22 / 85
四話 成長の第一歩
五
しおりを挟む
「こんにちは」
「こんにちは。よろしくお願いします」
「お願いしまーす」
「……っ」
緊張して言葉が出ず、ただ思い切り深くお辞儀した。
獣医は四十代の恰幅の良い男性で、ココロを見るなりにこにこと笑みを浮かべている。
「ちゃんとお辞儀してえらいね」
一歩近づいて来られただけだが恥ずかしさが勝ってしまった。伯父の後ろに隠れて顔や体を半分だけ覗かせている。
その様子に医者は気を悪くするわけでもなく、慣れているようで気にしていない。問診票に一通り目を通してデスクに置いた。
「えーではクックちゃんを診させて頂きますね。脚を診ますのでこちらの診察台に乗せてください」
部屋の中央にある大型犬も乗れそうな診察台に、伯母がクックを持ち上げて乗せる。
おとなしくしていたクックだったが、獣医を見た途端に翼を羽ばたかせ、鳴いて威嚇する。
「ピィピョッ! ピョヨヨッ!」
「ははは、大丈夫だよ~。よーしよしよし」
クックの前に人差し指を近づけるとくちばしで挟まれる。しかし手袋をしているからか痛そうな反応はしていない。わざとくわえさせて気をそちらに逸らしている内に脚を触診する。
「どうですか」
「これは成長痛ですね」
「「え」」
伯父と伯母の息がぴったり合う。傷は無く、ただ少し捻ってしまっただけだろうと考えていたが、まさかの成長痛と聞いて二人は唖然とする。鳥に成長痛があったことにも驚きである。
「成長して身体が大きくなり脚が体を支えられていないのでしょう。多少捻ってしまったような反応もしてますが、適切な食事療法と運動をすれば問題ないですよ。二、三日は休ませて、それから運動を開始して十分な筋肉をつけてください」
「あし、だいじょうぶなの……?」
「大丈夫だよ」
「よかった……」
朝見た時は、自分のせいでケガをさせてしまった、歩けなくなったらどうしようと不安でいっぱいだった。けれど獣医が大丈夫と言うのだからこれ以上の安心する言葉はきっと無いだろう。
「お嬢ちゃん」
「なに?」
「お嬢ちゃんがクックちゃんの主なんだよね?」
「うん。……は、はい。えっと、ママとパパがそうだっておしえてくれたの」
「そうなんだね。クックちゃんを守ってあげてね」
「まもるの?」
「そうだよ。主は色んなことからピヨを守ってあげられるんだ。そうすればきっと信頼関係を築くことが出来る。ピヨにとって主はとても大切な人だから、主の言うことはしっかり聞こうとするし、お嬢ちゃんを守ろうとしてくれる。だからお嬢ちゃんもクックちゃんを大切にしてあげるんだよ。出来るかな?」
「……はい!」
獣医の問い掛けに大きく頷いて返事をする。
主がなんなのか正直よく分かっていなかった。今、説明をされても分かることは少なかったが、ピヨを守り、ピヨに守られる、互いに大切な存在だということは理解した。分からないことだらけな自分でも何かをしてやれる、それが分かっただけでも自信がついてくる。
「こんにちは。よろしくお願いします」
「お願いしまーす」
「……っ」
緊張して言葉が出ず、ただ思い切り深くお辞儀した。
獣医は四十代の恰幅の良い男性で、ココロを見るなりにこにこと笑みを浮かべている。
「ちゃんとお辞儀してえらいね」
一歩近づいて来られただけだが恥ずかしさが勝ってしまった。伯父の後ろに隠れて顔や体を半分だけ覗かせている。
その様子に医者は気を悪くするわけでもなく、慣れているようで気にしていない。問診票に一通り目を通してデスクに置いた。
「えーではクックちゃんを診させて頂きますね。脚を診ますのでこちらの診察台に乗せてください」
部屋の中央にある大型犬も乗れそうな診察台に、伯母がクックを持ち上げて乗せる。
おとなしくしていたクックだったが、獣医を見た途端に翼を羽ばたかせ、鳴いて威嚇する。
「ピィピョッ! ピョヨヨッ!」
「ははは、大丈夫だよ~。よーしよしよし」
クックの前に人差し指を近づけるとくちばしで挟まれる。しかし手袋をしているからか痛そうな反応はしていない。わざとくわえさせて気をそちらに逸らしている内に脚を触診する。
「どうですか」
「これは成長痛ですね」
「「え」」
伯父と伯母の息がぴったり合う。傷は無く、ただ少し捻ってしまっただけだろうと考えていたが、まさかの成長痛と聞いて二人は唖然とする。鳥に成長痛があったことにも驚きである。
「成長して身体が大きくなり脚が体を支えられていないのでしょう。多少捻ってしまったような反応もしてますが、適切な食事療法と運動をすれば問題ないですよ。二、三日は休ませて、それから運動を開始して十分な筋肉をつけてください」
「あし、だいじょうぶなの……?」
「大丈夫だよ」
「よかった……」
朝見た時は、自分のせいでケガをさせてしまった、歩けなくなったらどうしようと不安でいっぱいだった。けれど獣医が大丈夫と言うのだからこれ以上の安心する言葉はきっと無いだろう。
「お嬢ちゃん」
「なに?」
「お嬢ちゃんがクックちゃんの主なんだよね?」
「うん。……は、はい。えっと、ママとパパがそうだっておしえてくれたの」
「そうなんだね。クックちゃんを守ってあげてね」
「まもるの?」
「そうだよ。主は色んなことからピヨを守ってあげられるんだ。そうすればきっと信頼関係を築くことが出来る。ピヨにとって主はとても大切な人だから、主の言うことはしっかり聞こうとするし、お嬢ちゃんを守ろうとしてくれる。だからお嬢ちゃんもクックちゃんを大切にしてあげるんだよ。出来るかな?」
「……はい!」
獣医の問い掛けに大きく頷いて返事をする。
主がなんなのか正直よく分かっていなかった。今、説明をされても分かることは少なかったが、ピヨを守り、ピヨに守られる、互いに大切な存在だということは理解した。分からないことだらけな自分でも何かをしてやれる、それが分かっただけでも自信がついてくる。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる