上 下
74 / 85
十ニ話 フェイス トゥ フェイス

しおりを挟む
 天海一家は伯父の運転する車で目的地まで移動する。そこは墓場だった。お盆期間で墓参りと掃除をしにやって来た。
 天海家と書かれている墓の前に集まると、皆一斉に合掌する。
 ココロも見て真似をしてみたが、これをする意味はなんだろうと疑問に思う。聞こうにも皆が一斉に黙ってしまって聞けなかった。
 呆然と一分間か二分間立ち尽くし、伯父が沈黙を破るとほっとする。 

「よーし、じゃあ掃除すっか。俺は水汲んでくる」
「私は掃き掃除してるわ」
「夏菜とココロは私と一緒に草むしりだな」
「オッケー」
「おじいちゃん、さっきのはなあに? どうしてみんな目をつぶって手を合わせてたの?」
「あれはご先祖様にあいさつしていたんだ。墓はご先祖様の家みたいな所でな、掃除して綺麗にするんだ。お盆はご先祖様をお迎えする大事な行事なんだぞ」
「へえ、そうなんだ」 

 ココロには先祖というものがピンとこなかった。しかし亡くなった人ということはわかっていて、人ではないが最近話題となったクロ吉のことを思い出した。 

 クロ吉さんもミドリおばあちゃんがたてたおはかにいるんだよね。クロ吉さんがちゃんとミドリおばあちゃんのところに行けますように…… 

 ココロは改めて手を合わせ目を瞑りクロ吉のこと想う。
 草むしりは各自ビニール袋を持ち、墓周辺の雑草を手分けして抜いていく。 

 カサカサッ 

「えっ?」 

 生えている雑草の合間に落ちている葉が擦れ合う音。
 長く伸びた雑草の影に何かがいて動いたような気がした。興味が湧いてきて音がした辺りの雑草を抜いてみる。 

「いない……もうどっか行っちゃったのかな」 

 カサッカサッ 

 一メートル程離れた先でまた音が聞こえた。ココロはまたその辺りの雑草を抜き、また別の箇所で聞いては雑草を抜いていった。 

「あ……音が聞こえて見にいったら何もいなかったって……ナッちゃんのお話みたい」 

 カサカサッ 

「あっ!」 

 音が聞こえた箇所へ視線を移しながら近づくとその正体を見逃さなかった。 

「やっぱりトカゲさんだ」 

 予想していた通り尻尾の長いトカゲを確認することが出来て満足する。音を追いかけていたら天海家の墓からニ基離れた場所まで移動していた。 

「あれ、なんか……いる」 

 地面と雑草ばかり見ていた顔をふと上げてみたら墓の影に何かが動いているのを発見する。ホコリが舞うようなふわふわと不規則な動きで飛んでいる何か。目を凝らして暫く見ていると、影から体がやたら細いトリのような何かが出てきた。サイズは小雛程度だが、片翼で羽毛は無くもろ骨。色は保護色で動く度に近くの物の色に変化していて、影色から今は草と土の色をしている。非常に見えづらい。くちばしがありそれでなんとかトリと判断した。 

「うわあっ!! のっぺらぼうだ!!」 

 そのトリには目が無かった。
 わかった瞬間にココロは立ち上がり逃げるようにして天海家の墓まで戻り、祖父の足にしがみついた。
 祖父はよろめいたが体勢を立て直し、怯えるココロに目を向けた。 

「どうしたんだ?」
「あ、あそこにこわいトリさんがいた!」
「怖いトリ? 珍しいな。ココロがトリを怖がるなんて」
「のっぺらぼうだったの!」
「のっぺらぼう?」
「ほそくてふらふらしてて、くちばしはあるけど目がないの!」
「そんなトリは見たことがないな」
「おじいちゃんもしらないトリさん?」
「うーむ……私もトリに詳しいわけではないからな。目が無い生き物か……」 

 祖父が難しい顔をしている。困らせてしまっていると思ったら急にそわそわとしてきてしまう。 

「もしかしたらムシさんだったのかも……また見てくる」 

 そう言ってすぐに見かけた場所へ向かっていった。怖さよりも興味が勝っている。しかしいくら捜してもそのトリらしき生物は見当たらなかった。
 墓掃除が済むと帰宅する。そしてすぐさまクックに対面した。 

「クックさんただいま」
「主、オ帰リナサイ」
「あのね、おはかにのっぺらぼういたの」
「ナント!?」
「びっくりしてこわくなってにげちゃったんだけど、トリさんののっぺらぼう見たんだよ」
「夏菜はオ化ケいない言ッテマシタ」
「でもいたよ。ふらふらしてた」
「モシカシタラ、ソノトリはピヨダッタノカモシレマセンヨ」
「ピヨさん? ……ピヨさんだったのかな」 

 夏菜や伯父と伯母にも話してみたが結局正体はわからなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

処理中です...