世間の風潮に逆行して50才で免許とろうとしたら、自動車学校で予想以上の苦難が待っている体験談

ぽんたしろお

文字の大きさ
上 下
15 / 23
第15章

路上を走って、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!

しおりを挟む
ねじれるような感覚が続いた日々を仮免合格で、ようやく脱出したばかりだった。
しかし、学校は安堵させてくれない。
急げるときは急げとばかり、仮免翌日に私は第二段階に突入した。

車に乗ると、一周教習コースを回りいよいよ、路上に出る指示を先生が出した。
こんなところに路上への出入り口があったのか。
正直、第一段階でコースを走っているとき、運転に必死すぎて気が付いていなかった。
結局、視野が狭く、車が出入りする動きを視野にいれていない、私の欠点はなんら変わっていないのだ。
内心そんなことを感じているが、車は路上に出てしまった。
一般道に一般の車が走り、歩道には人がいて本物の信号がある。

道路の真ん中を自分が運転する車が動いている。
まるで、道路の上を飛んでいるような感覚だった。免許がなくても車には乗っているが、運転している感覚は同乗者で車に乗っているのとは、全く違う世界だった。

そして私の「クリープ現象で走っているのか問題」のツケがここで回ってきた。
アクセルを踏むことに全然なれていないので、アクセルとスピードの感覚がからだにまったく刷り込まれていないのだ。
だからといって、路上は普通に車が走っているわけで、いくら「練習中教習車」の札を付けているからといっても、クリープ現象走行を許す空気はない。
アクセルを踏んでは離し踏んでは離し、速度を一定に保てない、まっすぐ走れない挙動不審車のまま、教習は続いた。
赤信号で止まるたび、ほっとする。教習コースの赤信号を大好きだったが、その比ではなかった。
その気持ちが強すぎて、信号が近づくと車のスピードを落として赤信号を待ちたい衝動にかられるクセが発覚した。
先生に注意され、ビクビクしながら青信号を通行する。
しかし、その一方で一般車のスピードに引っ張られた。
「スピード出しすぎです」
先生の指摘でメーターをちらりと確認すると50キロ制限の道路で54キロになっていたのだ。うそでしょ⁉
時速20キロが怖かった自分なのに、仮免検定で直線目標速度40キロもなかなか出せなかったのに。
「ゆっくり走ろう」が自分の信条だと思っていたのに。気が付いたら54キロ出ているショックは大きかった。
アクセルから足を離すと車はしぼむように30キロ代まで減速した。バックミラーが目に入った。後続を走っている車の運転手がいらついている気がした。ごめんなさい、ごめんさないと心の中であやまった
2車線の道路で、第2車線を車が通りすぎると横の圧が怖い。許してください、そう思うのがハンドル操作に現れてしまう。車が左に流れて白線を踏んだ。


教習車しかいない教習コースでは味わったことがない感覚だ。
自分のからだが道路の上を飛び、運転している人の感情が道路を交錯していた。
怒る人もいれば、下手な運転を許容する人もいる。
車内は先生の指示と私の返事だけの静けさなのに、人生初の一般道路の運転は、道路のにぎやかさと優しさとやかましさが、私の運転する教習車の横をどんどん通り過ぎていった。
道路はとてもおしゃべりだと私は思った。

教習コースの運転の忙しさはなかった(多分、先生が路上でも簡単なコースを選んだのだとは思う)が、一般車両が行き交い、歩行者が歩き自転車が走り、刻刻と状況が変わる一般の道路のスピードに判断が追いつかない。
判断が追いつかないまま、技術がないまま、自分の運転が呑み込まれていく。
周りの車と協調しながら、しかもマイペースで運転すること、その一瞬一瞬の判断を間違えてはいけない。
判断の連続が「自動車を運転する」ことなのだ。頭が追いつかないが、追いつかないでは許されない。

同時に第二段階の学科も開始した。
自動車学校の日々は忙しく過ぎていく。

路上での練習を始めて数日後、夫がしみじみと言う。
「お前みたいなのの横に乗らなければならない仕事って、命がけなんだなぁ。俺には無理だわ」
反論の余地はない、同感だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

データから分析して目指せスコアアップ!初心者投稿者の試行錯誤と記録。

終夜
エッセイ・ノンフィクション
Web小説を書き、いつか本にしてみたい。そう考える初心者がアルファポリス様で小説を連載する中で、記録をとってグラフにしたり考察したりして試行錯誤する日々をお送りします。

美人女子大生を放心状態にさせ最後は大満足させてあげました

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
俺と若い女子達との素敵な実話です

100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて

ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。

小説投稿サイトの比較―どのサイトを軸に活動するか―

翠月 歩夢
エッセイ・ノンフィクション
小説家になろう エブリスタ カクヨム アルファポリス 上記の4つの投稿サイトを実際に使ってみての比較。 各サイトの特徴 閲覧数(PV)の多さ・読まれやすさ 感想など反応の貰いやすさ 各サイトのジャンル傾向 以上を基準に比較する。 ☆どのサイトを使おうかと色々試している時に軽く整理したメモがあり、せっかくなので投稿してみました。少しでも参考になれば幸いです。 ☆自分用にまとめたものなので短く簡単にしかまとめてないので、もっと詳しく知りたい場合は他の人のを参考にすることを推奨します。

【完結】初めてアルファポリスのHOTランキング1位になって起きた事

天田れおぽん
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスのHOTランキング一位になった記念のエッセイです。 なかなか経験できないことだろうし、初めてのことなので新鮮な気持ちを書き残しておこうと思って投稿します。 「イケオジ辺境伯に嫁げた私の素敵な婚約破棄」がHOTランキング一位になった2022/12/16の前日からの気持ちをつらつらと書き残してみます。

【不定期】アルファポリスでの『書籍化』はナニに魂を売ればデキる?

まみ夜
エッセイ・ノンフィクション
※夢多きお子様は、薄汚い大人にならないように、お読みにならないコトを推奨いたします。 ※個人の感想です。効果、効能を保証するモノでは、ございません。 ※転記は一切許可しておりません。また、引用には著作権法により厳密なルールが定められているので、ご注意ください。 自信満々に物語を書いて、早くも1500ポイント達成かと思っていたら、NEWが取れたら激減。 他の物語に負けないと思っていたのに、お気に入りも一桁、更新しても300ポイント以下。 では、「どうしたらいいか」を前向きに考察をするコラムです。 まずは、「1ページ目を読んでもらえるコトを目標」から始めましょう。 自分が書きたいことを好きに書いているダケで読まれなくていい、という方には無意味な駄文です。 書き手向けの内容ですが、読み専門の方には、より良い物語を探すヒントになる「かも」しれません。 表紙イラストは、lllust ACより、楠あかね様の「魔神」を使用させていただいております。

処理中です...