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三話 出逢い回想
二
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和室からリビングに出る。リビングの窓からは小さな庭が見え人工芝が敷かれている。太郎丸はそこで日向ぼっこ中だ。
先に自室へ戻って身支度を整えることにした。母親が好きな洋服ブランド【JIGUZA】のワンピースを着る。このブランドは様々な柄物が売りである。ココロがよく着るワンピースは凹凸模様がポイントとして描かれている。今日の色は緑系のパステルカラーだ。
高い位置で蝶を象ったリボンの髪留めで髪を二つに留めればいつものスタイルだ。
「クックさん、お出かけだよ」
ケージの中で床材をつついているクック。ココロの声に気付いたようで顔を上げた。
「ピッ」
「今日はこのへんをおさんぽ。たんけんするんだよ」
普段より楽しげな声色。知らない土地を探険しようと考える好奇心旺盛なところはまだまだ七歳児である。
「この中に入ってて。落ちないでね」
小物を入れるハンドバッグを用意し、クックを手のひらに乗せてそっと入れた。直に布地な為、布地に爪が引っ掛かり歩きずらそうだ。そこで床材を一掴みして上から適当に入れる。当然クックにもろ被りである。
クックは頭にかかった床材を振り落として歩いてみると、今度は爪が引っ掛からず無事に歩けそうだ。
「これでだいじょうぶだね。いこう」
「ピヨッ」
一階へ降りていく。玄関にピヨ用のハーネスが付いたリードが掛かっており、太郎丸の下へ持っていく。リビングの窓を開けると、日向ぼっこをしてうとうとしていた太郎丸が気配を察知したのか目覚める。
「太郎丸さん、おさんぽだよ」
「ココッ」
「あっ、まって」
太郎丸は芝生の庭を駆け回る。広くはない庭だが、ココロから逃げるには十分な広さである。
「ピッ!? ピッィ!」
「クックさんごめん!」
クックが入ったハンドバッグを持ちながら追い掛けている為、中ではクックが大惨事に見舞わられている。これではクックが散歩の前に体力が切れてしまう。一旦窓際にハンドバッグを起き置き、それから太郎丸を追いかけた。
「コケーッ」
「まって太郎丸さん、おさんぽいくよ!」
「コケーッコッ」
「あっ!」
太郎丸はココロの隙をついてクックの入っているハンドバッグをくちばしで咥えて走っていく。
「だめだよクックさんがいるから!」
「コケーッ」
「ピッ!? ピィッ、ピィィィッ!!」
ガタガタ揺れる中、クックは床材に爪を立てて踏ん張って体勢を保っている。
逃げる太郎丸をココロがひたすら追いかけるという鬼が必死な鬼ごっこを約三十分間続けて終わりを迎えた。それは意外な終わり方で、ハーネスを差し出すと太郎丸自ら輪の中に頭を突っ込んだのだ。それからすかさず胴体に回り込んで接続した。
「はぁー……太郎丸さん、はやい……」
「ピィ~……」
一番疲れているのはクックだ。踏ん張ってもすぐに転げてしまい、ハンドバッグの中でごろごろ振り回させていたのだから。
「クックさん、だいじょうぶ?」
「ピィ~」
何とか返事をしているがぐったりしている。
今日はハンドバッグの中でやすんでてもらおう……
外に出て散歩を開始する。成鳥である太郎丸は力が強く、リードを持つ手がぐんぐんと引っ張られる。どちらかと言えば散歩をしているというより散歩されているようだ。
「太郎丸さん元気だね」
「コッコッコッ」
電柱の下など道端に雑草が生えているのを発見すると向かっていきつつき出す。頭を上下に振って食事する姿も力強い。
「あら、太郎ちゃん」
「!」
母親くらいの年齢の女性が歩いてくる。隣には太郎丸と同じ進化を遂げたピヨもいる。太郎丸より細い体型をしている。相手も散歩中なのだろう。
「こんにちは」
「……こんにちは」
知らない大人が来て隠れたい、逃げ出したい。そんな気持ちを抱いたが、相手は太郎丸のことを知っているようで、ここで逃げてしまったら太郎丸に悪いかと思い、踏みとどまって声を振り絞り挨拶を返した。
「今日はお母さんとじゃないのね~」
その女性は太郎丸に話しかけている。『お母さん』とはきっも伯母のことだろう。
太郎丸は女性の声かけなど気にすることなく食事に夢中である。
ココロはただ軽く頷くだけだ。
「コケーッ」
「あっ」
雑草を食べ終えて太郎丸が再び進み出す。
ココロはそのリードに引っ張られるまま歩くしかなかった。
「太郎ちゃん元気ねえ。気をつけてね」
それから女性もピヨを連れて反対方向へと歩いていった。
どんどん突き進んでいく太郎丸。どこを進んでいくのかこれがいつもの散歩コースなのか太郎丸に導かれるままでしかない。
ただココロは太郎丸に任せようと思った。知らない大人とどう話していいのかわからず困っていたのは事実だ。太郎丸が引っ張ってくれたお蔭で逃れられたと安堵する。道順は太郎丸に任せて、家の近辺を覚えようと見回しながら散歩することに決めた。
先に自室へ戻って身支度を整えることにした。母親が好きな洋服ブランド【JIGUZA】のワンピースを着る。このブランドは様々な柄物が売りである。ココロがよく着るワンピースは凹凸模様がポイントとして描かれている。今日の色は緑系のパステルカラーだ。
高い位置で蝶を象ったリボンの髪留めで髪を二つに留めればいつものスタイルだ。
「クックさん、お出かけだよ」
ケージの中で床材をつついているクック。ココロの声に気付いたようで顔を上げた。
「ピッ」
「今日はこのへんをおさんぽ。たんけんするんだよ」
普段より楽しげな声色。知らない土地を探険しようと考える好奇心旺盛なところはまだまだ七歳児である。
「この中に入ってて。落ちないでね」
小物を入れるハンドバッグを用意し、クックを手のひらに乗せてそっと入れた。直に布地な為、布地に爪が引っ掛かり歩きずらそうだ。そこで床材を一掴みして上から適当に入れる。当然クックにもろ被りである。
クックは頭にかかった床材を振り落として歩いてみると、今度は爪が引っ掛からず無事に歩けそうだ。
「これでだいじょうぶだね。いこう」
「ピヨッ」
一階へ降りていく。玄関にピヨ用のハーネスが付いたリードが掛かっており、太郎丸の下へ持っていく。リビングの窓を開けると、日向ぼっこをしてうとうとしていた太郎丸が気配を察知したのか目覚める。
「太郎丸さん、おさんぽだよ」
「ココッ」
「あっ、まって」
太郎丸は芝生の庭を駆け回る。広くはない庭だが、ココロから逃げるには十分な広さである。
「ピッ!? ピッィ!」
「クックさんごめん!」
クックが入ったハンドバッグを持ちながら追い掛けている為、中ではクックが大惨事に見舞わられている。これではクックが散歩の前に体力が切れてしまう。一旦窓際にハンドバッグを起き置き、それから太郎丸を追いかけた。
「コケーッ」
「まって太郎丸さん、おさんぽいくよ!」
「コケーッコッ」
「あっ!」
太郎丸はココロの隙をついてクックの入っているハンドバッグをくちばしで咥えて走っていく。
「だめだよクックさんがいるから!」
「コケーッ」
「ピッ!? ピィッ、ピィィィッ!!」
ガタガタ揺れる中、クックは床材に爪を立てて踏ん張って体勢を保っている。
逃げる太郎丸をココロがひたすら追いかけるという鬼が必死な鬼ごっこを約三十分間続けて終わりを迎えた。それは意外な終わり方で、ハーネスを差し出すと太郎丸自ら輪の中に頭を突っ込んだのだ。それからすかさず胴体に回り込んで接続した。
「はぁー……太郎丸さん、はやい……」
「ピィ~……」
一番疲れているのはクックだ。踏ん張ってもすぐに転げてしまい、ハンドバッグの中でごろごろ振り回させていたのだから。
「クックさん、だいじょうぶ?」
「ピィ~」
何とか返事をしているがぐったりしている。
今日はハンドバッグの中でやすんでてもらおう……
外に出て散歩を開始する。成鳥である太郎丸は力が強く、リードを持つ手がぐんぐんと引っ張られる。どちらかと言えば散歩をしているというより散歩されているようだ。
「太郎丸さん元気だね」
「コッコッコッ」
電柱の下など道端に雑草が生えているのを発見すると向かっていきつつき出す。頭を上下に振って食事する姿も力強い。
「あら、太郎ちゃん」
「!」
母親くらいの年齢の女性が歩いてくる。隣には太郎丸と同じ進化を遂げたピヨもいる。太郎丸より細い体型をしている。相手も散歩中なのだろう。
「こんにちは」
「……こんにちは」
知らない大人が来て隠れたい、逃げ出したい。そんな気持ちを抱いたが、相手は太郎丸のことを知っているようで、ここで逃げてしまったら太郎丸に悪いかと思い、踏みとどまって声を振り絞り挨拶を返した。
「今日はお母さんとじゃないのね~」
その女性は太郎丸に話しかけている。『お母さん』とはきっも伯母のことだろう。
太郎丸は女性の声かけなど気にすることなく食事に夢中である。
ココロはただ軽く頷くだけだ。
「コケーッ」
「あっ」
雑草を食べ終えて太郎丸が再び進み出す。
ココロはそのリードに引っ張られるまま歩くしかなかった。
「太郎ちゃん元気ねえ。気をつけてね」
それから女性もピヨを連れて反対方向へと歩いていった。
どんどん突き進んでいく太郎丸。どこを進んでいくのかこれがいつもの散歩コースなのか太郎丸に導かれるままでしかない。
ただココロは太郎丸に任せようと思った。知らない大人とどう話していいのかわからず困っていたのは事実だ。太郎丸が引っ張ってくれたお蔭で逃れられたと安堵する。道順は太郎丸に任せて、家の近辺を覚えようと見回しながら散歩することに決めた。
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