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三
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「お前なんかよりずっといい人だったからな!」
「ッ……」
あれ……なんだコイツ。なんでこんな傷ついたみたいな顔して……
「……夢で、たった一回しか会ってないヤツに負けるのかよ」
そう言った蒼は、それから黙ったままになった。重くて気まずい雰囲気に、俺も何も言えなかった。だから家までのたった数分が随分長く感じた。
やっと着いた……。
「ってぅわ!?」
間抜けな声が出たのはコイツが俺の腕を後ろから引っ張ったからだ。
「な、何、だよ!」
聞いても返事なし。俺は腕を引っ張られて、蒼ん家に無理やり押し込められた。
「あお……っ!?」
なんだ……なんなんだよこれ。
蒼ん家の玄関で、扉に押し付けられて、何故か唇に柔らかい感触がある。
俺……蒼と……。
「んん~~っ!!」
蒼の身体を押すけどびくともしない。どんどん叩いてもみたけど、コイツは引こうともしなかった。息が上手く出来なくて息継ぎしたら、今度は開いた口の中に蒼の舌が滑り込んできた。
「っん…、は、ぁ……」
ヤバいヤバいヤバいって……意味わかんねーって。なんでコイツにこんなことされなきゃいけないんだ?
「ふ……くっ……っ」
「亮太……?」
唇がやっと解放されて、そしたら俺は泣いていた。全然意味がわからなくて、涙がどんどん溢れて止まらない。
「っ……、なん、なんだよ……マジで。……俺っ、ふ…っく……なんか、したかよ…!」
「泣くほど嫌だったか?」
「嫌だよ!」
幼馴染みの男に怒られて、気まずくて、帰ったら突然無理やりキスされたなんて。
「そっか……でも俺、お前にいい人で終わるくらいなら嫌われた方がいい」
「はぁ? それ……どういう意味……」
聞いた途端、蒼が抱き締めてきた。
「俺、亮太が好きだ」
「は、へっ?」
また間抜けな声が出た。だってこんなこと言われるとか思わなかったし。つか男だし、蒼だし。俺の頭がついていかない。
「……夢のヤツに夢見てんじゃねーよ」
消えそうな声でそう言う蒼がなんだかアホみたいだなって。頭がついていかないけど、全然状況を理解出来てないけど、これだけはわかる。
「お前……マジ勝手なヤツだな。言うことやること普通逆だろ」
「悔いを残したくなかったんだよ」
「悔いね……じゃあ俺も残らねーように一発殴らせろ」
「……いいぞ」
「よし。目瞑っとけ」
蒼は大人しく目を瞑った。目を瞑るコイツは不思議で、コイツの顔をこんなにマジマジと見たことが無かった。意外と整った顔をしてる。
それはそうと、俺はコイツの頭に届かないから、いや、コイツが無駄にデカイせいだから、玄関を一段上がらせてもらって、蒼の頭を掴んだ。
「!?」
殴ると見せかけて、俺は蒼のおでこに口づけた。蒼はどうしてって顔してる。俺もよくわからない。
「……困ってんのは、お前のキスが嫌じゃなかったことだ。お前が、俺を好きだって言ったから……だから何でか、俺もこうやって……キス……した」
「それって、亮太も俺が好きってこと?」
「そ、そうかも」
まだよくわからなくて曖昧に答えたけど、蒼は嬉しそうな顔をしてた。それからまた、さっきよりもっと強く抱き締められた。
「何でおでこなんだよ。するなら口にしろよ童貞」
「おい。やっぱり一発殴らせろ」
蒼は笑う。帰り道の無言だった蒼は怖かったけど、こうやって楽しそうに笑う蒼ならまだいいかなって思った。
「亮太」
「何?」
「夢よりもっと最高にしてやるよ」
「おっ、お手柔らかに……?」
蒼の謎の自信に苦笑しながらこの先不安だとか思ったけど、とりあえずコイツに任せようって、そっと首に腕を回したんだ。
END
「ッ……」
あれ……なんだコイツ。なんでこんな傷ついたみたいな顔して……
「……夢で、たった一回しか会ってないヤツに負けるのかよ」
そう言った蒼は、それから黙ったままになった。重くて気まずい雰囲気に、俺も何も言えなかった。だから家までのたった数分が随分長く感じた。
やっと着いた……。
「ってぅわ!?」
間抜けな声が出たのはコイツが俺の腕を後ろから引っ張ったからだ。
「な、何、だよ!」
聞いても返事なし。俺は腕を引っ張られて、蒼ん家に無理やり押し込められた。
「あお……っ!?」
なんだ……なんなんだよこれ。
蒼ん家の玄関で、扉に押し付けられて、何故か唇に柔らかい感触がある。
俺……蒼と……。
「んん~~っ!!」
蒼の身体を押すけどびくともしない。どんどん叩いてもみたけど、コイツは引こうともしなかった。息が上手く出来なくて息継ぎしたら、今度は開いた口の中に蒼の舌が滑り込んできた。
「っん…、は、ぁ……」
ヤバいヤバいヤバいって……意味わかんねーって。なんでコイツにこんなことされなきゃいけないんだ?
「ふ……くっ……っ」
「亮太……?」
唇がやっと解放されて、そしたら俺は泣いていた。全然意味がわからなくて、涙がどんどん溢れて止まらない。
「っ……、なん、なんだよ……マジで。……俺っ、ふ…っく……なんか、したかよ…!」
「泣くほど嫌だったか?」
「嫌だよ!」
幼馴染みの男に怒られて、気まずくて、帰ったら突然無理やりキスされたなんて。
「そっか……でも俺、お前にいい人で終わるくらいなら嫌われた方がいい」
「はぁ? それ……どういう意味……」
聞いた途端、蒼が抱き締めてきた。
「俺、亮太が好きだ」
「は、へっ?」
また間抜けな声が出た。だってこんなこと言われるとか思わなかったし。つか男だし、蒼だし。俺の頭がついていかない。
「……夢のヤツに夢見てんじゃねーよ」
消えそうな声でそう言う蒼がなんだかアホみたいだなって。頭がついていかないけど、全然状況を理解出来てないけど、これだけはわかる。
「お前……マジ勝手なヤツだな。言うことやること普通逆だろ」
「悔いを残したくなかったんだよ」
「悔いね……じゃあ俺も残らねーように一発殴らせろ」
「……いいぞ」
「よし。目瞑っとけ」
蒼は大人しく目を瞑った。目を瞑るコイツは不思議で、コイツの顔をこんなにマジマジと見たことが無かった。意外と整った顔をしてる。
それはそうと、俺はコイツの頭に届かないから、いや、コイツが無駄にデカイせいだから、玄関を一段上がらせてもらって、蒼の頭を掴んだ。
「!?」
殴ると見せかけて、俺は蒼のおでこに口づけた。蒼はどうしてって顔してる。俺もよくわからない。
「……困ってんのは、お前のキスが嫌じゃなかったことだ。お前が、俺を好きだって言ったから……だから何でか、俺もこうやって……キス……した」
「それって、亮太も俺が好きってこと?」
「そ、そうかも」
まだよくわからなくて曖昧に答えたけど、蒼は嬉しそうな顔をしてた。それからまた、さっきよりもっと強く抱き締められた。
「何でおでこなんだよ。するなら口にしろよ童貞」
「おい。やっぱり一発殴らせろ」
蒼は笑う。帰り道の無言だった蒼は怖かったけど、こうやって楽しそうに笑う蒼ならまだいいかなって思った。
「亮太」
「何?」
「夢よりもっと最高にしてやるよ」
「おっ、お手柔らかに……?」
蒼の謎の自信に苦笑しながらこの先不安だとか思ったけど、とりあえずコイツに任せようって、そっと首に腕を回したんだ。
END
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