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五話 学校へ行こう
五
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愛美と別れてからは転校前に覚えた通学路を通って帰る。近道を探したい、どんな場所があるのか知りたいという好奇心は旺盛であるが、休み時間でも感じたように、緊張の糸がやっと切れたのかどっと疲れが襲ってくる。
「友だち、あんまりできなかったな……」
百合子は学級委員でしっかりしていて頼れそうだが、勉強が好きなのかあまり話せなかった。
愛美は話しかけてくれるが、笑顔だったり機嫌が悪そうであったりと気になることが多い。
隣の席の凛々華からも避けられてしまっている。
これからの不安が溜め息として吐き出された。
通学路に何があるのか観察しながら進んでいく。通学路は比較的道幅が広く並んだ住宅に囲まれている。この辺りはファミリー層向けの住宅地だ。子供が多く騒がしいことがあるが、その分人が多い為、防犯には優れている。
更に進むと大きな広場があった。そこで男子たちがサッカーをしているのを見かける。ベンチにランドセルが放ってあり、きっと学校帰りに遊んでいるのだろう。
「サッカーかあ」
シュンッ
「わっ!?」
サッカーボールが飛んできて髪をかすめていった。まさか飛んでくるとは思っておらず驚いて尻もちをついたが、咄嗟に地面に手を着き、手とスカートが汚れたくらいでケガをせずに済んだ。
「ごめん! だいじょうぶ?」
一人の男子が慌てた様子で駆け寄ってくる。耳にかかるくらいの整った髪型をした男子だ。サッカーをしていたからかうっすらと汗をかいているが、それが爽やかさを演出している。
その男子が手を伸ばしてきてココロは一瞬躊躇ったが、その手を掴んで立ち上がった。
「うん、かみにしか当たってないからだいじょうぶ」
手を擦り合わせて付いた土を払う。尻側のスカートに付いた土も落としたかったが、手が汚れてしまっている為、我慢するしかない。
「よかった。キミ、てんこうせいの天海さんだよね? ぼく、同じクラスの亘大介っていうんだ」
「ダイスケくんっていうんだ。よろしく」
「よろしく。えっと、コレよかったらつかって」
ズボンのポケットから紺色のハンカチを取り出し差し出してきた。
「でも……」
「ダイスケー! 早くもって来いよー!」
「今行く!」
振り返って待っている男子たちに返事をし、それからココロの手首を掴んで手のひらにハンカチを乗せる。そしてサッカーボールを拾い「またね」と一言だけ言って、サッカーボールを蹴り飛ばして走っていった。
大介の後ろ姿と手のひらに残るハンカチを見て呆然としてしまう。
「ハンカチかりちゃった……あらってかえさなきゃ。同じクラスだし、すぐかえせるよね。でもまだぜんぜんクラスの人のかお、おぼえてないや」
転校初日でクラスメート全員の顔と名前を覚えられるわけがない。
近くに水道があり、そこで手を洗うことにした。受け取ったハンカチで手を拭き、それからスカートの土を払いまた手を洗う。そして広場を出ていった。見えなくなるまで大介たちのサッカーを眺めて余所見歩きをしていたせいで、沿道の低い段差につまずいた。
また暫く歩いていけば、太郎丸と散歩した見覚えのある公園に到着した。公園には誰もいない。普段なら子供が遊んでいて賑やかなはずだ。こんな帰宅時間に子供連れの親子や学生がいないのは珍しい。
たまたま人がいないことなど気にも留めず、ただラッキーと思いながら公園に足を踏み入れた。
「友だち、あんまりできなかったな……」
百合子は学級委員でしっかりしていて頼れそうだが、勉強が好きなのかあまり話せなかった。
愛美は話しかけてくれるが、笑顔だったり機嫌が悪そうであったりと気になることが多い。
隣の席の凛々華からも避けられてしまっている。
これからの不安が溜め息として吐き出された。
通学路に何があるのか観察しながら進んでいく。通学路は比較的道幅が広く並んだ住宅に囲まれている。この辺りはファミリー層向けの住宅地だ。子供が多く騒がしいことがあるが、その分人が多い為、防犯には優れている。
更に進むと大きな広場があった。そこで男子たちがサッカーをしているのを見かける。ベンチにランドセルが放ってあり、きっと学校帰りに遊んでいるのだろう。
「サッカーかあ」
シュンッ
「わっ!?」
サッカーボールが飛んできて髪をかすめていった。まさか飛んでくるとは思っておらず驚いて尻もちをついたが、咄嗟に地面に手を着き、手とスカートが汚れたくらいでケガをせずに済んだ。
「ごめん! だいじょうぶ?」
一人の男子が慌てた様子で駆け寄ってくる。耳にかかるくらいの整った髪型をした男子だ。サッカーをしていたからかうっすらと汗をかいているが、それが爽やかさを演出している。
その男子が手を伸ばしてきてココロは一瞬躊躇ったが、その手を掴んで立ち上がった。
「うん、かみにしか当たってないからだいじょうぶ」
手を擦り合わせて付いた土を払う。尻側のスカートに付いた土も落としたかったが、手が汚れてしまっている為、我慢するしかない。
「よかった。キミ、てんこうせいの天海さんだよね? ぼく、同じクラスの亘大介っていうんだ」
「ダイスケくんっていうんだ。よろしく」
「よろしく。えっと、コレよかったらつかって」
ズボンのポケットから紺色のハンカチを取り出し差し出してきた。
「でも……」
「ダイスケー! 早くもって来いよー!」
「今行く!」
振り返って待っている男子たちに返事をし、それからココロの手首を掴んで手のひらにハンカチを乗せる。そしてサッカーボールを拾い「またね」と一言だけ言って、サッカーボールを蹴り飛ばして走っていった。
大介の後ろ姿と手のひらに残るハンカチを見て呆然としてしまう。
「ハンカチかりちゃった……あらってかえさなきゃ。同じクラスだし、すぐかえせるよね。でもまだぜんぜんクラスの人のかお、おぼえてないや」
転校初日でクラスメート全員の顔と名前を覚えられるわけがない。
近くに水道があり、そこで手を洗うことにした。受け取ったハンカチで手を拭き、それからスカートの土を払いまた手を洗う。そして広場を出ていった。見えなくなるまで大介たちのサッカーを眺めて余所見歩きをしていたせいで、沿道の低い段差につまずいた。
また暫く歩いていけば、太郎丸と散歩した見覚えのある公園に到着した。公園には誰もいない。普段なら子供が遊んでいて賑やかなはずだ。こんな帰宅時間に子供連れの親子や学生がいないのは珍しい。
たまたま人がいないことなど気にも留めず、ただラッキーと思いながら公園に足を踏み入れた。
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