちは帰っていった。
「はあ? なにそれ。バカにしてるの? このっ」
「うっ……!」
「主!」
愛美に前から両肩を突き飛ばされて尻もちを着いた。クックが近寄るが、ココロは立とうとせずにその座った姿勢のまま愛美を見上げている。
愛美は罪悪感からかそんなココロに見られて怯んでいる。
「人のどりょくを自分がやったみたいに言うのはかっこわるいよ」
真顔で真っ直ぐに愛美を見据えて伝えた。
するとじわじわと愛美の目尻には涙が溜まっていく。
「……んで、……なんでぇ……なんでっ! そんなこと言うのぉ……! あたしのことぜんぜんしらないくせに……わるく言わないでよッ!」
涙ぐみ、強い語調で言い切ると終いには本格的に泣き出してしまう。
「じゃあもっとおしえて」
「…………え?」
「マミちゃんのことぜんぜんしらないから、もっとおしえて。わたしも、わたしのことおしえる。それでちゃんとおともだちになろう?」
真顔だったココロの顔は自然と柔らかく微笑みに変わる。
ココロのそんな顔を初めて見た愛美は目を丸くしたり、渋面を作ったり、戸惑ったりと複雑な気持ちとなってしまい何も答えることが出来なかった。
黙っている愛美に返事待ちのココロ。互いに言葉を発さずゆっくりと時間が流れていく。
ココロはどうしたもんかと考えながら立ち上がろうとしっかり地面に足底を着いて前のめりになった途端、愛美が手を伸ばしてきた。ココロはその手をつかんで立ち上がる。
「マミちゃん、ありがとう」
「……いいよマミで。あたしもちゃん付けしないから。……ともだち……なるんでしょ」
目を逸らしてぶっきらぼうに話す愛美。
もしかしたらお友達なろう作戦は成功したのかもしれない。言いたかったこと、伝えたかったことを言えた。だからすっきりした気分で緊張せず笑顔になれた。
「えっわっ、なななに!?」
ココロは愛美を抱きしめる。これは夏菜から教わったこと。まだ上手に笑顔になるには難しいから。
「うれしいって時はこうしたらいいよって教えてもらったの」
「……あっそ」
突然の出来事に慌てる愛美だったが、ココロが『うれしい』と言っているのだから嬉しいならいいかと満更でもなく、愛美からもココロを抱きしめる。しかし何か言いたげなクックにじっと見つめられると居心地が悪く「もういいでしょっ」と言って離れた。
「パパママの為に色ンナコトシテル、マミは努力家で偉イ……と、フランソワ言ッテマス」
「色んなこと?」
「パパとママのおてつだいしてる。会社の人とかおきゃくさんが来たら、パパのじまんだって言ってもらえるように、あたしがんばっておもてなしするの」
系列会社のシャンプーの使い心地や宣伝、お菓子の味や見た目の感想、子供たちの評判などを伝えているとのこと。
「へえ、すごいね。かっこわるいって言ったのごめん。マミ、かっこいい」
「そうだよ、あたしがんばってるんだから! ……かっこいいって言われるのはじめてだけど、ちょっとうれしい」
「キィキェーッ」
「マミ、可愛イ、カッコイイと言ッテマス」
「そうなの? えへへ、フランソワもチョーかわいくてかっこいいよ」
満面の笑顔でフランソワに抱きつく愛美。
フランソワも長い首やくちばしを愛美の頭に擦りつけたり押し当てている。花型ピヨの愛情表現とされている行為だ。
「うれしい時……こうやってぎゅってしたくなるものなんだね。なんかふしぎ」
「ぎゅってした人にうれしいってつたわるの、まるでまほうみたいだよね」
「まほう? それステキ!」
自分だけが思っていた魔法。元気にしてくれる祖父の言葉の魔法、夏菜から教えてもらったハグして嬉しさを伝えられる魔法。ココロにとってそれらを他の人にも共有できて、共感されたことが嬉しかった。
「……ねえ、たまごからふかさせたって本当?」
「ん? うん、本当だよ」
「そっか……あたしはたまごからふかさせてないの」
「え? ヒナからいっしょにいるって……」
「ヒナだったけどすぐに小ビナになったよ。だからね、ココロがたまごからふかさせてそだててるって言ったから、なんかすっごくまけた~! って思ったの」
「そうだったんだ」
「ココロもフランソワのことみんなみたいにきれいって言ってくれたけど、ココロの…………クックさん見たら本当にくやしくなって……」
「どうしてくやしいの?」
「だってめずらしいもん。そんなしんかけいたい見たことないし」
クックの進化形態は今までに見たことも聞いたことがない新しいものだとピヨ専門医から言われて珍しいことは知っている。だが珍しいからといって悔しいという愛美の気持ちはわからない。
「フランソワより人気出ちゃうかも……」
「クックさんはここの公園だと人気だけど、フランソワちゃんは色んなところで人気でしょ? どっちの方が人気なんてわかんないし、どっちも人気でいいと思う。ピヨさんみんな人気だもん」
「…………そっか。それもそうだよね」
対抗心や嫉妬のような気持ちが完全に払拭されたわけではないが、ココロへの気持ちをこれから少しずつ切り替えていけそうだ。
それから天海宅へ戻り、愛美は祖父に騒ぎ立てたことを素直に謝った。
祖父は帰ってきた二人の表情や雰囲気が柔らかく変化していることに気づき安堵する。
「帰ってきたことだし、かき氷食べるか。イチゴとメロンどっちがいい?」
「「イチゴ!」」
「キィッ」
ココロと愛美の息がぴったり合い、フランソワも嬉しそうに鳴いている。
人数分のかき氷を作り、ピヨには麦茶を与えて和やかな時を過ごす。外はまだ明るいが時刻は夜となり、家から迎えの車を呼んで愛美たちは帰っていった。
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