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六話 新しきを知る

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 夕食が済んでから、持ってきていた連絡帳の確認欄に押印してもらう。それから片付けの手伝いをすることになった。料理を覚える前にまずはキッチン周りの片付けを覚えることが基本であるとのことで、料理はまた別の機会で教わることになっている。 

「ココロちゃんは食べたら食器をシンクに持ってきてくれるからそれだけでも偉いわよ。あの人なんかテーブルに置きっぱなしが殆どなんだから」 

 そんな伯父に対しての愚痴を聞きながら食器洗いの手順を教えてもらった。まずは初めてだからと伯母が洗った食器を布巾で拭いて手伝いは終わった。 

「おしえてくれてありがとう」 

 小さな声でもちゃんとお礼を言い、連絡帳を持ちクックを連れてそそくさと二階へ上がっていった。扉を閉めると脱力してペタンと床に座り込む。 

「ふう、今日は大いそがしだ。ドリルもやらなきゃ」 

 出しておいた漢字ドリルを捲り、連絡帳に書いてあるページを開く。物が少ない部屋でテーブルも無い為、床に腹這い状態で漢字ドリルを床に置いて書きこんでいく。薄い灰色で印刷されたお手本をなぞっては下の白い欄に書いていくのだが、漢字を覚えるのが苦手で何度もお手本と見比べている。
 そこにクックがピョンピョンと跳ねてドリルの上に乗ってきた。 

「クックさんもおぼえる? かん字ってね、むずかしいんだよ。ママも言ってた。ひらがなとカタカナだけならいいのに、かん字ってたくさんあって、読み方もいっぱいあるからわかんないって」
「ピィ?」
「クックさんもわかんないよね」 

 首を傾げているクックの額を人差し指で撫でてやると、気持ち良さそうに目を瞑っている。撫でるのを止めるともっととねだるみたく、頭やくちばしを指に擦りつけてくる。その甘えた仕草はやはり可愛くて仕方がなく、ついついたくさん撫でてしまう。 

「ふふ。クックさんはあまえんぼさんなんだね」 

 利き手の右手はドリルを進めて、左手はクックを撫でてやる。結局漢字ドリルは集中出来ずほとんど内容は覚えていない。宿題の指定ページが終わると閉じてランドセルへしまった。計算ドリルはまた明日やることにして、クックと遊ぶことを優先する。 

「クックさんだってあそびたいよね。ごはん食べたし少しうんどうする?」 

 夕飯前にやっていた《ストップ》や《ジャンプ》とは違った運動をしてみようと、リュックサックから取り出したのはゴムボールだ。たまに壁に投げてみたり、ペットボトルを並べてボーリングをしたりする。
 クックを離してストップと言って待たせ、ココロは離れた地点からクックに向かってボールを転がしてみた。 

「クックさんとめてみて」
「ピッ!?」 

 キャッチボールのようにしたいと思って転がしたが、転がってくるゴムボールをクックが受け止められず横に倒れてしまう。人間で言うところの大玉転がしの大玉が転がってきてぶつかったような感覚である。 

「クックさんにはおもたいのかな? じゃあサッカーみたいにけったりとか、おしたりはできるかな?」 

 クックの目の前にゴムボールを置き、指で蹴る動作やつつく動作をして見せる。始めの内はよくわかってなさそうだったが、数分繰り返している内にクック自ら蹴る動作をする。 

「そうそう、そうだよ。上手」 

 蹴ったら褒めたり撫でたりとを繰り返していくと、段々クックもわかって楽しんでいるのかゴムボールを蹴ったり押したりするようになってきた。 

「ピッ! ピッ!」
「伯父さんがね、クックさんは大きくなるかもって。あしとか体をうごかせば、きっとじょうぶになるって言ってたから、だからいっしょにうんどうがんばろう」 

 クックに言い聞かせているつもりだが、クックが聞いているかはわからない。ただ夢中になって転がっていくボールを追いかけている。 

「今日はここまでにしとこ」
「ピギョ」 

 走るクックを捕まえてケージに戻し給水器の前へ置いてやる。すると勢いよく水を飲みだした。 

「がんばったね、クックさん。イイコイイコ」 

 水を飲むクックを撫でて、ココロもクックと遊べて満足したようだった。
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