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君とともに歩む未来(ヤマト編)
18話 アバター
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一週間の実習停止命令の間、二人は今後の実習計画を練り直した。当然、計画を管理局にも提出した。
まず、一本目のライフラインの交換を終わらせる。その後、ヤマトは、新しい居住地の建設の基礎工事を開始。同時並行で、アデルは二本目のライフラインのバイパスを使っての無停電配線交換の実習を始める。
アデルは二本目のライフラインの交換を進めながら、ヤマトの建設する居住区の配線工事などを行う。
二人は計画書を作成しながら、タイトなスケジュールが順調に進むだろうか?と考えていた。
「絶対、計画より遅れる」
ヤマトが呟く。しかし居住区を建設できる喜びの方が大きいようだ。
「夢中になりすぎると、心配」
とアデルが言うと、ヤマトはニヤリとした。
「そこは学んだから」
「な、なに?」
「前のめりの暴れ馬の見本でさんざん学んだから」
とヤマト。
「暴れ馬って、私のことか」
ヤマトがズケズケとアデルを攻めて楽しむ。アデルは頬を膨らませ、それでも言った。
「お手並み、拝見」
「お、おう!」
実習を再開したヤマトは前のめりにはならなかった。正確にいえば、なれなかった。重機を思うように動かせず、準備した資材は過不足を起こした。すべてにおいて、思い通りにならない事態に直面してヤマトは作業を中断しては悩むことを繰り返していたのだ。
一方のアデルは交換作業に慣れてきて、計画を前倒しにできるほど作業のスピードが上がっていた。アデルは自分の分担を早く終わらせ、ヤマトを手伝おうと考えていた。
アデルがヤマトに気を取られるあまり、それは起こった。電線の交換手順をアデルが間違えたのだ。
一瞬の出来事だった。
バシッ‼ ショートしてまぶしい光が飛んだ。その瞬間アデルは突き飛ばされた。
「え?」
支援型アバターがゆっくり倒れこんだ。スローモーションでアバターが崩れていくのをアデルは茫然と見ていた。支援アバターはアデルを助けるために自らが盾になったのだ。
アバターは動かない。アデルも動けなかった。
事故に気が付いたヤマトが慌てて駆け寄ってきた。
「どうした⁉」
その声で我に返ったアデルが支援アバターに駆け寄ろうとするのを、ヤマトが抑え込んだ。
「ダメだ! 電源落とせ!」
ヤマトが作業アバターに命令する。作業している配線の主電源がすべて落とされた。
それを確認して、ヤマトはようやくアデルを抱きしめていた力を緩めた。
「あ、あ、あたし……」
ヤマトに抱かれながら、アデルはその場にへたり込んだ。
アバターは人間の生命を守るために、人間の命令を無視することが許されている。支援アバターはその思想を全うして、アデルを守り壊れた。
「今日は作業中止しよう」
ヤマトは自らの作業が更に遅れる焦りを呑み込み、アデルに言った。ショックを受けているアデルをヤマトは家の中に引きずりこんだ。
言いたいことは山ほどある、また作業が大幅に遅れるのだ。しかし、ヤマトはなんとかその言葉を呑み込んだ。アデルをソファーに座らせ、アデルの好きなオレンジジュースを差し出した。
「飲めよ」
そういうと、ヤマトもアデルの横に座り、自分もジュースを飲んだ。
アデルは、ヤマトが持ってきたジュースのコップを持とうとはせず、ようやく口を開いた。
「アバターを壊してしまった……」
ヤマトはアデルがパマを想っているのはわかった。
「降格したパマは支援アバターになっている。私は支援アバターを壊した」
アデルはぼそりと言う。
「支援アバターが私の代わりに犠牲になった」
「アデル……」
「私を守る価値はあるのかな。もう私を愛してくれたパマもいないのに」
泣きながら、アデルはヤマトに尋ねた。
「アバターって何だろう? 私のために壊れる必要あるのかな」
そのころ、札幌区でカイトによって監禁状態になったニーナがネットを通じて世界中に呼びかけを始めていた。
「旧世代のためにパートナー型アバターの修理用部品の生産再開をお願いします、旧世代をないがしろにしないでください」
(つづく)
まず、一本目のライフラインの交換を終わらせる。その後、ヤマトは、新しい居住地の建設の基礎工事を開始。同時並行で、アデルは二本目のライフラインのバイパスを使っての無停電配線交換の実習を始める。
アデルは二本目のライフラインの交換を進めながら、ヤマトの建設する居住区の配線工事などを行う。
二人は計画書を作成しながら、タイトなスケジュールが順調に進むだろうか?と考えていた。
「絶対、計画より遅れる」
ヤマトが呟く。しかし居住区を建設できる喜びの方が大きいようだ。
「夢中になりすぎると、心配」
とアデルが言うと、ヤマトはニヤリとした。
「そこは学んだから」
「な、なに?」
「前のめりの暴れ馬の見本でさんざん学んだから」
とヤマト。
「暴れ馬って、私のことか」
ヤマトがズケズケとアデルを攻めて楽しむ。アデルは頬を膨らませ、それでも言った。
「お手並み、拝見」
「お、おう!」
実習を再開したヤマトは前のめりにはならなかった。正確にいえば、なれなかった。重機を思うように動かせず、準備した資材は過不足を起こした。すべてにおいて、思い通りにならない事態に直面してヤマトは作業を中断しては悩むことを繰り返していたのだ。
一方のアデルは交換作業に慣れてきて、計画を前倒しにできるほど作業のスピードが上がっていた。アデルは自分の分担を早く終わらせ、ヤマトを手伝おうと考えていた。
アデルがヤマトに気を取られるあまり、それは起こった。電線の交換手順をアデルが間違えたのだ。
一瞬の出来事だった。
バシッ‼ ショートしてまぶしい光が飛んだ。その瞬間アデルは突き飛ばされた。
「え?」
支援型アバターがゆっくり倒れこんだ。スローモーションでアバターが崩れていくのをアデルは茫然と見ていた。支援アバターはアデルを助けるために自らが盾になったのだ。
アバターは動かない。アデルも動けなかった。
事故に気が付いたヤマトが慌てて駆け寄ってきた。
「どうした⁉」
その声で我に返ったアデルが支援アバターに駆け寄ろうとするのを、ヤマトが抑え込んだ。
「ダメだ! 電源落とせ!」
ヤマトが作業アバターに命令する。作業している配線の主電源がすべて落とされた。
それを確認して、ヤマトはようやくアデルを抱きしめていた力を緩めた。
「あ、あ、あたし……」
ヤマトに抱かれながら、アデルはその場にへたり込んだ。
アバターは人間の生命を守るために、人間の命令を無視することが許されている。支援アバターはその思想を全うして、アデルを守り壊れた。
「今日は作業中止しよう」
ヤマトは自らの作業が更に遅れる焦りを呑み込み、アデルに言った。ショックを受けているアデルをヤマトは家の中に引きずりこんだ。
言いたいことは山ほどある、また作業が大幅に遅れるのだ。しかし、ヤマトはなんとかその言葉を呑み込んだ。アデルをソファーに座らせ、アデルの好きなオレンジジュースを差し出した。
「飲めよ」
そういうと、ヤマトもアデルの横に座り、自分もジュースを飲んだ。
アデルは、ヤマトが持ってきたジュースのコップを持とうとはせず、ようやく口を開いた。
「アバターを壊してしまった……」
ヤマトはアデルがパマを想っているのはわかった。
「降格したパマは支援アバターになっている。私は支援アバターを壊した」
アデルはぼそりと言う。
「支援アバターが私の代わりに犠牲になった」
「アデル……」
「私を守る価値はあるのかな。もう私を愛してくれたパマもいないのに」
泣きながら、アデルはヤマトに尋ねた。
「アバターって何だろう? 私のために壊れる必要あるのかな」
そのころ、札幌区でカイトによって監禁状態になったニーナがネットを通じて世界中に呼びかけを始めていた。
「旧世代のためにパートナー型アバターの修理用部品の生産再開をお願いします、旧世代をないがしろにしないでください」
(つづく)
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