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各恋人と出会う前の過去話
罪と罰、虚言2 シリスside
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城内では深夜の事件で騒然としていた。賊の一人と争い、第一王子が傷を負った。
ジョアルがその賊を処罰したことも城内で広まっていた。
「シリスさん、すいませんでした……。俺がちゃんと止められなくて……」
申し訳無さそうな顔をして短い銀髪を微かに揺らして頭を下げるのは第一騎士隊副隊長、ローランだ。
第二騎士隊隊長シリスは腕を前に突き出し、頭を上げるよう促す。
「キミは悪くない。こちらこそ不肖な兄が失礼した」
恭しく頭を下げると、後ろで一つに結んだ長く美しい群青の髪が肩に流れる。
違う隊とはいえ隊長に頭を下げられてしまうと堪らない気持ちになりローランは慌てて両手と頭を思い切り横に振った。
「そそそ、そんなっ! シリスさんが謝ることじゃないっスよ! 顔上げて下さいお願いします!」
「すまない」
ジョアルに関した騒ぎはいつもこうだ。騒ぎを起こせば私が謝る。ジョアルが心から謝った姿など見たことが無い。こうして謝るのは何回目だろうか
「私からジョアルに言っておく。では……失礼」
振り返ることは無くその場を後にし、シリスはジョアルの部屋へ足を向かわせる。
あの男は一体何を考えている……!
歩く速度が加速する。表情に怒りを滲ませて。
現場にいた兵の証言はこうだ。
第一王子に怪我を負わせた賊を捕らえ、そこで指揮していたのがローランだった。ローランは王子の側近。王子に傷を負わせた責任は重く、事態を鎮めるほか、ただの賊なのか間諜なのか尋問する必要がある。
そこへジョアルがやって来た。ジョアルは何の断りもなく賊の腕を斬り落とし、仕舞いには皆の前で賊の首を刎ねた。
ジョアルはその場を立ち去ろうとしてローランに止められる。そしてローランにまで刃を向けた。
最小限の被害に抑えた。それだけでは理由として不足過ぎる。
別に捕らえた賊が首を刎ねられた仲間を見て命乞いをし、洗いざらい吐いたことは不幸中の幸いだった。
ジョアルは何がしたい……私にはあの兄が解らない。理解し難い。……しかし、私は理解しなくてはならない。何年かけても。奇怪な行動や言葉。
兄を狂わせたのは、この私自身だからな……
ジョアルがその賊を処罰したことも城内で広まっていた。
「シリスさん、すいませんでした……。俺がちゃんと止められなくて……」
申し訳無さそうな顔をして短い銀髪を微かに揺らして頭を下げるのは第一騎士隊副隊長、ローランだ。
第二騎士隊隊長シリスは腕を前に突き出し、頭を上げるよう促す。
「キミは悪くない。こちらこそ不肖な兄が失礼した」
恭しく頭を下げると、後ろで一つに結んだ長く美しい群青の髪が肩に流れる。
違う隊とはいえ隊長に頭を下げられてしまうと堪らない気持ちになりローランは慌てて両手と頭を思い切り横に振った。
「そそそ、そんなっ! シリスさんが謝ることじゃないっスよ! 顔上げて下さいお願いします!」
「すまない」
ジョアルに関した騒ぎはいつもこうだ。騒ぎを起こせば私が謝る。ジョアルが心から謝った姿など見たことが無い。こうして謝るのは何回目だろうか
「私からジョアルに言っておく。では……失礼」
振り返ることは無くその場を後にし、シリスはジョアルの部屋へ足を向かわせる。
あの男は一体何を考えている……!
歩く速度が加速する。表情に怒りを滲ませて。
現場にいた兵の証言はこうだ。
第一王子に怪我を負わせた賊を捕らえ、そこで指揮していたのがローランだった。ローランは王子の側近。王子に傷を負わせた責任は重く、事態を鎮めるほか、ただの賊なのか間諜なのか尋問する必要がある。
そこへジョアルがやって来た。ジョアルは何の断りもなく賊の腕を斬り落とし、仕舞いには皆の前で賊の首を刎ねた。
ジョアルはその場を立ち去ろうとしてローランに止められる。そしてローランにまで刃を向けた。
最小限の被害に抑えた。それだけでは理由として不足過ぎる。
別に捕らえた賊が首を刎ねられた仲間を見て命乞いをし、洗いざらい吐いたことは不幸中の幸いだった。
ジョアルは何がしたい……私にはあの兄が解らない。理解し難い。……しかし、私は理解しなくてはならない。何年かけても。奇怪な行動や言葉。
兄を狂わせたのは、この私自身だからな……
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