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十三話 幼馴染
一
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夏休みが終わり登校すると、クラス内はガヤガヤと生徒たちが夏休み中の出来事や宿題などの話題で賑わっていた。
ココロは自席へやって来てランドセルを机に置きながら着席する。
隣の席には先に登校してランドセルの中身を出し整え終えた凛々華が座っていた。
「リリカちゃん、おはよう」
「ココロちゃん、おはよう。夏休みあっという間だったね」
「うん。楽しくてあっという間だった」
「もっと夏休みあったらいいのにね」
「そうだね。でもあんまり長いと、毎日ドリルたくさんやらないといけなくなっちゃうよ」
「それはやだなあ~。そうだ、ココロちゃんは自由かだいなにやった?」
自由課題。それは夏休みの宿題であり、その名の通り自由に自分の課題を見つけて学習するというものだ。
ランドセルから教科書や筆箱を机の引き出しにしまい、その中から一冊ノートを取り出して凛々華に見せる。
「絵日記やったよ」
毎日クックの成長記録を書くついでに絵日記も書いていた。内容はクックの記録と重なる部分もあるが、日常と加えて絵を描いている。絵のほとんどは生き物よりも、食材や調理器具、完成した料理である。
「伯母さんにりょうり教えてもらったのわすれないようにしようと思って、絵もかいたらわかりやすいかなって」
「わあっ、それいいねー!」
「リリカちゃんはなにやったの?」
「わたしは本がすきだから、読書感そう文を書いたよ」
凛々華も机の引き出しからホチキス留めした原稿用紙の束を取り出して見せてくれる。
「ネズミのコックさんって絵本楽しかったよ。ほかのどうぶつよりも小さくて、ほうちょうとかやさいとかもてないのにね、キッチンに色んなしかけを作って、トントントーンってしかけがうごいてりょうりが出来ちゃうんだよ」
「へえ~おもしろそうだね」
「あとね、絵がない本も読んでみたの。文のイミがわからない時もあるんだけど、何回もよんでみたらわかるようになったんだよ。一回目で気づかなかったことが、二回目、三回目で気づいたりしてね、だから本ってすんごく楽しいの!」
本の話をしている時の凛々華は本当に楽しそうだ。物語に引き込まれて自分が主人公になったみたいに、嬉しいことや悲しいことも感じられると話している感受性の豊かさ。
ーーわたしもリリカちゃんみたいに、すんごく大すきってもの見つけられるかな……いつか見つけたいな
凛々華と話し続けていると一人の女子生徒がやってきて話しかけられる。
「ねーねー、ココロちゃんたちは夏休みにお出かけした?」
「わたしはプールに行ったよ」
「あっ、わたしは海に行った!」
「わたしはどうぶつ園に行ったよ。ピヨさんのショー見てきた」
「えっ! それってテレビでやってたところ?」
「いいなぁ」
夏菜が帰ってきて誕生日会をしたこと、のっぺらぼうを見たこと、ピヨショーを見て水型ピヨに触ったことなど、夏休みの思い出はココロにとってかけがえのないもので、楽しいと思えることがたくさんあった。今まで友だちが少なかった反動なのか、それらを友だちにたくさん話したくて仕方がない。
しかし教室の扉が開かれて担任の島が入ってくると話は中断され、他の生徒も一斉に着席しにいく。
もっと話したかったなぁ。……あれ……?
島の後ろを一人の男子生徒がついてきている。
ココロは目を見開いた。その男子生徒の顔がとても見覚えがあったからだ。
クラスの生徒たちはヒソヒソと『だれ?』『てん校生?』というような話し声が広がっている。不穏な様子ではなく、声色からしてむしろ歓迎ムードである。
島はパンパンと二回手のひらを叩き生徒たちの注意を引く。
「はーい、静かにしてくださいね。転校生を紹介します」
島は黒板の中央に白いチョークで転校生のであろう名前を書いていく。黒板の上下いっぱいに縦に大きく書かれた漢字は小学二年生には難しく、すぐ横にふりがなを振ってくれる。
「はい、安藤 弐士騎くんです。弐士騎くんは夏休み中にこちらに引っ越してきました。弐士騎くん、一言あいさつお願いします」
皆の視線が一斉に紹介された男子生徒へ向いた。
緊張しているのか不機嫌なのか仏頂面で「アンドウ ニシキ、よろしく」と本当に一言だけのあいさつをした。
大きく無造作に跳ねた黒髪、キリッと吊り上がった三白眼、頬や膝小僧に絆創膏を貼っているところを見るとやんちゃな性格なのかもしれない。
「よろしくお願いします。席は……この真ん中の列の一番後ろに行きましょうか」
島が示した席へ移動していく弐士騎。するとしっかりココロと目が合った。弐士騎の顔はまたたく間に喜色が表れる。
「ココロ! おまえここにてん校してたのかよ!?」
「ニシキも……」
「弐士騎くん、ココロちゃんとお友だち?」
「前、家がきんじょだった」
「そうなの。嬉しいのは分かるけど、とりあえず席に座りましょうね」
島に諭されて言われた席に着く。
ココロはなんとなく気恥ずかしくて、姿勢を屈ませて凛々華の影に隠れていた。
ココロは自席へやって来てランドセルを机に置きながら着席する。
隣の席には先に登校してランドセルの中身を出し整え終えた凛々華が座っていた。
「リリカちゃん、おはよう」
「ココロちゃん、おはよう。夏休みあっという間だったね」
「うん。楽しくてあっという間だった」
「もっと夏休みあったらいいのにね」
「そうだね。でもあんまり長いと、毎日ドリルたくさんやらないといけなくなっちゃうよ」
「それはやだなあ~。そうだ、ココロちゃんは自由かだいなにやった?」
自由課題。それは夏休みの宿題であり、その名の通り自由に自分の課題を見つけて学習するというものだ。
ランドセルから教科書や筆箱を机の引き出しにしまい、その中から一冊ノートを取り出して凛々華に見せる。
「絵日記やったよ」
毎日クックの成長記録を書くついでに絵日記も書いていた。内容はクックの記録と重なる部分もあるが、日常と加えて絵を描いている。絵のほとんどは生き物よりも、食材や調理器具、完成した料理である。
「伯母さんにりょうり教えてもらったのわすれないようにしようと思って、絵もかいたらわかりやすいかなって」
「わあっ、それいいねー!」
「リリカちゃんはなにやったの?」
「わたしは本がすきだから、読書感そう文を書いたよ」
凛々華も机の引き出しからホチキス留めした原稿用紙の束を取り出して見せてくれる。
「ネズミのコックさんって絵本楽しかったよ。ほかのどうぶつよりも小さくて、ほうちょうとかやさいとかもてないのにね、キッチンに色んなしかけを作って、トントントーンってしかけがうごいてりょうりが出来ちゃうんだよ」
「へえ~おもしろそうだね」
「あとね、絵がない本も読んでみたの。文のイミがわからない時もあるんだけど、何回もよんでみたらわかるようになったんだよ。一回目で気づかなかったことが、二回目、三回目で気づいたりしてね、だから本ってすんごく楽しいの!」
本の話をしている時の凛々華は本当に楽しそうだ。物語に引き込まれて自分が主人公になったみたいに、嬉しいことや悲しいことも感じられると話している感受性の豊かさ。
ーーわたしもリリカちゃんみたいに、すんごく大すきってもの見つけられるかな……いつか見つけたいな
凛々華と話し続けていると一人の女子生徒がやってきて話しかけられる。
「ねーねー、ココロちゃんたちは夏休みにお出かけした?」
「わたしはプールに行ったよ」
「あっ、わたしは海に行った!」
「わたしはどうぶつ園に行ったよ。ピヨさんのショー見てきた」
「えっ! それってテレビでやってたところ?」
「いいなぁ」
夏菜が帰ってきて誕生日会をしたこと、のっぺらぼうを見たこと、ピヨショーを見て水型ピヨに触ったことなど、夏休みの思い出はココロにとってかけがえのないもので、楽しいと思えることがたくさんあった。今まで友だちが少なかった反動なのか、それらを友だちにたくさん話したくて仕方がない。
しかし教室の扉が開かれて担任の島が入ってくると話は中断され、他の生徒も一斉に着席しにいく。
もっと話したかったなぁ。……あれ……?
島の後ろを一人の男子生徒がついてきている。
ココロは目を見開いた。その男子生徒の顔がとても見覚えがあったからだ。
クラスの生徒たちはヒソヒソと『だれ?』『てん校生?』というような話し声が広がっている。不穏な様子ではなく、声色からしてむしろ歓迎ムードである。
島はパンパンと二回手のひらを叩き生徒たちの注意を引く。
「はーい、静かにしてくださいね。転校生を紹介します」
島は黒板の中央に白いチョークで転校生のであろう名前を書いていく。黒板の上下いっぱいに縦に大きく書かれた漢字は小学二年生には難しく、すぐ横にふりがなを振ってくれる。
「はい、安藤 弐士騎くんです。弐士騎くんは夏休み中にこちらに引っ越してきました。弐士騎くん、一言あいさつお願いします」
皆の視線が一斉に紹介された男子生徒へ向いた。
緊張しているのか不機嫌なのか仏頂面で「アンドウ ニシキ、よろしく」と本当に一言だけのあいさつをした。
大きく無造作に跳ねた黒髪、キリッと吊り上がった三白眼、頬や膝小僧に絆創膏を貼っているところを見るとやんちゃな性格なのかもしれない。
「よろしくお願いします。席は……この真ん中の列の一番後ろに行きましょうか」
島が示した席へ移動していく弐士騎。するとしっかりココロと目が合った。弐士騎の顔はまたたく間に喜色が表れる。
「ココロ! おまえここにてん校してたのかよ!?」
「ニシキも……」
「弐士騎くん、ココロちゃんとお友だち?」
「前、家がきんじょだった」
「そうなの。嬉しいのは分かるけど、とりあえず席に座りましょうね」
島に諭されて言われた席に着く。
ココロはなんとなく気恥ずかしくて、姿勢を屈ませて凛々華の影に隠れていた。
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