世間の風潮に逆行して50才で免許とろうとしたら、自動車学校で予想以上の苦難が待っている体験談

ぽんたしろお

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第16章

適性検査の意味と夜の道路のこと

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自動車学校入学時に、ゲームみたいなドライブシミュレーターの乗ったことが、あまりにも強烈すぎて、記憶からすっ飛んでいたが、自動車学校に入学してすぐに受ける適性検査は、私も当然受けている。
第一段階の教習所のコースを走っている時は、適性検査のことはほぼ忘れていた。

しかし、路上教習が始まって適性検査が無駄でないことを悟った。
適性検査で「協調性に難あり」という結果が出ていたが、一人でいることを苦痛に思わない自分の性格が結果にでたなくらいにしか思っていなかった。
路上にでて「協調性に難あり」の本当の意味を知る。

一般道路は運転者の気持ちが交錯しておしゃべりだと感じたが、そのおしゃべりに自分が入っていけないのだ。
例えば、車線変更。
二車線の道路で右折したいとき、第一車線から第二車線に入る必要がある。
当然、車線変更するスペースがあることを確認しなければいけない。ウインカーを出して後方の車に車線変更を知らせ、タイミングをはかる…はかる…車線入っていい?後方の運転者の気持ちを汲み取れない。
「後ろの車、速度落として待ってくれています、早く入りましょう」
と先生。
速度落として待ってくれていたのか。わからなかった。何度もバックミラーを見て悩んだあげく決断は先生がした。
その逆に、ウインカーをだした時、車線に入れてくれる気がない車の気持ちを察することができない時もある。
「入れてくれませんよ、車が通りすぎるのを待ってください」
他の車との無言のやり取りが上手くいかなくて、判断が遅れ、注意が散漫になった。

路上は、道路にいる様々な人たちとの一瞬のコミュニケーション力を要求される場所だった。

道路はまるで生きているようだ。
同じ道路でも同じ状況が再現されることはない。
宅配トラックが止まっていた。進路変更をして横を通り過ぎようとした時、先生は右手を運転席に伸ばしてパッシングをした。
一瞬、私は何が起こったのかわからなかったが、前方のトラックと先生の会話は成立していた。
ハザードランプの状態だったトラックがウインカーを右に出して発進した。
トラックが発進前だということを私は汲み取ることが出来なかったのだ。

繰り返すが、私が路上運転に出ているのは、地方都市で、日中の昼間が多い。決して通行量が多いわけではない道なのだ。
それでも、道路はにぎやかで会話が飛び交っている。そして私は会話の意図を読み取るのが苦手だった。
会話が苦手ゆえ、進路変更や車線変更で先生に何度も注意された。

ある日、教習の終わりに先生が言った。
「可能であれば、一度夜間の走行も経験しておくといいと思います。どうしますか?」
「はい、体験できることは多く体験したいです」

夜間教習の日。
夫が出勤した後、いつもなら自動車学校に行く支度を始める時間がぽっかり空いた。からだが岩のように重い。
私は布団に潜り込んで昼が過ぎるまで眠り込んでしまった。
ようやく目を覚ました私は、当初の予定を変更した。
自動車学校にいく途中で買い物をして、その荷物抱えたまま学校に向かった。
夕食用の買い物を抱えて学校到着すると、昼間と比較にならないほど、若い生徒さんたちでごった返していた。
時間が来て先生と教習車に向かう。
「重そうだね」
「買い物を家に置いてくる時間がなくて」

夜間教習が始まった。
見える世界が全く違う。路上に出た車を動かしながら、あふれる光の点滅に圧倒される。
路上の出ると、先生の解説が始まった。
「暗いのは悪いことばかりでないです、信号や車の点滅で気づきやすいこともありますから」
一理ある。しかし、私には点滅する光が洪水のように思えた。頭で処理しきれない。

道路は日中より車が多く、走行スピードが速かった。
手慣れた運転手がバンバン先を急ぐ道路は、殺気立っているように思えた。
時間によって道路の雰囲気がまるで違う。夜間のこの時間は道路がイライラ怒っている。
路上に出て初めてクラクション鳴らされた。いつか鳴らされるだろうと思っていたが、日中の教習時間の道路を走る車が私の運転する教習車に優しいことを改めて感じた。

歩道に全身黒づくめの歩行者がいた。驚くほど闇に溶け込んでいる。
「見えづらいでしょ」
と先生。
教習が終わり、帰宅する時になって、自分も黒づくめなのに気が付いた。
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