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その後の世界で君とともに(本編)

21話 変遷

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 世界は時間とともに変化していく。
大戦から四十一年後、カイト二十九才のとき、最後の「犠牲の眠り」が静かに息を引き取った。
人口は順調に増え、実験コロニーは世界に十か所になっていた。

 その翌年、カイトの三十歳の誕生日、精子提供の義務が解除された。
「僕の仕事は終わった」
 カイトがポツンと言った。
「でも、私は……」
 そこまで言ってニーナは嬉しいという言葉をのみ込んだ。
「余韻にゆっくり浸ることができるのはいいことだ」
 カイトは優しくニーナを抱き締めた。
「抱いていい?」
 ニーナが答えないうちに、カイトはニーナの作業着を脱がせにかかる。
「新しいレースのブラジャー?」
 ニーナが真っ赤になってしどろもどろに言い訳する。
「カイトはレース好きだって言うから。三十歳のプレゼ……ウン」
 カイトがニーナの唇を塞ぐ。長いキスのあと、ニーナの唇を解放したカイトは
「うん、レース好きだ」
 といたずらっぽく笑うとニーナの作業着をはいでいった。レースのブラジャーとパンティー姿になったニーナの乳首をもて遊ぶ。
 カイトがニーナのからだ中に唇を押し当て、レースのブラジャーとパンティーが乱れていく。カイトはニーナのほてったからだをそのまま抱き上げベッドに運んだ。
「いつも綺麗だ」
 再び長いキスを交わすと、カイトは乱れたブラジャーとパンティーでニーナに刺激を与えた。ニーナの喘ぎ声が漏れるのを、カイトは執拗に攻めていく。
 何度抱いても飽きることがない妖艶なニーナの肢体を味わい、カイトはニーナと一体になった。共に絶頂を迎えた二人はぴったりくっ付いたままキスを交わした。
「嬉しい」
 ニーナがそっと囁く。カイトの腕の力が強くなった。
二人はそのまま再び激しく交わり始めた。カイトの物を身体に留め、カイトに抱かれ続ける――ニーナは幸せだった。カイトもニーナに溺れ、それだけを考える。
 僕は用済みになった、それでいい――ニーナがいればもう何もいらないとカイトは思う。

 カイトの仮想空間へのログインは激減した。仮想空間も人で溢れカイトの性に合わなくなってきたからだ。連絡を取り合うのは、ライルとユキコだけだった。それで充分だと思っていた。

 カイトが距離を置き始めた世界は、実験コロニーを軸にタウン機能と規模を拡大していった。
 大戦後の人口増加体制から資本主義経済体制へ世界の軸が移行していく。同時に技術革新に加速度がついた。若い活気が世界で膨張を続けていた。

 カイトが三十六歳になったとき、パートナー型アバターの最終生産の通達がきた。以降はパマ型アバター及び支援型アバターのみ生産が続行する。人のパートナーはアバターではなく人である時代に突入したのである。
 パートナー型アバターの生産終了と時期を同じくしてゼロ世代、第一世代に課されていた卵子の提供義務も終了した。ユキコの卵子提供義務も終わったのだ。
 人工子宮での胎児育成は、義務の時代を終えて、人の妊娠の選択肢の一つになったのだ。大戦前の妊娠の体制を取り戻しつつあった。

 ニーナの意識は最終モデルのアバター移し替えられた。最終モデルのニーナが目を開いた時、カイトは
「僕ばかり年をとっていく」
 と、出会ってから十八年、見た目の変わらないニーナにキスをした。
「私も、これからはあなたとともに年を重ねていく」
 ニーナはカイトに言いながら、一方で身体のメンテンナンスをしっかりしていかなければならないと自らを戒めた。もう替えはないのだから……。

 分散型居住システムでの暮らしを続けて希望する大戦経験者、ゼロ世代、第一世代は、『旧世代』と括られ辺境の地への移動が求められるようになってきた。タウンからパートナー型アバターを排除する動きが強まってきたのだ。
 日本地域は辺境地区の一つだった。元々札幌区に住むカイトは移動を回避した。
 しかしライルはギリシャのアテネ地区居住だったためタウンの拡張によって、アラスカのアンカレッジ地区への移動を余儀なくされた。リーンとの生活を望むライルに選択する余地は与えられなかった。
「アテネからアンカレッジじゃ、寒さがこたえるね」
 ライルはぼやいた。しかし続けて、リーンとのんびり暮らせるアンカレッジがこれからの俺の都だよと笑った。

 人口の増加は安定し、分散型居住への関心は薄れていく。
 分散して暮らしてきた『旧世代』は、人口の集中するタウンに馴染めず、パートナー型アバターとともに、世界から弾かれつつあった。
 時代の潮流を止めることは出来ないのだ。




(つづく)




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