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八話 気持ちのズレの訪れ
三
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五限目が終了し今日の学校はここまでとなる。島は配布するプリントを取りに一旦教室を出ていき職員室へ向かっていった。
すると皆せきを切ったように話し出し、教室内は私語の嵐となる。中でも一部の男子生徒たちはサッカーボールを持って落ち着きがない。早く帰ってサッカーをやりたいと顔に書いてありウズウズしている。
女子のグループの中心人物は愛美であり、今日も自慢話をしている。
「この後ショッピングして、夜にお食事しにいくのぉ」
「いいな~。おかしいっぱい買ってもらえるんだもんね」
「おにんぎょうとかぬいぐるみもだよね。その後においしいもの食べられるなんてうらやましい~」
「みんなもパパとママにおねだりしちゃえばいいのに」
「むりだよー。だめっておこられるもん」
「そうなの? じゃあマミは何でも買ってもらえるからしあわせ~」
愛美の席は教室の中央で会話はほとんど周りに丸聞こえである。愛美の自慢を全ての人が羨ましがっているわけではない。そういう人は最初から聞く気にもなっていない為、嫌な顔をしている人は誰もいなかった。
ココロも羨ましいと思うことはあるが別段嫌がることはない。
「ねえ、ココロちゃんのお母さんって外国人なんだよね? どんな人? きれい?」
愛美の周りにいる女子の内の一人が突然話題を振ってきた。
思わぬ自体に息を呑むココロ。
そして話題が自分から逸れてしまった愛美はむくれている。
「え……と、水色のかみに青い目で、わたしと同じ色してる。やさしくて、きれいな人だよ」
「ココロちゃんかわいいし、はだ白くてきれいだし、お母さんもぜったいきれいだよね!」
「うんうん、見てみたーい」
盛り上がる女子たちとは裏腹に、愛美のテンションは下がっていく一方だ。
「なんかさ、ママとにてて自分もきれいってアピールしてるみたーい」
「にてるかな?」
「見たことないししらないよ! しゃしんとかないの?」
静かになったり喧しくなったりと愛美は忙しい。
ココロは母親のことをそんなに気になってくれているのかと面映ゆい気持ちになる。しかし思い出したように肩を落とした。
「しゃしんは……そういえばないや。今は遠くにいるから会えないし」
「そういえばそうなんだっけ? しゃしんもなくて、すぐに会えないなんてカワイソー」
「そうだね、かわいそう」
「きっとすぐ会えるよ~」
愛美や他の女子たちから次々と言葉をかけられる。
その言葉を受けて居心地の悪さを感じ、同時に蟠りが出来てしまった。
わたしってかわいそう……? そんなこと……ないのに……
プリントを持った島が教室に戻ってきた。それと同時に帰りのホームルームが始まる。宿題のプリントが配布され、言われた連絡事項を連絡帳に記入する。
そのホームルームの間、ココロは『かわいそう』と言われた事がずっと気になっていた。自分はそうだと思っていなかったことを他人に決めつけられる。それはいい気分がしなかった。
「きりつ、れい!」
百合子の声にハッとして立ち上がり、皆からワンテンポ遅れて『さようなら』と言って頭を下げた。
そして凛々華と一緒に下校する。いつものように授業のことや家のことなど日常会話をしながら帰っているが、ボーッとしてあまり頭に入ってこない。
「ココロちゃん大丈夫?」
「うん……」
凛々華の心配する声もどうしてか遠く聞こえる。凛々華のマンション付近まで辿り着き、そこで凛々華と別れた。
家に続く道を歩いて行けばあのよく遊ぶ公園がある。立ち止まって公園の中を見てみると小さい子供が三人と三十代女性が三人いるのが見えた。それぞれの子供の母親だろうか。子供たちは遊具で遊び、母親たちは集まって談笑している。
「……あ、パパかな」
サッカーボール程の大きさのゴムボールを持ってやって来た三十代男性。子供とボールを投げて遊んでいる。
パパとボールあそび……ママとこうえん……いつ行ったっけ……
去年の記憶さえ薄ぼんやりしていて思い出せない。そもそも去年に親と遊んだ覚えがあまりにも少ない。
「……帰らないと。より道はダメだもんね」
公園から目を逸らして止めた歩みを進める。あとは真っ直ぐ家に帰るだけ。ただそれだけだった。
すると皆せきを切ったように話し出し、教室内は私語の嵐となる。中でも一部の男子生徒たちはサッカーボールを持って落ち着きがない。早く帰ってサッカーをやりたいと顔に書いてありウズウズしている。
女子のグループの中心人物は愛美であり、今日も自慢話をしている。
「この後ショッピングして、夜にお食事しにいくのぉ」
「いいな~。おかしいっぱい買ってもらえるんだもんね」
「おにんぎょうとかぬいぐるみもだよね。その後においしいもの食べられるなんてうらやましい~」
「みんなもパパとママにおねだりしちゃえばいいのに」
「むりだよー。だめっておこられるもん」
「そうなの? じゃあマミは何でも買ってもらえるからしあわせ~」
愛美の席は教室の中央で会話はほとんど周りに丸聞こえである。愛美の自慢を全ての人が羨ましがっているわけではない。そういう人は最初から聞く気にもなっていない為、嫌な顔をしている人は誰もいなかった。
ココロも羨ましいと思うことはあるが別段嫌がることはない。
「ねえ、ココロちゃんのお母さんって外国人なんだよね? どんな人? きれい?」
愛美の周りにいる女子の内の一人が突然話題を振ってきた。
思わぬ自体に息を呑むココロ。
そして話題が自分から逸れてしまった愛美はむくれている。
「え……と、水色のかみに青い目で、わたしと同じ色してる。やさしくて、きれいな人だよ」
「ココロちゃんかわいいし、はだ白くてきれいだし、お母さんもぜったいきれいだよね!」
「うんうん、見てみたーい」
盛り上がる女子たちとは裏腹に、愛美のテンションは下がっていく一方だ。
「なんかさ、ママとにてて自分もきれいってアピールしてるみたーい」
「にてるかな?」
「見たことないししらないよ! しゃしんとかないの?」
静かになったり喧しくなったりと愛美は忙しい。
ココロは母親のことをそんなに気になってくれているのかと面映ゆい気持ちになる。しかし思い出したように肩を落とした。
「しゃしんは……そういえばないや。今は遠くにいるから会えないし」
「そういえばそうなんだっけ? しゃしんもなくて、すぐに会えないなんてカワイソー」
「そうだね、かわいそう」
「きっとすぐ会えるよ~」
愛美や他の女子たちから次々と言葉をかけられる。
その言葉を受けて居心地の悪さを感じ、同時に蟠りが出来てしまった。
わたしってかわいそう……? そんなこと……ないのに……
プリントを持った島が教室に戻ってきた。それと同時に帰りのホームルームが始まる。宿題のプリントが配布され、言われた連絡事項を連絡帳に記入する。
そのホームルームの間、ココロは『かわいそう』と言われた事がずっと気になっていた。自分はそうだと思っていなかったことを他人に決めつけられる。それはいい気分がしなかった。
「きりつ、れい!」
百合子の声にハッとして立ち上がり、皆からワンテンポ遅れて『さようなら』と言って頭を下げた。
そして凛々華と一緒に下校する。いつものように授業のことや家のことなど日常会話をしながら帰っているが、ボーッとしてあまり頭に入ってこない。
「ココロちゃん大丈夫?」
「うん……」
凛々華の心配する声もどうしてか遠く聞こえる。凛々華のマンション付近まで辿り着き、そこで凛々華と別れた。
家に続く道を歩いて行けばあのよく遊ぶ公園がある。立ち止まって公園の中を見てみると小さい子供が三人と三十代女性が三人いるのが見えた。それぞれの子供の母親だろうか。子供たちは遊具で遊び、母親たちは集まって談笑している。
「……あ、パパかな」
サッカーボール程の大きさのゴムボールを持ってやって来た三十代男性。子供とボールを投げて遊んでいる。
パパとボールあそび……ママとこうえん……いつ行ったっけ……
去年の記憶さえ薄ぼんやりしていて思い出せない。そもそも去年に親と遊んだ覚えがあまりにも少ない。
「……帰らないと。より道はダメだもんね」
公園から目を逸らして止めた歩みを進める。あとは真っ直ぐ家に帰るだけ。ただそれだけだった。
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