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十三話 幼馴染

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「イチヤくんにもクックさんしょうかいしたい」
「兄ちゃん家にいるかな?」 

 弐士騎は自宅へ戻る。
 ココロはランドセルを自室に置き、祖父に弐士騎が近所に引っ越してきたことと、今から弐士騎の家に行くことを伝えて家を出た。
 クックはココロの後ろをぴったりとついていく。 

「ずっと気になってたんだけど、なんで後ろ歩くの? よこに来ないの?」
「主が倒レテシマッタラ支エルからデス」
「よこにいても同じじゃないの?」
「ソウカモシレマセン。後ロデモ横デモ前デモ、主とイラレタラドコデモイイデス。後ロは主を確認シヤスイ、安心シマス。ダカラ後ロイマス」
「そっか」 

 なんとなく気になっていた疑問だったが、特別な理由が無ければクックがどの位置にいても文句は無い。
 弐士騎の家に着き前で待っていると、壱矢が掲示板が見える道を曲がってやって来るのが見えた。 

「イチヤくん!」
「ココロちゃ……ええっ!?」 

 ココロが家の前にいることよりも、クックの姿を見て驚き動揺している。近寄って行けば若干後ずさるくらい。 

「あのね、ピヨさんのあたらしいしんかけいたいでね、クックさんっていうんだよ。わたしの家ぞくなの」
「ピヨ!? 新しい進化形たい……? こんな人みたいな……でも人にしては大きいか」
「クックさん、イチヤくんだよ」
「壱矢。覚エマシタ」
「しかもしゃべるんだ……。こんなに大きくてこわくないの?」
「はじめて見た時はこわかったよ。でもいまはこわくない。クックさんやさしいから。ヒナの時からずっとやさしいんだよ」
「ヒナから育ててるんだ? すごいね……じゃあ大切な家族なんだね」
「うん」
「……!」 

 ココロが柔らかな微笑を浮かべた。クックを家族と認めてもらえたことが嬉しかったのだろう。
 小さい頃よく見ていたこの笑顔がここニ年程見れなくなっていた。約半年振りに会って何かが変わったのかもしれないと壱矢は思いを巡らす。 

 ガチャン 

「あー兄ちゃん!」 

 家から出てきた弐士騎が駆け寄ってきた。 

「さがしてもいねーって思ったらまだ帰ってなかったのかよ」
「多分そんなに時間変わらないだろ。あ、そうだ、お前ココロちゃんに謝ったか?」
「なにを?」
「身長のこと言ったんだろ? 自分がカッコイイとか思ってても、相手もそう思ってるわけじゃないんだからな。嫌な思いさせたんだからちゃんと謝れ」
「えー」
「えーじゃない」
「…………ごめん」 

 みるみる意気消沈していく弐士騎を見たら許せざるを得ない。 

「もうきょ人って言わないでよ」
「それは言うかも」
「弐士騎!」
「だってきょ人カッコイイじゃん!」

 全くもって何に対して謝ったのか理解していないようだ。
 壱矢もココロも思わず溜め息が出てくる。 

「おれデカくなりたい! クックみてえになる!」
「ワタシデスカ?」
「なあ、どうやったらクックみてえにデカくなる? なんかへんなの食ったか?」 

 変なものを食べた記憶は無い。何を食べて成長したかと聞かれてもピヨ用の餌をメインに食べている為、人間には当てはまらない気がした。考えた末に導き出した答えは。 

「納豆ヨーグルトデス」
「「…………」」 

 予想外の解答にクック以外の三人は渋面をつくっていた。納豆もヨーグルトも単体では好きだとしても混ぜようとは到底思えなかった。もしも本当に納豆ヨーグルトが大きくなる秘訣だとしたら早々に挫けそうだった。
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