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十三話 幼馴染

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 下校の時刻となり普段通り凛々華と一緒に帰っていた。その間気になっていたことが、行く先に弐士騎がいることだ。通学路が同じというだけで話しかけてくるわけではない。弐士騎も仲良くなった他の生徒と一緒にいる。
 いつもの場所で凛々華と別れる。数メートル前にいたはずの弐士騎は知らない内にいなくなっていた。 

「どこかでまがったのかな」 

 先に進むと電柱の影からサッと人が飛び出してきた。 

「わっ!」
「うわっ!? ……ニシキ……なんでいるの」
「お前をおどろかせてやろっかなって」 

 ココロの驚いた顔を確認すると、悪戯が成功して弐士騎は喜々として笑う。 

「お前むかしっからわらわねぇし、おこったりおちこんだり下ばっかむいてるから、おれがどうにかしてやろーってな!」
「いいよ、そんなのしなくて」
「まーまー。家こっちなのか?」
「うん。東町」
「東町? おれも」
「ふーん。そうなんだ」 

 前までは近所だったが、さすがにまた近所ということはないだろうと考えて特に興味を示さなかった。 

「イチヤくんは?」
「しらね。いつも兄ちゃんといっしょにいるわけじゃねーし」
「それもそっか」 

 なんてことない会話をしながら歩いていき、
東町内の掲示板がある道を弐士騎は曲がったいった。 

「ここおれん家!」
「えっ」 

 普段進まない道であまり覚えてなかったが、新しげな家が建っているのは知っていた。まさか本当にまた近所だとは思わず短く声を漏らす。 

「お前ん家は?」
「あとちょっといったところ」 

 反射的に答えて案内し、扉の前で止まった。 

「おばさんとおじさんいんの?」
「二人ともおしごとだよ。いつも家におじいちゃんとクックさんと太郎丸さんがいる」
「あの顔こわいじいちゃんか」
「おじいちゃんこわくないよ。会ったことあるっけ?」
「一回だけ見たことある。あと太郎丸? クックさんってなんだ? ニワトリでもかってるのか?」
「ピヨさんだよ」
「へえー。しんかは?」
「どっちもしてるよ。見る?」
「見る!」 

 話の流れで二羽を見せることになり、弐士騎も一緒に家の中へ。 

「ただいま」
「主!」 

 リビングからクックの声が聞こえてきた。そしていつものように玄関までやってきて迎えにくる。 

「うわあああっ!? なんだこのデカいやつ!」
「クックさん。ピヨさんだよ。新しいしんかけいたいなんだよ」 

 近所の人も初見は同じような反応をして見せた。驚き、素直に信じる人もいれば嘘だと笑い飛ばす人もいた。一応クックという存在は認知されている。
 弐士騎も驚いているが、近所の人たちとは違う反応を見せた。 

「スッッゲー! カッコイイ!!」 

 キラキラと純粋な目をクックに向けて大興奮している。 

「誰デスカ?」
「うわっしゃべった!? しゃべんのこいつスゲーッ!」
「ニシキっていうんだよ。おさななじみなんだけど、近くにひっこしてきたんだって」
「ソウデスカ」 

 リビングから遅れて祖父も玄関へやってきた。 

「ココロ、玄関で話してないで上がってもらいなさい」
「あ、おれピヨ見るだけで帰るからここでいいよ」
「そう? じゃあ太郎丸さんつれてくる」 

 ココロだけ玄関から上がり、庭にいる太郎丸を見つけて呼んでみるが反応はない。芝生をつついて遊んでいる。太郎丸がココロの言うことを聞くことは稀であり、呼ぼうがおやつを見せようが目もくれない。 

「どうしようかな」 

 追い掛けても逃げられるだけ、怖がらせたり嫌われてしまうのは避けたい。そうこう考えているとクックがやって来て太郎丸と話し、太郎丸を抱えて戻ってきた。 

「仕方ナイから茶番に付キ合ッテヤル、と言ッテマス」
「そっか。ありがとう太郎丸さん」
「コケーッコ」 

 玄関にいる弐士騎へ太郎丸を見せに行く。
 弐士騎は「おーっ」と感嘆の声を上げてじっと太郎丸を眺めている。 

「さわっていい?」
「どうだろ? 太郎丸さんすぐどっか行っちゃってあんまりさわらせてもらえないから、つついたりかんだりしちゃうかも」
「げえー。じゃあやめる」 

 クックの腕から太郎丸は飛び降り、さっさとリビングの方へ走り去ってしまった。
 弐士騎は余程触りたかったのか名残惜しそうに太郎丸の姿を目で追っていた。
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