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四話 成長の第一歩

一 挿し絵あり

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 チチチと外から聞こえてくる鳥の鳴き声。この鳴き声が聞こえてくるともう朝なのかと目覚めきっていないぼんやりとしている頭がうっすらと自覚してくる。

「んんー……」

 まだ眠さが残るものの、カーテンの隙間から差す日射しが眩しくて目を擦りながらのそのそと布団から這いずって出てきた。カーテンを開けると更に日射しが差し込み眩しくて目が痛い。反射的に瞑った目をゆっくりと開けて、光に目が慣れてくると雲ひとつない青空が映った。

「わあ、いい天気」

 窓を開けてみるとややひんやりとした春風が舞い込んでくる。春の朝はこれが気持ちいい。
 両親を連れていくから朝はイヤだった。その両親が今は遠くにいて見送ることさえ出来ない。両親に会えないことは寂しい。朝になると両親がいないことを思い出してイヤな気持ちになる。黙って感情を押し殺し、考えないようにしようと頬を軽く叩いて、それからクックがいるケージに顔を出すことにした。

「クックさん、おはよう。あれ?」
「ピィー」

 クックは起きていた。
 それについて疑問を持ったわけではない。

「なんかぼさぼさしてる。けづくろいしたの?」
「ピッ?」

 昨日とは何かが違う気がして、首を傾げるクックをケージから出してみることにした。薄暗いケージの中では分かりづらかったが、出してみて明らかな違いに気が付く。

「クックさん大きくなってる!」

 ふわふわした短い羽毛が伸びて羽の量も増えていた。毛色は黄色一色から、色素が抜けて白っぽい箇所もある。ずんぐりとした丸みのあった身体は伸びて胴体や脚がしっかりと筋肉がついたように見える。以前はココロの片手から少しはみ出る程度の大きさだったが、今は両手で持ってもはみ出るくらいの大きさだ。

「スゴイ! クックさんねてるあいだにしんかしたの!?」
「ピィ……ピィ」
「クックさん? ……あっ」

 手のひらから下りてフローリングの床を歩き出すクックだがいつもより元気が無くスローペースだ。そして時々左脚を引きずっている。

「ケガしてたの!?」
「ピィー……」

 昨日ハンドバッグの中で散々転がり回ったからだろうか。布地に爪を引っ掛けたり、挫いてしまったのかもしれない。

「たいへん! えっと……えっと……」

 どうしたらいいか考えて、部屋に置いてあるお世話ファイルを開いた。

「ケガ……ピヨさんがケガをしたら……」

 目次を見てケガをしたらというページを探し、挟んであるしおりのページまで一気に飛ばして開いた。

「あった! 『ケガをしたらまずはすぐに大人に言うこと。大人がちかくにいなければキズを水であらってバイキンをおとす。キレイなガーゼで水気をふきとる。包帯ほうたいをまく。それから大人をさがしてつたえること』……伯父さんたちいるから言わなきゃっ!」
「ピヨッ!?」
「ごめんクックさん! ちょっとガマンしてて」

 慌ててクックを拾い上げて部屋を出ていく。驚かせてしまいバサバサと羽ばたいているが、今は一大事で落とさないようにしっかりと身体を掴んで階段を駆け降りていった。
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