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二話 夢と現

一 挿し絵あり

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 わたしはお家にいる。パパとママと三人でくらしていたお家に。

『ねえパパ、いかないで……ねえママ、いかないで……』

 こまったかおの二人。どうしけそんなかおをするの? どうして大人って、みんなそんなかおをするの?

『いい子にしてなさい』
『いい子にしててね』

 ーーーーいい子って……どんな子? ワガママを言わない子がいい子? わたしはワガママを言ったからわるい子なの?
 だからーーーーわたしをおいていったの?

『お前は要らない子供だ』
『あなたなんか生まなきゃよかったわ』

 知ってる顔が真っ黒なぐちゃぐちゃの線で塗り潰されていった。そしてどんどん遠ざかっていく二人。

「ピィッ」
「ッ!! ……っはあっ! はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 大きく開眼して過呼吸を繰り返す。腹と肩と顎を上下させて、何度も呼吸をして少しずつ落ち着いてくる。額や頬を触ってみたら汗をかいていて手で雑に拭う。横を向いて寝ていた気がしたが、目を覚ましたら仰向けになっていた。また横を向いてみたら、ふわふわな黄色が水晶体に映る。

「あれ……クック……さん……?」
「ピィッ」

 ケージに入っていた筈なのに出ている。自分で開けたのだろうか。

「……おはよ。……はぁ~……まだ……ちょっとくるしい」

 起き上がり未だドキドキしていて、呼吸を整えようと深呼吸をしてから胸を撫で下ろしてみると幾分は楽になる。起きてみて気付いたが、布団が敷かれていた。きっと誰かが敷いて自分を寝かせてくれたのだ。

「ピッ」
「クックさんがおこしてくれたの?」
「ピッ」
「クックさんがおふとんしいて、かけてくれたの?」
「ピヨッ」
「ふふっ」

 そんなことはあり得ないのに、自分の問いかけに逐一鳴いて返事をしてくれて、まるで本当にそうしてくれたみたいで、可笑しくて少しだけ笑ってしまった。

「あ……」

 ぺたぺた自分の顔を触ってみる。ずっと緊張していたから笑えてなかったのだと気付いた。慣れない空間にいるのに、今は不思議と緊張しないで済むのは、きっと家族であるこの小鳥が一緒にいてくれるからだ。

「ありがとう、クックさん」
「ピヨッ? ピィ……」

 見上げてくるその顔を見ていたら無性に触りたくなって、くちばしの頭や喉元の羽毛を毛並みに沿って撫でてやる。
 気持ち良さそうに目を細める姿がなんとも可愛らしく、いつまでも撫でていたい。 
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